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通所介護・リハ 機能維持・改善評価求める声

 厚生労働省は、6月21日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田中滋・慶應義塾大学名誉教授)を開催し、通所介護と通所リハビリテーションについて、それぞれの役割分担も含め、サービスのあり方などについて議論を行った。

 厚生労働省は、6月21日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田中滋・慶應義塾大学名誉教授)を開催し、通所介護と通所リハビリテーションについて、それぞれの役割分担も含め、サービスのあり方などについて議論を行った。次期報酬改定では、機能訓練やリハビリテーション強化の方向性を一段と強める一方で、家族のレスパイトの観点から、夜間帯のケアを評価する考えなどが示されている。

 在宅介護を支える柱のひとつである通所介護。現在、約190万人が利用し、事業所数は制度開始当初の9726カ所(01年度末)から4万3440カ所(15年度末)へと、およそ4.5倍に増加。それに伴い、費用額も年間3800億円(01年度末)から1兆7000億円(15年度末)へと増加し、全体の17.5%を占めるまでになっている。
 前回の改定では、予防給付の通所介護を総合事業に移行させたことや、増加の一途だった小規模デイを、地域密着型サービスに移行させ、基本報酬を大幅に引き下げるなどの改革を断行。費用額は14年度1兆6300億円(内訳:介護1兆4191円+予防2109億円)だったのが、16年度は1兆8432億円(介護1兆2582億円、地域密着3899億円、予防1503億円、総合事業4472億円)となっている(表)。カテゴリーを細分化し、市町村がサービス内容や費用をコントロールしていく流れになっている。

 こうした中、厚生労働省が次期見直しに向け、課題として掲げたのが、通所介護と通所リハビリテーションの役割分担だ。

 昨年12月にとりまとめられた社会保障審議会介護保険部会の意見書でも、「介護報酬改定にあわせて、通所リハビリテーションと通所介護の役割分担と機能強化について検討することが適当」とされ、具体的には「時間区分を通所介護と通所リハビリテーションで分けるなど、特徴づけてはどうか」との意見が明記されている。

 この日、国が示した資料では、通所介護、通所リハビリテーションともに長時間の利用が多いことが共通するものの、利用者の日常生活自立度が改善した割合では、通所リハビリテーションの利用者の方が、脳卒中で15ポイント、認知症で8ポイント、その他の傷病で14ポイントの差が出るなど、いずれも倍以上改善している()。
 これを受け、委員からは「通所リハビリテーションは時間区分の変更など、通所介護との役割分担がはっきりするような報酬体系にしていくべき」(大西秀人・全国市長会介護保険対策特別委員会委員長)との意見や、「早期にリハビリを行うことで機能回復が見込まれる利用者については通所リハ、機能維持の段階になったら通所介護に移行するなどの役割分担を明確にした上で、人員や設備基準を整理していく必要がある」(本多伸行・健康保険組合連合会理事)など、時間区分の見直しや、機能分化を求める意見が述べられた。

 また、厚労省から通所介護においても「個別機能訓練加算」を算定し、PT・OT・STのいずれかのリハ職を配置している事業所では、加算を算定せずに、リハ職の配置もない事業所と比べて、高い機能訓練効果が出ている資料が示されたことを受け、「通所介護においも機能訓練の強化が必要。レスパイトのみの通所介護の評価を抑えて、自立支援に向けた取組みを評価すべき」(鈴木邦彦・日本医師会常任理事)、「レスパイトも大事だが、介護保険のサービスである以上、生活機能の改善・維持という目的で、報酬にメリハリを付けることも大事」(齋藤訓子・日本看護協会常任理事)など、サービスの質に対し、評価を求める意見も上がった。これに対して、「レスパイトケアがないと家族は介護を続けられない。サービス利用の一番の目的がレスパイトであることを問題にするような発言には納得がいかない」(田部井康夫委員・認知症と家族の会理事)と反発する意見も出された。

レスパイトを評価?

 通所介護と通所リハビリテーションの役割分担、機能強化のほかに議論になったのが、夜間帯のサービスの充実だ。

 政府の「介護離職ゼロ」の流れで、通所介護の開所時間について、「特に夜間帯のデイサービス提供体制を充実させるため、介護報酬改定において夜間帯の加算措置を十分に検討すること」(一億絵活躍社会の構築に向けた提言)との注文が付けられている。

 夜間帯の評価については、前回の介護報酬改定で延長加算の範囲を拡大したが、同加算を取得している事業所は全体の5%以下にとどまっている。厚労省が示した資料では、延長加算を算定していない事業所の48.1%が、今後も「算定する予定はない」と回答。理由は「職員が確保できない」が最も高く、次いで「採算が確保できない」「利用ニーズがない」などが続いており、委員からも「職員に長時間労働を強いるようなことをすると、今の働き方改革の流れにも逆行する」(鈴木邦彦委員)など、疑問の声が相次いだ。

 国としてレスパイトを評価するのか、しないのか分かりにくい考えとなっている。

福祉用具貸与も議論

 6月21日の給付費分科会では、福祉用具貸与もテーマに取り上げられた。

 福祉用具については、一部ではあるが、同一商品でも、平均価格と比べて非常に高価な価格請求が行われているケースが存在しているとの指摘があり、次期見直しにおいて「価格の見える化」が図られる。

 具体的には、▽国が商品ごとに全国平均貸与価格を公表▽福祉用具専門相談員が全国平均価格と事業所価格の両方を利用者に説明▽機能や価格帯の異なる複数の商品の提示を義務付け▽商品ごとに「全国平均貸与価格+1標準偏差」を貸与価格の上限として設定――などの見直しが行われる。

 委員からは、「福祉用具は自由価格だが、上限設定となると、実質的な公定価格につながる懸念がある。現場に混乱を招かないように、慎重な運用を検討して欲しい」(稲葉雅之・民間介護事業推進委員会代表委員)などの注文が付けられた。
(シルバー産業新聞2017年7月10日号)

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