コラム

【介護予防・通所型サービスC】連載 プロフェッショナルに聞く 短期集中予防サービスの最前線②

【介護予防・通所型サービスC】連載 プロフェッショナルに聞く 短期集中予防サービスの最前線②

 介護保険制度存続の命運を握る介護予防。介護保険サービスからの“卒業”を掲げる短期集中予防サービスのフィールドで長年、最先端の取り組みを行う専門家にサービス実践のポイントを解説いただく。今回は、大分県の介護予防事業の先駆けであり、全国で通所型サービスC立ち上げの伴走支援を行うアイトラック佐藤孝臣代表に聞いた。

10年先を見つめた施策をいま打つ

今月のポイント

・通所Cをテーマとした地域ケア会議で“高齢者が元気になる”成功体験を積む
・事業所から成功報酬を求めることが予算適正利用の好循環を生む
・自治体での運用が困難なら民間を含めた外部の力を活用する
佐藤孝臣さん

佐藤孝臣さん

アイトラック代表。作業療法士。日本作業療法士協会理事。厚生労働省地域づくり加速化事業アドバイザー、介護予防・日常生活支援総合事業の充実化に向けた検討会構成員。

 介護保険料は、制度開始当初に比べ2倍以上に膨れ上がった。財政負担となっており、社会保障サービス全般への悪影響を懸念している。

 この点を踏まえず、活動機会を低下させるお世話型サービスが投入されるケースが見られるが、これはケアマネや利用者自身も“高齢者が元気になる”成功体験がないことが原因だ。

 大分県では、通所型サービスCが全市町村にあり、少なくとも地域包括支援センターのケアマネは、高齢者が介護保険サービスを使って元気になる姿を見ている。この体験が、軽度者へのサービス選択に与える影響は大きい。ケアマネの意識改革には、通所Cをテーマとした地域ケア会議が有効だ。サービス卒業時に、動画や身体機能の測定値を使って、3カ月間の前後を比較すると改善を実感できる。

サービス脱却が本来のケアマネジメント

 通所Cには終わりがあり、通いの場など卒業後の行先を確保しなければならない。ケアマネ業務として負担が増える場合もあるが、地域とのつながりが増えるメリットもある。

 従来型の介護サービスを投入する業務では担当者数が増える一方であり、ケアマネをどれだけ育成しても足りることがない。通所Cを活用すれば、ある程度卒業していくので新規の利用者を受け入れることができる。

 一方で改善が見込まれる高齢者の見極めやモニタリングに追われ、従来型のサービスと比べものにならないスピード感が要求される。

予算の適正利用のため成功報酬を求める

 大分県では通所Cに対し、生活機能向上加算2万円、生活機能維持支援3000円と、成果に応じた独自加算を創設した。

 いわゆる国のインセンティブ交付金を活用したものだが、国の財政状況の逼迫によって年々全体の支給額が減っていることを危惧する。

 現在、成果が出せる都道府県の支給額は増加し、その資金でさらなる成果が出る好循環が生まれている一方、逆のパターンもある。負の連鎖を断ち切るためには、限られた財源の中でも介護予防事業に注力することが求められる。

 また、当初は交付金の用途の例示がなかったため、都道府県がそのまま基金に回して終わるケースもあった。通所Cを実施する事業所からも成功報酬を求めるなど、交付金等の有効活用を訴えていく姿勢が大切だ。

運用困難なら外部の力を活用

 現在、支援にあたっている九州の山間部の町では、人口が少なく診療所が一つしかない。介護事業所も通所リハとデイサービスがそれぞれ1カ所のみだ。

 このような地域の多くは将来事業所がなくなる。町にも単独での運営が難しくなることを伝え、通所Cの立ち上げは住民主体の運営としつつ、近隣自治体の病院から週1回のリハ職派遣と県の地域包括ケアシステム担当者へのリスク管理を含めた助言を求めるよう指導している。

 しかし、人手不足が続く中、自治体の職員だけに通所Cの立ち上げから運用まで担ってもらうことは年々難しくなっている印象だ。

 通所C単独で経営を成り立たせるためには、▽行政がサービスの場を提供▽現地のリハ職と看護師に週1回来てもらい毎週サービスを実施することが要件となるだろう。

 今後の制度の持続のためには、事業そのものの運営を外部委託するといったビジネスモデルの発展も必要だ。
(シルバー産業新聞2025年5月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル