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福祉用具貸与、上限対応で売上2.6%減

福祉用具貸与、上限対応で売上2.6%減

 2018年10月から月平均100件以上の介護保険福祉用具貸与実績のある2807商品に貸与価格の上限設定が行われた。これにより、「売上高の減少は加重平均2.6%」「経常利益0~5%減が半数」など、福祉用具貸与事業者の経営に影響が予想されることが、日本福祉用具供給協会(小野木孝二理事長)実施の「福祉用具貸与価格に関する緊急調査」で明らかになった。「制度対応へのコスト上昇を企業努力では免れず、重くのしかかる状況」としており、結果をもとに要望書にまとめ、年度内に国へ提出を予定する。

平均貸与価格 +30%以内に上限設定の大半分布

 福祉用具貸与価格の上限設定では、全国平均貸与価格を割り出し「全国平均貸与価格+1標準偏差」を上限価格とする。価格の分布が正規分布の場合、分布件数の上位約16%が上限超過となる。上限を超えた価格での貸与は保険給付外となる。今後についても、概ね1年毎の上限設定の更新が予定されることから、事業経営への影響を懸念する声が高まっている。

 公表された上限設定のある商品は2807商品。貸与実績のある約1万6000商品の17%程度だが、費用額に占める割合は9割超で、主力商品の大半を捕捉する。

 全国平均貸与価格と上限設定の比較(上限設定/全国平均貸与価格)は、「110%未満」11.8%、「110~120%」38.3%、「120~130%」25.6%など、全国平均貸与価格の1.3倍以内に約76%の商品が分布する。

上限設定「想定以上に低い」が半数

 日福協が実施した緊急調査は、全国509社(うち同協会会員企業309社)に調査票を郵送。今年10月2日~19日にかけて実施。有効回答数は297社(58.3%)。各社の福祉用具専門相談員規模は「10人以下」50.5%、「11~20人」20.5%、「21~50人」17.8%、「51人以上」11.1%。 上限に抵触して値下げすることになった商品は「1~50商品」47%が最多で、平均110・2商品。抵触商品なしは1%だった。

 公表された上限設定について54%が「想定していた以上に低いと感じた」と回答するなど、厳しい内容と捉える貸与事業者が多かった。「想定していた水準」は26%。「想定以上に高かった」は4%だった。

値下げ方針は「できるだけ高め」に

 値下げの方針は「上限付近」52%、「上限と平均の間」14%、「平均付近」9%など、今後の値下げに備えて、許される範囲内での高い価格設定を基本とする傾向が見られた。

 ほかにも「地元の価格相場」10%、「自社既存価格との均衡」11%など、競原理や自社の価格整合性などを値げ判断の基準とする回答も見られた。

 注目は約3割の貸与事業者が、上限に抵触しない商品までも値下げしていたこと。1社平均26.3商品。理由について「関連商品との整合性(サイズ違い、色違いなど)」と8割が回答した。幅広く値下げの動きが波及していることは、経営への影響を想定以上に大きくする恐れがある。

黒字幅縮小の流れ、赤字転落も

 「介護事業経営実態調査」(17年度)での福祉具貸与事業は収支差率4.5%(全サービス平均3.3%)と収益の高いサービスとされたが、上限設定は毎年更新が予定されるため厳しさを増すことが想定される。 
 売上高への影響について「影響なし」は3%とごく少数で、加重平均では2.6%減(単純平均4.2%)だった。

 経常利益(収支差率)への影響については「黒字幅が0~5%減」50%が最多で、「黒字がなくなる」「赤字に転落」「赤字拡大」など赤字とした回答も合わせて7%あった。事業規模が小さい事業所ほど影響が大きい傾向が見られた。

 自由記入には「継続的な見直しはやめてほしい」「外れ値排除の趣旨を超えている」「地域差も考慮してほしい」「計算過程を公表すべき」「質の確保が困難になる」など切実な声も多く聞かれた。

 難局に挑む福祉用具貸与事業者の経営方針の変化はどうか。「経営方針に変化はない」44%が最多で、「合理化などで乗り越えたい」36%、「これを機に事業の拡大を図りたい」14%など事業継続を前提とした回答が多かった一方で、「事業撤退を検討したい」2%、「事業縮小を検討したい」2%など消極的方針に転換する回答も見られた。

値上げ断行も控えめ

 事業の欠損を埋めるため、値上げに転じる選択も約2割の事業者に見られた。値上げ点数は平均68.4商品。

 理由について複数回答で質問したところ「上限対応の影響が大きかったため」69%、「モニタリング等サービスレベル向上に伴うコスト上昇」40%、「人件費の上昇」16%、「カタログ改訂などのコスト上昇」11%など、少しでも値上げできる余地を探らざるをえない厳しい状況が垣間見えた。

 ただ、その場合でも値上げ幅は「全国平均貸与価格付近」33%、「自社既存商品との均衡」19%が多く、強気の価格引き上げができにくい状況にあった。

価格改定手続き「値下げ」は簡素、「値上げ」は厳格に

 価格改定時の利用者やケアマネジャー等への説明方法については「値下げ時」には、「文書で通知」48%、「契約書締結」27%となり、できる限り事務・業務負担の少ない方法での対応が多かった。最も簡素な「口頭での説明」も25%あった。

 「値上げ」については「契約書締結」55%、「文書で通知」41%となり、厳格に対応する傾向が見られた。「口頭での説明」も4%と極めて少数だがいた。
 消費税率10%改定についての設問もあり、9年10月の改定時には約半数が価格転嫁を予定するなど、14年4月時と対応が逆転した。

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