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和歌山の介護保険 近畿最高の高齢化とサービスの地域偏在
和歌山県の今年の総人口は90.1万人で高齢者人口30.5万人、高齢化率33.9%と近畿府県内で最も高齢化が進む。2040年には高齢化率41.2%に達すると見込まれている。65歳以上人口は22年にピークを越えており、現在は減少局面となっている一方、介護ニーズの高い85歳以上人口は、40年頃まで増加することが見込まれている。
県では7つの老人福祉圏域が設定されており、その中でも新宮・東牟婁(むろ)圏域にある古座川町では高齢化率54.6%と最高。一方で、紀の川・岩出圏域にある岩出市は同25.1%と最も低い値を示す。「大きな都市へのアクセスのよい市町村には、ベッドタウンとして若年層が流入している」と長寿社会課主査の山田遼太さんは分析する。
高校生向け初任者研修が盛況
県における介護人材の需要および供給の推計では、35年には、需要数2万4946人に対して、供給数2万2446人と約2500人が不足すると見込まれている。
この状況を受け、県では高校生が介護職員初任者研修を無料で受講できる取組を15年から継続して行っており、これまでに800人以上が修了。今年も約130人が受講した。修了者のうち進学を除いたおよそ半数が介護分野の職場へ就職している。
このほか、介護のイメージアップに向けて福祉人材センターに委託し「介護という仕事ガイドブック」を22年に作成しており、県内の高校2年生と中学2年生に1人1冊ずつ毎年配布している。
この状況を受け、県では高校生が介護職員初任者研修を無料で受講できる取組を15年から継続して行っており、これまでに800人以上が修了。今年も約130人が受講した。修了者のうち進学を除いたおよそ半数が介護分野の職場へ就職している。
このほか、介護のイメージアップに向けて福祉人材センターに委託し「介護という仕事ガイドブック」を22年に作成しており、県内の高校2年生と中学2年生に1人1冊ずつ毎年配布している。
中山間地域の訪問介護人材を育成
訪問介護は全国同様、ヘルパーの不足感が強い。中山間地域では事業所が減少しており、市町村の社会福祉協議会が地域を支えるためにサービスを担っているケースも多い。「そもそも中山間地域では、サービス従事に必要な介護職員初任者研修を受ける機会がほとんどない。ヘルパー不足に拍車をかけている」と同課主事の中谷結羽さんは語る。
これを受け県では、今年から中山間地域において初任者研修を開始。10人ほどが参加し、研修の中で就職相談会と地域の訪問介護事業所への就職サポートを実施している。「初めて介護の仕事に挑戦する人から、すでに介護の仕事に就いていて新たに資格を取りたい人まで参加者は様々。まずは資格をとって欲しいとの思いで事業を行った」(中谷さん)
現在、国の検討会では、40年に向けた深刻な人材不足に向けて「福祉人材確保プラットフォーム」の議論が進む。介護人材に関する情報収集・調整・育成機能などを集約しつつ人材確保を進めることが県においても課題となる。
これを受け県では、今年から中山間地域において初任者研修を開始。10人ほどが参加し、研修の中で就職相談会と地域の訪問介護事業所への就職サポートを実施している。「初めて介護の仕事に挑戦する人から、すでに介護の仕事に就いていて新たに資格を取りたい人まで参加者は様々。まずは資格をとって欲しいとの思いで事業を行った」(中谷さん)
現在、国の検討会では、40年に向けた深刻な人材不足に向けて「福祉人材確保プラットフォーム」の議論が進む。介護人材に関する情報収集・調整・育成機能などを集約しつつ人材確保を進めることが県においても課題となる。
施設へのテクノロジー導入全国トップレベル
職場環境改善を目指し、介護テクノロジー導入支援事業に力を入れている。昨年度は予算1.9億円を大幅に超過する申請があるなど、県内の介護事業所におけるテクノロジー導入への意識は高く、今年度は予算を2・9億円に拡充した。申請機器等については、生産性向上推進体制加算の要件でもある介護ソフト・インカム・見守り機器が多い。
