連載《プリズム》

介護なき介護保険?

介護なき介護保険?

 65歳以上の高齢者人口は3384万人、総人口に占める割合は26.7%に達した。80歳以上は1002万人、初めて1000万人の大台に乗っ た。総務省が今年のシルバーウィークを前に発表した。(プリズム2015年10月)

 9月11日時点の100歳高齢者は、6万1568人。今年度中に100歳になる新100歳は3万379人。お祝いを申し上げたい。

 高齢者は元気に過ごし、自分のことは自分でするのが一番のしごと。就労する人も681万人で、高齢者の約21%が働く。男性で29%、女性で14%。欧米に比べて段違いに、働く高齢者は多い。日本人は歳をとっても勤勉だ。経済的な理由で働く人が多いが、まだまだ元気、できれば死ぬまで働きたいと思っている人も多い。持ち家のマンション住まいで年金があり、お金の心配がない人でも、80歳を超えてもシルバー人材センターに登録し、平日は働くという人がいる。

 しかし安心して元気で働けるのも、住まいがあり、年金という現金収入があって、いざとなれば医療や介護の保障があるからこそだ。そのために、私たちは長年多額の保険料を払っている。そうした社会的サービスがなければ、若者から高齢者まで、人々はただただお金を貯めざるを得なくなり、やがて消費経済は冷え込む。政府の社会保障論議をつなぎ合わせれば、来年からのマイナンバー制(社会保障・税番号制度)の導入によって、預貯金など一定以上の資産があれば、近い将来、医療や介護の社会サービスは自費になるかも知れない。これは正しい選択といえるのか。

 社会保険による社会サービスは、経済力に応じて保険料の負担が変わっても、だれしも利用が必要になれば平等に受けられなければならない。この原則が守られなければ、社会保険は信頼を損ねて崩壊する。医療や介護などのマンパワーは高価であり、必要量を自費で払える人は余裕層に限られる。介護保険のある国で「将来の不安は介護」とは思いたくない。

 ことしは中秋の名月、その翌28日の満月がみごとだった。雲が薄くたなびく東の空に、黄味がかった大きな円が一回り大きく光り輝き、人々を平等に照らした。

(シルバー産業新聞2015年10月10日号)

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