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介護職員1人5.4万円相当 補助対象は一時金支給や介護助手募集など

介護職員1人5.4万円相当 補助対象は一時金支給や介護助手募集など

 厚生労働省は2月7日、今年度の補正予算で実施する「介護人材確保・職場環境改善等事業」の実施要綱について、実施主体である各都道府県に通知した。予算額は介護職員1人当たり5万4000円相当を支給できる規模として806億円を確保する。介護職員等処遇改善加算Ⅰ〜Ⅳを算定し、生産性向上に取組む事業所を対象に人件費や介護助手の募集費用などを補助する。同18日にはQ&Aも発出された。

対象事業所と補助額

生産性向上の取組みも補助要件に

 支給対象は、介護職員等処遇改善加算(以下、処遇改善加算)Ⅰ~Ⅳを算定、かつ、委員会の立ち上げなどの生産性向上に取組む事業所。同加算が設けられていない居宅介護支援や訪問看護、福祉用具貸与などは対象から外れる。処遇改善加算は昨年12月時点でⅠ~Ⅳを算定していることを原則としつつも、来年度の同加算算定の体制届出を4月1日(届出先の自治体が4月15日まで延長している場合は4月15日)までに行うことでも対象となる。
 
 生産性向上の取組みに関しては、①介護職員等の業務の洗い出しや棚卸しなど、現場の課題の見える化②業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、または外部の研修会の活動等)③業務内容の明確化と職員間の適切な役割分担の取組み――のいずれかの実施を計画するか、すでに実施していることも要件とされた。

昨年12月(原則)の総報酬×交付率

 補助額は、基準月の介護総報酬にサービスごとの交付率(表)を乗じた金額。基準月は昨年12月を基本としつつ、サービス提供が他の平常月と比較して著しく低い場合などは、各事業所の判断で25年1~3月のいずれかを任意で対象月にできるとしている。

対象経費と留意点

テクノロジー導入費用は補助対象外

 補助される対象経費は①職場環境改善経費②人件費――の2つ。①②両方でも、一方のみの取組みでも構わないが、実績報告で経費総額は交付額以上となっていることが求められる。

 ①職場環境改善経費は、介護助手の募集経費、職場環境改善に取り組むための研修費などに対象が限られており、職場環境改善の幅広い用途に利用できるものではないことに注意が必要だ。QAでも「職場環境改善に要する費用全般に充当することは想定していない」としている。介護ロボットやICT機器の購入費用にも充当できず、これらは同じく補正予算で実施する「介護テクノロジー導入・協働化等支援事業」の補助対象となる。

 ②人件費は、職員への一時金支給などが対象となる。支給に伴う、法定福利費等の事業主負担の増加分も含めることができる。介護職員に限らず、補助を受ける事業所の職員が賃金改善の対象にできる。さらに法人本部の職員なども、補助金対象のサービス事業所等における業務を行っていると判断できる場合には、人件費改善や職場環境改善の対象に含められる。

 ただし、居宅介護支援や訪問看護などの補助金対象外サービスに勤務する職員は対象に含めることができない。

Q&A(2月18日発出分より抜粋・編集)

問1 交付額による人件費の改善や職場環境改善はいつまでに行う必要があるか。

(答)基準月から各自治体が定める実績報告書の提出までに行う必要がある。そのうち、人件費の改善は、緊急支援という趣旨を鑑み、可能な限り速やかに実施いただきたい。

問2 法定福利費等の事業主負担の増加分は、人件費の改善に含めてよいか。

(答) 当該人件費の改善に伴い生じる法定福利費等の事業主負担の増加分を含めることも可能。

問3 補助金を人件費の改善に充てる場合、介護職員以外の職員への配分は可能か。

(答) 介護職員への配分を基本とするが、同一事業所において雇用する者であれば、介護職員以外も含め、すべて対象とすることが可能。

問4 法人本部の人事、事業部等で働く者など、介護サービス事業者等のうちで介護に従事していない職員について、補助額に基づく人件費改善や職場環境改善の対象に含めることは可能か。

(答) 法人本部の職員については、補助金の対象であるサービス事業所等における業務を行っていると判断できる場合には、人件費改善や職場環境改善の対象に含めることができる。

 補助金の対象となっていない介護サービス事業所等の職員は、本補助金を原資とする人件費改善や職場環境改善の対象に含めることはできない。

問5 補助金を職員のベースアップに充ててもよいのか。

(答) 本補助金を職員の人件費に充てる場合は、一時金や臨時の手当として充てることを想定している。 恒久的な支援策ではないため、ベースアップに充てることは想定していないが、各事業所の経営判断として、各種の生産性向上・職場環境改善等の取組の効果により、持続的な賃上げ余力が生じることを見越して、それまでの間のつなぎの原資とすることを妨げるものではない。

問6 人件費や職場環境改善等の経費に充てられることとなっているが、補助経費間の配分ルールは設けられているのか。

(答) あらかじめ決まった配分ルール等はなく、人件費に全額充てることも、職場環境改善の経費に全額充てることも可能。また、人件費と職場環境改善経費の両方に充てることも可能である。

問7 介護職員等処遇改善加算について、いつの時点で算定している必要があるか。

(答) 基準月(令和6年12月を基本とし、令和7年1月、2月または3月も選択可能)において、介護職員等処遇改善加算(~Ⅳに限る)を算定していることを基本とする。

 ただし、当該月から処遇改善加算の算定に必要な準備・届出等が間に合わない場合に限り、令和7年4月からの処遇改善加算の算定に向けた体制届出を期日までに行っている場合には、本事業の対象とする。 なお、処遇改善加算の算定状況については、国保連合会における台帳情報において把握することを想定しており、各都道府県において申請状況を確認することは求めない(国保連合会の台帳情報において処遇改善加算に相当する加算の算定状況を把握していない一部の総合事業のサービスを除く)

