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厚労省 地域ケア会議での手引き作成

厚労省 地域ケア会議での手引き作成

 10月より、生活援助中心型の回数が多いケアプランは、市町村へ届け出る制度が始まった。市町村が今後、地域ケア会議の開催などにより、届出のあったケアプランの検証を行っていく。これに合わせて、厚生労働省では「多職種による自立に向けたケアプランにかかる議論の手引き」を作成し、10月9日付で全国の保険者に通知。地域ケア会議での検証は、「サービスの利用制限を行うものではない」と明記し、「より良いサービス提供をすることが目的」と制度の趣旨を強調した。

 2018年度の介護報酬改定によって、統計的に見て通常より多い回数の生活援助サービスを位置付けた場合には、ケアマネジャーは市町村にケアプランを届け出る仕組みが制度化された。

1118topix.jpg 届出の基準となる回数は、「全国平均利用回数+2標準偏差」を上回るケース。具体的には、要介護1で月27回、要介護2で34回、要介護3で43回、要介護4で38回、要介護5で31回――などとなっており、統計上では5%程度のケアプランが該当する(表)。

 届出の対象は10月1日以降に作成または変更したケアプランで、ケアマネジャーは該当するケアプランを翌月の末日までに市町村に提出しなければならない。その際、別途理由書などの提出は必要ない(「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A」、3月23日発出)。

 市町村は届出のあったケアプランに対し、地域ケア会議の開催などにより、検証を行い、必要に応じて、利用者の自立支援や重度化防止、地域資源の有効活用などの観点から、サービス内容の是正を促すとされている。

 こうした制度の見直しに対し、利用者からは「必要なサービスが利用できなくなるのでは」と不安の声が上がっている。当事者団体である認知症の人と家族の会(鈴木森夫代表理事)は、声明文で「ケアプラン届け出の一部義務化は、〝自立支援〟どころか重度化を招きかねず、決して容認できない」と反発。「撤回を含め、認知症の人と家族が安心して暮らせる制度を実現するよう強く求める」と見直しを求めている。

 ケアマネジャーの職能団体である日本介護支援専門員協会(柴口里則会長)も、9月28日に「利用者の生活と権利を守るために、必要な支援であれば、堂々とサービスの必要性、サービスを位置づけた根拠を説明しましょう」と柴口会長のコメントを発表している。

 現場に不安が広がる中、厚生労働省では届出のあったケアプランに対し、市町村が適切に検証を行えるよう「多職種による自立に向けたケアプランに係る議論の手引き」を作成。10月9日付で全国の保険者に通知を行った。

より良いサービス提供が目的

 手引きでは冒頭部分で、今回の制度見直しの趣旨を説明。「生活援助中心型サービスが一定回数以上となったことをもってサービスの利用制限を行うものではない」と明記し、利用者の自立支援、重度化防止の観点から、「より良いサービスを提供することを目的とするもの」と強調した。そのために、「多職種協働による検討を行い、必要に応じて、ケアプランの内容の再検討を促すもの」と説明している。

 地域ケア会議の場で、多職種によるケアプラン検証の手順については、①対象とする事例の選定→②事例資料の収集→③多職種の視点による検討→④助言・フィードバック→⑤経過のモニタリングの順を標準的な流れとして示した。

 確認する資料の様式例としては、▽利用者基本情報▽課題整理総括表▽居宅サービス計画書▽個別サービス計画書▽主治医意見書――などを挙げ、特にどの部分を読み込めばよいかのポイントを記載している(図)。
 地域ケア会議の場における事例提供者の役割としては、①事例の説明②地域の課題の提起③事例提供者の姿勢――の3点を挙げた。①事例の説明では、事例概要や居宅サービス計画、支援内容の説明を求め、特に支援の必要性や妥当性、「なぜそのサービスを選択したのか」「回数はどういう理由で決めたのか」をしっかりと説明する必要性を記載している。

 ③事例提供者の姿勢としては、受け身ではなく、地域ケア会議を積極的に活用する意識を持ち、専門職から積極的に助言を求めましょうとしている。

 一方、専門職に対しては、「高齢者のQOLの向上」と共通の目標に向けた支援を実現するために、課題抽出や課題解決に向けた支援の在り方について、多面的な視点から「実践につながる具体的な助言」を行うことが重要だとし、「利用者の生活行為の課題とその要因を踏まえた目標設定がされているか」「目標を達成するために有効なサービスがケアプランに位置づけられているか」などを確認して助言するよう求めている。

 今回の手引きを参考に、全国の保険者で適切なケアプランの検証が行われることが求められている。


(シルバー産業新聞2018年11月10日号)

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