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福祉用具上限価格 2807商品対象に

福祉用具上限価格 2807商品対象に

 厚生労働省は7月13日、10月より適用される2,807商品の福祉用具貸与の全国平均価格と上限価格一覧を公表した。単純に全商品の平均価格と上限価格を比較すると、その差は18%になった。10月貸与分から上限価格を超えるものは、保険給付の対象外になる。本紙は、価格発表を受けレンタル事業者に緊急アンケートを実施。貸与事業所は急ピッチで価格の見直しに迫られている。

「上限/平均」1.2倍前後に集中

 厚労省は全国平均価格開示と上限価格制の適用になる2,807商品を公表した。商品ごとに①商品コード②法人(メーカー)名③商品名④型番⑤平均価格⑥上限価格――を一覧表(エクセルデータ)で示した。対象となった2,807商品は、月平均100件以上の貸与実績があるもの。全貸与商品約1万6,000商品の16.6%にあたる。

 福祉用具の種類別では特殊寝台345商品、手動車いす423商品、歩行器・歩行車304商品、マットレス301商品などとなった。

 上限価格と全国平均価格の差を見ると、10%未満331商品(11.8%)、10~20%未満1,077商品(38.3%)、20~30%未満718商品(25.6%)で、価格差30%未満の製品が75.7%を占めた(グラフ1)。

 その中には、上限と全国平均の価格差のない商品(標準偏差=0)も26商品あり、貸与事業所のPB商品などが多いと見られる。

 一方、上限と全国平均の価格差の大きい製品もあり、これらの多くはベッドや車いすの付属品だった。中には保険者のチェック機能が果たされないままに、付属品の名称・コードでベッドや車いす本体をセットで貸与しているなど、記載ルールの徹底が不十分な面もあるとみられる。

 貸与件数が不明なので単純平均ではあるが、全商品の平均・上限価格の平均をとった場合、全体の上限/平均の価格差は18%にとどまった。TAIS分類コードをもとに貸与品目ごとの平均で整理すると、全品目が13~30%台の中に収まっている()。

 事業への影響は、価格上位16%のレンタル価格が上限価格まで引き下げられた場合は、本紙試算で2%程度の売上減(給付費抑制)になる模様だ。

半数弱が「上限付近へ」~貸与事業者本紙アンケート

 本紙は平均・上限価格発表後に緊急アンケートを実施。24事業者より回答を得た。取扱商品のうち、上限価格を上回った商品数は多いところで415商品、少ないところで8商品と事業者の差が大きかった。

 上限価格超の対応については「上限価格付近へ引下げる」が46.1%、「個別に判断して引下げる」が42.3%とほぼ同じ割合。「平均価格付近に引下げる」という対応が8%あった(グラフ2)。

 上限価格内の商品に関しては「価格を据え置く」が65.3%と最も多く、「個別の製品で判断する」11.5%が続いた。「周辺事業所の動向をみて価格の引上げ・引下げを行う」、「全国平均価格付近に引下げ」「同引上げる」は、それぞれ3.8%あり、事業者が価格対応に苦慮する姿が浮き彫りになった(グラフ3)。

 10月からは上限価格の適用とあわせて、提案する商品の自社貸与価格と合わせて、今回公表された全国平均貸与価格を説明しなければならない。

 価格の見直しによる業績への影響を聞くと、「月平均70~80万円の売上減」(トミキライフケア)や「年粗利で50万円以上減少」(九州ホームケアサービス)といった具体的な試算も。他方、「上限を上回った商品はほとんどが古いもの。影響はあまりない」(サトウ)など、影響は少ないとする回答もあった。

 全体として多かった意見は、契約書の新たな取り交わしや価格見直しの説明にかかる労力・コストといった業務負担に対する訴えだった。

 今回の価格公表については、想定より上限価格が低かったとの声が多数を占めた。また「都市部は商品の整備保管等のコストが地方より割高。全国一律の上限価格設定でよいか」(シルバーホクソン)や、「基となるデータについて正確なTAIS記載がされているのか疑問」(日本基準寝具)との指摘もあがった。

 価格の差が10倍といった極端に高い「外れ値」を適正化するとして導入された上限価格制だったが、示された上限価格「平均+1標準偏差」は、正規分布の場合、貸与件数ベースで上位約16%が上限価格を超える設定となる。

 今回、上限価格は平均価格の2割増に止まった。価格の見直しを余儀なくされるのは「外れ値」だけではない。価格抑制が強まると、今後事業収益を圧迫して、選定やメンテナンスなど必要な福祉用具サービスの低下につながりかねないとの懸念が広がっている。

(シルバー産業新聞2018年8月10日号)

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