問8 介護職員等処遇改善加算Ⅴを算定している場合は補助金の対象外となるのか。

(答) 基準月(令和6年12月を基本とし、令和7年1月、2月または3月も選択可能)においてⅤを算定しているのみでは補助金の要件を満たさないが、この場合であっても、問7に記載のとおり、令和7年4月から処遇改善加算の算定に向けた体制届出を期日までに行っている場合には、本事業の対象とする。

問9 休廃止を予定している事業所について、本交付金の対象となるか。

(答) 事業計画書の提出時点で休廃止することが明らかになっている事業所については、本補助金の交付対象外とする。 ただし、事業計画書の提出時点では見通せなかった事情等により事業所が休止することになった場合については、休廃止することが明らかになった時点で速やかに都道府県に届け出ることとする。

問10 補助対象経費として「介護助手等を募集するための経費」とあるが、介護職員を募集する経費に充てることは可能か。

(答)一般の介護職員を募集する経費に充てることは想定していない。なお、「介護助手等」の「等」には、「介護補助者」「介護サポーター」など、介護助手に類する者を想定している。

問11 過去に職場環境改善等のために要した経費は補助対象か。

(答)基準月以降に行った職場環境や人件費改善の経費に充てることとしており、対象とならない。

問12 事業者が補助金の入金を受ける前に実施した人件費改善や職場環境改善であっても、基準月(原則、令和6年12月)以降に実施したものであれば、今回の補助金の充当先として実績報告することも可能か。

(答) 貴見のとおり。

問13 ICT機器本体の導入にあたって、「介護テクノロジー導入・協働化等支援事業」における事業所持ち出し分が生じている場合、本補助金を充てることは可能か。

(答)本補助金は介護テクノロジー導入・協働化等支援事業の対象経費(介護テクノロジー等の機器購入費用)に充できないため、事業所持ち出し分も本補助金の対象とならない。

問14 職場環境改善経費について、介護助手等を募集するための経費や研修費以外に、どういった経費が対象経費として含まれるのか。

(答)職場環境改善経費は、介護助手等を募集するための経費、または職場環境改善等のための様々な取組を実施するための研修費に充当することを基本とするが、補助金の要件としている「介護職員等の業務の洗い出しや棚卸しなど、現場の課題の見える化」「業務改善活動の体制構築」「業務内容の明確化と職員間の適切な役割分担(介護助手の活用等)の取組」に関する取組みの実施に要する費用のうち、介護テクノロジー導入・協働化等支援事業の対象経費ではないもの(専門家の派遣費用、会議費等)に充当することも可能である。その他の職場環境改善に要する費用全般に充当することは想定していない。

問15 交付額を算出する基準月について、事後的に報酬が変動したことにより、変更申請を行うことは可能か。

(答) 申請事務の円滑化の観点から、基準月について、申請後、事後的に変更することは不可とする。なお、問17に記載のとおり、月遅れ請求、再請求等に伴う過誤調整分については、令和7年3月末日までに生じ、令和7年4月10日までに審査支払機関により受理されたものに限り、反映することとしており、それ以降の過誤調整分については反映されない。

問16 交付額を算出する基準月について、各事業所の判断となっているが、令和6年12月サービスではない場合その理由は必須なのか。

(答) 基準月については、過誤調整等の影響を避ける観点から、原則として、令和6年12月のサービス提供分としている。12月のサービス提供分が他の平常月として著しく低いなど、各事業所の判断により、令和7年1月、2月または3月の任意の月を基準月とすることができるが、申請事務の円滑化のため、その際、都道府県にその事由を届けることは不要とする。

 ただし、月遅れ請求、再請求等に伴う過誤調整分を適切に反映するとともに、基準月の選択誤りなどの事務的な誤りを防ぐ観点からも、特段の支障がない場合には、令和6年12月サービスを基準月とすることが望ましい。

問17 月遅れ請求、過誤調整等により、事後的に総報酬の額が増減する場合、補助金の算出額にどのように反映されるのか。

(答) 月遅れ請求、再請求等に伴う過誤調整分については、令和7年3月末日までに生じ、令和7年4月10日までに審査支払機関により受理されたものに限り、反映することとする。

問18  令和7年4月以降に開設する新規事業所は対象外か。

(答) 令和7年4月以降に開設する新規事業所は対象とならない。

問19 事業者から本補助金を債権譲渡したい旨の要望があった場合の考え方如何。

(答) 本補助金は、全額を職場環境改善経費、または人件費(一時金等)の引上げに充当することとする補助金であり、債権譲渡することは適当ではない。 このため、債権譲渡等により、国保連合会に登録されている口座に本補助金を振り込むことが適当でない事業所に対する本交付金の支払いについては、債権譲渡を行っていない事業所の介護給付費等の振込先口座、または介護サービス事業者等の口座に直接支払(振込)を行うこととする。

問20 法人単位での申請は可能か。

(答) 介護職員等処遇改善加算と同様、法人単位での計画書の作成が可能であるが、補助金の申請は事業所が所在する都道府県ごとに行う必要がある。都道府県ごとに振込先の指定方法等が異なる場合もあることから、補助金の計画書は都道府県から示されたものを用いること。

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