「厚労省の生産性向上に関するダッシュボードでは、介護テクノロジー等の導入割合が、全サービスで33.1%と全国平均を上回る。施設系では導入率53.6%と全国5位以内に入る一方で、訪問・通所系での導入率が低いことが課題」と中谷さんは説明する。
「厚労省の生産性向上に関するダッシュボードでは、介護テクノロジー等の導入割合が、全サービスで33.1%と全国平均を上回る。施設系では導入率53.6%と全国5位以内に入る一方で、訪問・通所系での導入率が低いことが課題」と中谷さんは説明する。
100事業所にデータ連携一斉導入も課題多く
介護サービス提供の効率化に加えて、訪問・通所系事業所の補助金要件でもあるケアプランデータ連携システム。県では昨年度、御坊・日高圏域をケアプランデータ連携システムのモデル地域に指定し、地域にある約100事業所を対象にシステムを一斉導入した。
「御坊・日高圏域ではシステムの導入率が高いが、他の地域での普及は道半ば。システム導入事業所同士であれば、今までよりも早く情報交換できるが、システム非対応の事業所とは結局紙でのやり取りが行われる。業務フローが二重化してしまい、効率化に直結していない」と中谷さんは話す。
「御坊・日高圏域ではシステムの導入率が高いが、他の地域での普及は道半ば。システム導入事業所同士であれば、今までよりも早く情報交換できるが、システム非対応の事業所とは結局紙でのやり取りが行われる。業務フローが二重化してしまい、効率化に直結していない」と中谷さんは話す。
在宅サービスの地域偏在が課題
人口10万人あたりの訪問看護ステーションの数は全国1位。さらに訪問介護事業所、居宅介護支援事業所はともに全国2位と高い水準にある。ただし、和歌山市など都市部に介護事業所が集中する一方で、訪問介護事業所が1カ所しかない市町村もあるなど、在宅サービスの地域偏在が大きい。
「和歌山県は山林の面積が多く、山間部に散在して住む人たちへのサービス提供体制をどのように維持していくのかが、今後の大きな課題。地域によって状況が様々なので、市町村事業としてサービスを提供するなどのケースも出てくるかもしれない」(山田さん)
県では、過去に要支援1、2の軽度者の認定率が全国で2~3位と高かった時期がある。そこで介護予防への取り組みを進め、現在、65歳以上の人の通いの場への参加率は国が目標値に掲げる8%に上る。フレイルなどの改善を目指す短期集中予防サービスも県の30市町村の内、16市町で実施している。今年度もさらなる立ち上げのため、地域支援事業に係る市町村支援に加え短期集中予防サービスに特化した伴走支援を行っている。
「他産業との競合もある中で、介護人材の数はすぐには伸びていかない。軽度の人は介護予防を行いながら住み慣れた地域でできるだけ長く暮らしてもらいたい」と山田さんは語る。
(シルバー産業新聞12月10日号)
「和歌山県は山林の面積が多く、山間部に散在して住む人たちへのサービス提供体制をどのように維持していくのかが、今後の大きな課題。地域によって状況が様々なので、市町村事業としてサービスを提供するなどのケースも出てくるかもしれない」(山田さん)
県では、過去に要支援1、2の軽度者の認定率が全国で2~3位と高かった時期がある。そこで介護予防への取り組みを進め、現在、65歳以上の人の通いの場への参加率は国が目標値に掲げる8%に上る。フレイルなどの改善を目指す短期集中予防サービスも県の30市町村の内、16市町で実施している。今年度もさらなる立ち上げのため、地域支援事業に係る市町村支援に加え短期集中予防サービスに特化した伴走支援を行っている。
「他産業との競合もある中で、介護人材の数はすぐには伸びていかない。軽度の人は介護予防を行いながら住み慣れた地域でできるだけ長く暮らしてもらいたい」と山田さんは語る。
(シルバー産業新聞12月10日号)


