生き活きケア

足こぎが楽しくなる 「お出かけVR」/R-studio (秦野市)

足こぎが楽しくなる 「お出かけVR」/R-studio (秦野市)

 神奈川県秦野市のリハ特化型デイサービス「R – studio」は、マシントレーニングにVR(バーチャル・リアリティ、仮想現実)を活用した機能訓練を5月より実践している。散歩・旅行先の映像を見ながらの運動は外出気分を演出。単調になりがちな運動に、新鮮味や楽しさを取り入れることで、利用者が自ら体を動かす意欲をつくり出している。(生き活きケア 148)

 神奈川県秦野市のリハ特化型デイサービス「R – studio」は、マシントレーニングにVR(バーチャル・リアリティ、仮想現実)を活用した機能訓練を5月より実践している。散歩・旅行先の映像を見ながらの運動は外出気分を演出。単調になりがちな運動に、新鮮味や楽しさを取り入れることで、利用者が自ら体を動かす意欲をつくり出している。

 R – studioは1回3~4時間未満の短時間デイ。運動療法のレッドコード等を用いた集団エクササイズと、個々の心身機能に応じた個別プログラムを組み合わせる。個別プログラムのメニューは▽歩行練習▽立ち上がり▽自転車▽腹筋など豊富。本人がやりたいものを尊重しつつ、メニューが偏らないよう、セラピストが生活の困りごとなどを聞きながら、最適化をはかる。

 VRは主に自転車(エアロバイク)運動で活躍する。ペダル部分にコントローラを巻き付け、利用者はヘッドセットを装着。選択した行き先の映像が現れる。ペダルをこぐとコントローラが運動を検知し、映像内で歩行などがはじまる。

 理学療法士の松本裕輝さんは「こがなければ前に進めないので、自然と足が動きます。機能訓練の課題だった、『単調な動きへのエンタメ性』を一つ実現した形です」と喜ぶ。
 VR で見た画面(秋田大館レールバイク)

 VR で見た画面(秋田大館レールバイク)

 利用者のAさん(男性)は左半身に麻痺があり、歩行は杖を使用。「外に出たいが、危ないと家族がなかなか許してくれない」と話す。この日のトレーニングでは、「墨田川沿い散歩」と、廃線を自転車で進む「レールバイク森林浴」の2カ所に挑戦。墨田川では足こぎしながら「綺麗な桜が咲いている」「街路樹が見えてきた」と自ら説明する。

 「何もない状態だと、目の前のメーターを覗き込んで肩こりの原因を作ってしまうことも。VRは周囲の景色を見渡す動きが、実は首の運動にもなっています」と松本さんは副次的な効果を述べる。リハに特化したVR VRはsilvereye(東京都中央区、汲田宏司社長)が2月に東京医療保健大学との共同研究で開発した「RehaVR」を使用。行先・運動時間・足こぎの負荷は全てアプリで記録でき「ADLの変化と絡めて分析すれば、より効果の出やすい運動プログラムへブラッシュアップできる」と汲田社長は強調する。

 何より、各地の観光都市や自然の景色、また「犬の散歩」といったシチュエーションまで、本人の意欲を引き出す映像コンテンツが魅力。コンテンツは順次追加される。「ぜひ上高地を。河童橋から穂高連峰をのぞむ景色を見たい」とAさんも追加を希望する。

 さらに今後は、回復期リハビリ病院など医療現場での利用も想定。「例えば、視野の半分に気が付きにくくなる『半側空間無視』の人へ、見えにくい側のトレーニングを意識した映像の作り込みも検討している」と汲田社長は話す。

 松本さんも「パーキンソン病の人はリズムをつけてあげることで歩行がしやすくなる。リズム音を映像に盛り込むなど、病状にあわせたカスタマイズも期待できます」と話す。
 個別メニューの時間帯

 個別メニューの時間帯

 理学療法士・松本さん

 理学療法士・松本さん

(シルバー産業新聞2019年8月10日号)

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