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【特集】スロープ 10年で給付倍増

【特集】スロープ 10年で給付倍増

 可搬型スロープは、車いすや歩行器・杖といった歩行支援用具を利用する際に、安全な段差の乗り越えや外出を助ける福祉用具。介護保険貸与品目の一つで、給付はこの10年で2倍以上に伸びている。歩行支援用具との親和性を保ちつつ、段差・幅・奥行など、さまざまな家屋環境へのニーズに対応すべく、各メーカーは独自の商品開発に取組んでいる。

外出支援へ形状の進化とどまらず

 厚生労働省の介護給付費実態調査によると、2018年4月審査分でスロープの給付単位数は9620万6千単位。08年の4676万9千単位と比べ約2倍に増えている(グラフ)。同期間で福祉用具全体の伸び率では1.9倍。わずかだが平均より高い伸びとなっている。要介護度別では要介護4が全体の30%で最も多い。要介護3~5で78%を占める。

 ただ、貸与件数ベースだと18年が31.7万件で08年の4.2倍。貸与1件あたりの平均単位数は303単位で、08年の626単位から50%以上もダウンしている。価格競争に加え、「ダイヤスロープ」(シンエイテクノ)といった廊下と居室との小段差を埋める、比較及してきたことも要因の一つと考えられる。

安定の1枚板から軽量のレールまで

 介護用品卸のウェルファン、ケアマックスコーポレーション、豊通オールライフの売れ筋では、ケアメディックス、ダンロップホームプロダクツ、イーストアイの3社が上位を固める(表)。ケアメディックスの「ケアスロープ」とダンロップホームプロダクツの「ダンスロープ」は、共に長尺285cmタイプを有し、高段差でも緩やかな傾斜で安全な走行を支援する。

 さらにケアスロープは、スロー「ケアスロープJ」が最大81cmの段差に対応、差別化をはかる。

 一方、ダンスロープは特殊カーボン織物を採用した「ダンスロープエアー」が従来品より10%の軽量化を実現。持ち運び、設置を行う介助者の負担にも配慮している。

 両商品ともスロープ幅は70cm。間口の狭い日本の建物に合った設計となっている。なお、この部分をさらに追求したのがランダルコーポレーションの「スマートスロープ」。5mm短い69.5cmとした。走行面に施した黄色い矢印は、幅狭のスロープ上で車いす操作が不安定にならないよう、タイヤ走行位置の目安に。デザイン、安全性などで高い評価を受け、14年にグッドデザイン賞を受賞している。

 これらは、いずれも折り畳み式の1枚板タイプ。イーストアイは加えて、タイヤ走行面にのみスロープを渡す2本1組の「レールタイプ」も充実する。1枚板に比べより軽量、持ち運びしやすく、同社「ESKスライドスロープ」は段差に応じて任意の長さに無段階調整できるのが特長。パンチング加工で目詰まりしにくく、滑り止め効果も半永久的に持続する。同じレールタイプでは、リッチェルの「ワンタッチスロープ」も長さ調整が可能。ワンタッチレバーの簡単操作で128~209cmの間を5段階で設定できる。

曲がり、小段差対応商品の充実

 また、曲がりタイプ、ロールタイプなど形状のバラエティーに最も富むのがシコクの「段ない・ス」シリーズ。玄関と上がり框が直角に設計されている場合、通常のスロープだと乗入れスペースが確保しにくいが、「LスロープFK」はパーツを組み合わせて30度、60度、90度のカーブを作ることで解消できる。

 ウェルファンの上位にランクインしているシクロケアは、屋内外の小段差解消をターゲットに商品ラインナップを拡充。屋外で使用する「安心スロープ」は対応段差が3~10cm程度だが、その半面コンパクトさに優れ、車いすに搭載すれば外出先でも使用できる。

(シルバー産業新聞2018年9月10日号)

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