コラム
新連載 プロフェッショナルに聞く 短期集中予防サービスの最前線

高齢者の介護予防なくして介護保険制度は続かない。その鍵を握る短期集中予防サービスは効果が期待される一方で、報酬が見合わず普及は道半ばだ。介護サービスを〝卒業〞することへの事業者の懸念も道を阻む。本連載では、信念をもって長年、最先端の取り組みを行う専門家にサービス実践のポイントを解説いただく。初回は、大阪府寝屋川市の通所型サービスC、ハーモニィー・ワンセルフの名倉和幸さんに聞いた。
制度存続をかけた「お世話型支援」からの脱却
今月のポイント
・通所Cは、自立支援に有効だが報酬面など普及への課題が多い
・お世話型支援の前に行政一体で短期集中予防サービスを検討する
・フレイルは短期集中予防サービスで改善する
・通所Cは、自立支援に有効だが報酬面など普及への課題が多い
・お世話型支援の前に行政一体で短期集中予防サービスを検討する
・フレイルは短期集中予防サービスで改善する

短期集中予防サービスの通所型サービスCでは、総合事業対象者や要支援1、2といった軽度者に向けて、直接利用者の身体に触れることなく、フレイルなどの生活課題を解決するための提案を行う。
当施設では、定員10人に対し、午前中2時間のメニューを週4日提供。これまでの5年間で利用者465人のうち390人が3カ月の利用期間を完走し、261人が介護サービスから卒業していった。リハ専門職が専従で担当するが、売上は月最大60万円程度と収益性は乏しい。しかし、介護保険制度本来の自立支援・介護予防という理念実現のため、不要なサービスを使っている人が、サービスに頼らず生活していくための取り組みを推進したい。
当施設では、定員10人に対し、午前中2時間のメニューを週4日提供。これまでの5年間で利用者465人のうち390人が3カ月の利用期間を完走し、261人が介護サービスから卒業していった。リハ専門職が専従で担当するが、売上は月最大60万円程度と収益性は乏しい。しかし、介護保険制度本来の自立支援・介護予防という理念実現のため、不要なサービスを使っている人が、サービスに頼らず生活していくための取り組みを推進したい。
周りの人が要介護者を生み出す
介護が必要な高齢者を作っているのは、ケアをする周囲の人に他ならない。
高齢者の場合、病気やけがをきっかけに周りから「手術の後だから無理しないで」「介護をするのは私たち家族だから」と声をかけられる中で、介護を受ける高齢者としての自己像が形成される。
また、病気やけがが、従来ある介護保険サービスと直結してしまっており、すぐに「お世話型の支援」が投入されることも多い。「ヘルパーが使えないなんて気の毒」「サービスが途切れないよう最初から通所リハを」といった事業者側の思惑もある。
当施設のある寝屋川市では、軽度者のケアプランを作成する際に、必ず短期集中予防サービスを検討することとしており、一定の効果を上げている。このように行政と一丸となった取組みが求められる。
高齢者の場合、病気やけがをきっかけに周りから「手術の後だから無理しないで」「介護をするのは私たち家族だから」と声をかけられる中で、介護を受ける高齢者としての自己像が形成される。
また、病気やけがが、従来ある介護保険サービスと直結してしまっており、すぐに「お世話型の支援」が投入されることも多い。「ヘルパーが使えないなんて気の毒」「サービスが途切れないよう最初から通所リハを」といった事業者側の思惑もある。
当施設のある寝屋川市では、軽度者のケアプランを作成する際に、必ず短期集中予防サービスを検討することとしており、一定の効果を上げている。このように行政と一丸となった取組みが求められる。
自分の生活は自分で責任を持つ
「解決できる課題は自分で解決を目指す」考えは失われやすい。
軽度者への早い段階での介護サービス投入は、活動の機会損失から廃用の引き金になる可能性がある。
例えば、転倒して骨折しても、治癒して一時的に弱った筋力が回復すれば、本人が自信をもつことで元の生活に戻れる。そこを解決できる課題として認識せずに、活動の機会を取り上げてしまうとADLの低下が加速する。
買い物や外出、家の中の掃除にしても、生活における「役割」として認識し、日々続けることで、機能低下が防止できるメリットや効果がある。
軽度者への早い段階での介護サービス投入は、活動の機会損失から廃用の引き金になる可能性がある。
例えば、転倒して骨折しても、治癒して一時的に弱った筋力が回復すれば、本人が自信をもつことで元の生活に戻れる。そこを解決できる課題として認識せずに、活動の機会を取り上げてしまうとADLの低下が加速する。
買い物や外出、家の中の掃除にしても、生活における「役割」として認識し、日々続けることで、機能低下が防止できるメリットや効果がある。
フレイルを脱却する
フレイルとは、一般の老化による衰えよりも年齢相応以上に急速にADLが低下した状態。体を動かす機会が減ったり、退職後に家に閉じこもっているなど生活が不活発になるほど進行する。一方で、活動量の増加や生活習慣の見直しによって、元のADLまで可逆的に回復でき、要介護状態になることを未然に防げる重要な段階だ。
行政の窓口や地域包括支援センターに加えて、家族などの支援者にも周知し、最初の段階で、困りごとに至った経過を聞き取って、解決に向けた予防サービスを勧めることができれば、介護給付費の抑制にもつながるだろう。
軽度者は改善の可能性が高く、自己責任で自分のやりたいことができる状況にある。生きがいや楽しみをもって生活する人が増えることを強く願っている。
行政の窓口や地域包括支援センターに加えて、家族などの支援者にも周知し、最初の段階で、困りごとに至った経過を聞き取って、解決に向けた予防サービスを勧めることができれば、介護給付費の抑制にもつながるだろう。
軽度者は改善の可能性が高く、自己責任で自分のやりたいことができる状況にある。生きがいや楽しみをもって生活する人が増えることを強く願っている。
(シルバー産業新聞2025年4月10日号)