連載《プリズム》

2015年、社会保障の大転換

2015年、社会保障の大転換

 2015年は介護保険制度の大きな転換点になる。600万人が認定を受け、500万人がサービスを受給する日本の高齢化を支える制度が変わる。(プリズム2015年1月)

 制度の現状に根本的な問題があるからではない。1年間で要介護度が改善する人は1割、悪化する人は2割。7割の人は、変わらない。これは170万人の介護従事者がはたしてきた立派な成果だ。

 介護保険によって、どれほどに本人や家族は支えられていることだろう。今後も制度を持続していくために、人口減少社会での長期療養者への対応に向けた社会の仕組みとして、地域包括ケアシステムづくりが必要である。

 これから大きく進展するのは、医療的な処置を要する長期療養者の在宅復帰だ。在宅医療と在宅介護が必要になる。

 多くの人は、医師の指示書にもとづく訪問看護が欠かせない。4月予定の介護報酬改定では、現在は看護師全体の2%とされる訪問看護師を6%程度にまで増やすため、病院や診療所の看護師に白羽の矢を立てた。訪問看護ステーションの介護報酬は高く設定されているが、これとの差額を縮める。病院・診療所は、退院した自分たちの患者を、在宅で面倒をみることになる。病院と在宅の間を結ぶ「地域包括ケア病床」の創設や、介護療養病床における「療養強化型」の創設も、在宅医療を支える。療養強化型介護療養病床の要件に、リハビリと地域貢献が加えられたことに注目したい。

 サービスの重点化が進み、負担のあり方も変わる。予防給付受給者100万人のうち、一定数は向こう3年間で市町村事業へ移行する。特養入所者は原則として要介護3以上になる。8月には一定所得者の2割負担が導入され、補足給付に資産要件が追加される。一方、低所得者の保険料負担を軽減する案も検討されている。

 介護人材の確保に向けて、外国人技能実習制度に介護分野が加わる。EPA以外から外国人介護従事者が生まれるかもしれない。2015年、いよいよ社会保障改革の実践が始まる。
(シルバー産業新聞2015年1月10日号)

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