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解説 医療系サービス報酬改定(前編)

解説 医療系サービス報酬改定(前編)

 訪問看護、居宅療養管理指導、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションの医療系4サービスの介護報酬改定が6月1日に施行された。主に改定の基本方針「地域包括ケアシステムの深化・推進」の中で、医療機関との連携強化による円滑な在宅移行や、看取りまで在宅療養を維持するための重度者支援、医療ニーズへの対応が加算等で評価されている。厚生労働省発出Q&A(5月17日Vol.6)も踏まえて解説。今号は前編として訪問看護と居宅療養管理指導をとり上げる。

訪問看護

緊急時対応ICT活用で上位加算

 利用者・家族からの電話等での相談に常時対応する緊急時訪問看護加算は上位区分を新設。既存の要件に加え、夜勤担当者の負担軽減に資する取組を求める。

 具体的には①夜間対応翌日の勤務間隔の確保②夜間対応勤務は連続2回まで③夜間対応後の暦日の休日確保④夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫⑤ICT等の活用による業務負担軽減⑥電話等の連絡・相談を受ける担当者への支援体制の確保――のうち、①または②を含む2つ以上を実施する。

 「夜間対応」とは営業日・営業時間以外の緊急時訪問看護や利用者・家族等からの電話連絡を受けての指導が該当。24時間・365日営業の事業所の場合は夜間・深夜・早朝の計画的な訪問看護等の提供をもって夜間対応とみなすことができる。

 また、⑤のICT等は看護記録の音声入力、職員間の情報共有ツール、医療情報連携ネットワーク等を用いた関係機関との情報連携など業務負担軽減に資するものを想定。単に電子カルテを使用している場合は含まない。

 ⑥の支援体制の例としては、夜間対応職員が他の看護師等に、利用者の状態や対応について相談できる体制の構築や、緊急時訪問中に他の利用者から電話があった場合に、他の看護師が対応する体制、状態が変化しやすい利用者情報の事前共有などが挙げられている。

 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の同加算、および診療報酬の「24時間対応体制加算」も同様の改定を行った。

 改定前の同加算(新加算Ⅱ)は8割以上で算定。ただ24時間対応は原則、事業所の看護師・保健師が直接電話を受けることとされていたため、負担の大きさや人材確保の課題が指摘されていた(グラフ1)。加えて、厚労省によると電話相談は体調・病状に関する内容が72.9%で最も多かった一方、訪問日時の確認・変更など即時的な対応を要さないものも35.6%あった。

 これを受け今改定では24時間体制の人員要件を緩和。連絡・相談を受ける担当職員を事業所の看護師・保健師以外でも可能とした。

 その際の条件として▽相談対応のマニュアル整備▽緊急訪問の必要性を保健師・看護師が速やかに判断できる連絡体制▽担当職員の都道府県への届出と勤務体制の明確化▽連絡を受けた際に保健師・看護師へ報告――などを義務づける。

 マニュアルでは電話対応の方法と流れや、看護に関する意見を求められた場合の保健師・看護師への連絡方法、連絡相談の記録と保健師・看護師との情報共有等を最低限記載すべきとしている。

在宅医療のレベルを引上げ

 22年度の診療報酬改定では、緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門ケア、人工膀胱ケアに関する専門研修を受けた看護師、または気管カニューレや胃ろうカテーテルの交換等の特定行為研修を修了した看護師が対象患者へ計画的な管理を行った場合の評価として専門管理加算を新設。介護報酬でも今回、同加算(月250単位)が新設された。

 介護保険の訪問看護利用者の傷病は悪性腫瘍(がん)、パーキンソン病などの神経疾患、脳卒中などの循環器疾患、骨折などの筋骨格系疾患が多い。これらは長期臥床や低栄養に伴う褥瘡の原因になる。がんの手術に伴う人工肛門の設置、終末期の麻薬を使った緩和ケアなどのニーズもある。

 また、ターミナルケア加算は医療保険との整合性から2000単位を2500単位へ引上げた。訪問看護でのターミナルケアは年々増加し、23年6月時点で介護保険2181件、医療保険8499件。介護・医療ともに清潔援助が8割強で最も多く、家族への療養指導、排泄管理なども共通して高い。双方のケア内容に大きな差がないことから同程度の報酬とした。

 さらに、新設された遠隔死亡診断補助加算(150単位)は、離島等で死亡診断を行うまでの家族の待機時間解消や、医療機関への搬送の負担をなくすことで、在宅看取り体制を強化することが目的。医師は遠隔で死亡診断を行い、看護師は利用者宅でICTを活用し補助を行う。診療報酬では22年改定で既にスタートしている。

 補助を行う看護師は、ICT等の機器を用いた在宅看取りの研修が必須。現時点で厚労省「在宅看取りに関する研修事業」(17~19年度)、「ICTを活用した在宅看取りに関する研修推進事業」(20年度~)が該当する。

退院日の訪看を評価

 前回21年改定では、主治医が認める場合に退院当日の訪問看護の算定が可能となった。今改定ではこの部分を報酬で差別化。新規利用者への初回訪問時に算定する初回加算について、退院当日に訪問する加算Ⅰ(350単位)、退院翌日以降に実施する加算Ⅱ(300単位)に分類、円滑な在宅移行の動機づけとした。

 これまでも入院中に新たに処方した内服薬や自己注射などを自宅で継続する際、本人・家族が十分管理できないケースがみられた。退院後の病状や見通し、緊急時対応に不安があるとの声も多い。

 23年度調査の結果によると、退院当日に訪問した利用者は3割強。うち4分の1を要介護5が占める(グラフ2)。「家族との調整(ケアの指導等)」「服薬援助」「心理的支援」のニーズが高い。

居宅療養管理指導

栄養・歯科衛生通所利用者も対象に

 管理栄養士、歯科衛生士等の居宅療養管理指導については、算定対象者を「通院または通所が困難な者」から「通院が困難な者」に見直し。通院困難であれば、通所サービス利用者は算定対象に含めてよいこととなった。

 実態として、通所サービスで噛むことに問題がある利用者がいる事業所は6割以上、義歯の利用者がいる事業所は7割以上、やせた利用者がいる事業所は4割以上。口腔・栄養への介入が課題となっている。21年改定では通所サービスに管理栄養士(外部連携可)による評価「栄養アセスメント加算」が新設されたが、24年1月審査分で通所介護利用者の算定率は2.3%と伸びていない。

麻薬注射・中心静脈要介護者のニーズも

 薬剤師の訪問に新設された医療用麻薬持続注射療法加算(1回250単位)は、在宅で医療用麻薬持続注射療法を行う利用者へ投与・保管、副作用の有無等の状況を確認し、必要な薬学的管理指導を行うもの。提供主体の医療機関、薬局は麻薬小売業者免許、および高度管理医療機器の販売業許可が必要になる。

 在宅中心静脈栄養法加算(1回150単位)も同様。在宅中心静脈栄養法を行う利用者へ投与・保管の状況、配合変化の有無を確認し、必要な指導を実施する。(高度)管理医療機器の販売業の届出が必要となる。

 両加算とも診療報酬上は22年に新設。初年度時点で、在宅訪問を行う薬局のうち在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算は20.2%、在宅中心静脈栄養法加算は24.3%が届出を行っている。また、実際に薬学的管理・指導を行った患者には介護保険利用者も一定程度いることから、今年度からは介護保険への算定移行も進むと考えられる。
(シルバー産業新聞2024年6月10日号)

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