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消費税増税コスト 報酬引上げで対応

消費税増税コスト 報酬引上げで対応

 来年10月の消費税率引上げに伴い、介護事業者の税負担を補てんするための報酬改定も同時に行われる。 介護事業者は、事業運営に必要な設備・備品、食材料費等の仕入れの際に消費税を支払うが、サービス提供は非課税で、利用者から消費税を徴収することができない。仕入れに係る税負担がそのまま事業者負担となってしまうため、その損税分は介護報酬で手当てされる。

 14年4月の消費税率8%への引上げ時には、サービスごとに人件費・その他非課税品目を除く費用(課税費用)の割合を算出し、これに増税による費用増の割合(3/105)を乗じて引上げ幅を設定。全体で+0.63%(給付費約530億円)の報酬改定を実施した。

 その時の課税費用の割合は全サービス平均で22.1%。福祉用具貸与の49.4%が最も高く、次いで通所リハビリテーション28.7%、介護療養施設28.5%だった。一方、低かったのはグループホームの13.5%、居宅介護支援14.6%、地域密着型特定施設15.4%だった。

 これに伴い、区分支給限度基準額も引き上げ。一方、施設サービスの食費・居住費の基準費用額については、増税を加味しても見直しを必要とするほど費用に変動がないとして、据え置きとされた。

 今回の消費税率10%への対応は前回と同様、17年度介護事業経営実態調査の結果を用いて、まずは課税費用の割合や設備投資の状況、基準費用額の実態を把握する。

 また、前回調査(13年度)と今回調査(17年度)の間には15年報酬改定が行われている。関係団体ヒアリングでは「特養の新規入所者が要介護3以上になったことで、ベッドや車いす等の機能、おむつの必要量が変わってきているのでは」との意見が出た。また、近年国を挙げて促進する介護ロボット、ICT導入に対しても、課税費用の割合が高くなっている可能性が指摘されている。

福祉用具団体課税「0%」求める

 福祉用具貸与は課税サービスであるものの、車いすや特殊寝台、歩行器といった「身体障害者用物品」に該当する用具については非課税サービスとなる。そのため、非課税サービスに係る仕入れやメンテナンス等の課税費用は、消費税率引上げによる負担増(損税)が発生する。しかも、他の介護サービスと異なり自由価格であるため、事業者自ら価格の見直しを行わなくてはならない。

 10月31日の介護給付費分科会の関係団体ヒアリングで、日本福祉用具供給協会の小野木孝二理事長は「車いすや特殊寝台は貸与に占める割合が大きい。実態として、福祉用具サービスは非課税取引の割合が高い」と説明。現行の非課税取引ではなく、課税取引での「税率0%」を主張した。税率0%になると、損税分の還付を受けることができる。かつ、税率0%なので利用者は今まで通り税負担がかからない。

 メーカー団体の日本福祉用具・生活支援用具協会(木村憲司会長)も「課税0%」の要望を10月に提出。同協会の調査によると、非課税商品の販売に係る原材料仕入れ等の課税費用について、消費税率8%引上げで年間16.4億円以上の損税が既に発生(会員企業のうち32社の合計)。これが10%になると、20.5億円に上るとの試算が出した。

 なお、海外の完成品を輸入する場合は関税、仕入れ消費税はかからないため、増税の影響を受けない。

 これについて同協会は「現行のしくみで増税を続けると、どこも海外へ製造拠点を移し、国内産業の衰退を招くことになる」と主張している。

(シルバー産業新聞2018年11月10日号)

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