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日福協/ふくせん理事長 岩元文雄氏「業界発展に向け、舵取りの責任重い」

岩元文雄氏(カクイックスウィング社長)は、日本福祉用具供給協会(以下、日福協)と全国福祉用具専門相談員協会(以下、ふくせん)の両団体の理事長を務める。事業者団体と職能団体――2つの団体の舵取りを担う同氏に、今後の抱負などを聞いた。
――6月末に日福協の新理事長に選出された。
これまで10年間、副理事長として、小野木前理事長を支えてきた経験があるため、ある程度のことは理解しているつもりだが、改めて事業者団体のトップを務めることに対して重責を感じている。
事業者団体として、適正な利益確保や事業継続のための提案・要望などを、国に対して行っていく一方で、企業の社会的責任やサービスの質の向上など、この業界が健全に発展していくための道を、一丸となって追求していかなくてはいけない。その舵取りの責任は、非常に重いものだと自覚している。
――どういうことを実現させたいか。
これから2040年にかけて、高齢者人口が増加していく一方で、生産年齢人口は減少していく。介護人材不足の問題が深刻化していく中で、福祉用具や住宅改修が果たすべき役割が、これまで以上に大きくなるのは間違いない。
ご利用者の身体状況の変化に応じて、環境調整を行うのが我々の仕事であり、地域包括ケアを推し進めていく上で、必要不可欠なサービスであることを、正面を切って各方面に訴えていきたい。
もう一つが、介護サービスの「インフラ」としての役割を担っていくことだ。国でも議論されているが、40年にかけて、特に中山間地域などでサービス提供体制をどのように維持していくかが、大きな課題になっている。マンパワーに依拠せず、利用者の自立を支える福祉用具は、人口減少地域における〝最後の砦〞のような存在であり、介護保険の一翼を担う事業者の責任として、全国各地で福祉用具を供給できる体制を整備・維持していきたい。
――介護ロボットや見守りセンサーなど、テクノロジーに期待する声も大きい。
介護施設では、見守りセンサーなどを用いて、業務の効率化やサービスの質の向上に取組む動きが活発になってきているが、在宅でのテクノロジー活用は、普及に向けた課題が大きく、まだこれからの段階にある。ボトルネックになっているのは、個別に使い方などを説明する支援体制がないことや、Wi―Fiなどの通信環境が整っていないことだが、こうした部分で、われわれ福祉用具事業者や専門相談員が果たせる役割は大きいはずだ。ぜひ、活用を検討してもらいたい。
また、6月11日に開かれた「介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会」では、通信機能付きの福祉用具を保険給付の対象として認める考えが大筋で了承された。テクノロジーが普及する現状を踏まえた大きな見直しであり、今後の商品開発などにも期待したい。
――貸与・販売の選択制や上限価格の制度見直しについて。
選択制については、厚労省が今年度、「介護報酬改定検証・調査研究事業」を行う予定になっている。日福協では、国の調査結果を待つだけではなく、昨年度より、自主事業として、選択制の実施状況を把握し、課題などについて調査研究に取り組んでいる。これまでの調査では、福祉用具の長期利用を見込むことの困難さなどが確認されている。今年度も調査研究を継続し、適切な制度運用がなされるように、現場の実態を伝えていきたい。
また、日福協では、昨今の物価高騰の影響が福祉用具貸与事業にどのような影響を与えているのかについても独自調査を行っている。その結果、多くの事業者が、福祉用具の仕入れ価格や燃料価格の上昇分を貸与価格に転嫁できておらず、その理由について、9割を超える事業者が「上限価格があるため」と答えている。次期改定に向けて、こうした実態についても訴えていくつもりだ。
――ふくせんでは、ブロック資金の着服などの不祥事があった。どのようにして信頼回復に取り組むのか。
今年3月末に、ふくせんのブロック会計担当社員が、38万円の資金を着服する事案が発覚した。また、昨年5月に不同意わいせつ容疑で、元ブロック役員が逮捕される事案もあった。いずれも、福祉用具専門相談員としての活動の中で、ご利用者に被害を与えた事案ではないが、会員が起こした不祥事であり、心よりお詫びを申し上げる。
ブロック資金の着服については、組織として不正を見抜けなかったことについて、私自身、責任を感じている。過去にさかのぼって同様の不正がないか調査するとともに、倫理問題処分規程の制定を行い、再発防止の徹底に努めることが当面の責任の取り方だと思っている。
(シルバー産業新聞2025年8月10日号)
これまで10年間、副理事長として、小野木前理事長を支えてきた経験があるため、ある程度のことは理解しているつもりだが、改めて事業者団体のトップを務めることに対して重責を感じている。
事業者団体として、適正な利益確保や事業継続のための提案・要望などを、国に対して行っていく一方で、企業の社会的責任やサービスの質の向上など、この業界が健全に発展していくための道を、一丸となって追求していかなくてはいけない。その舵取りの責任は、非常に重いものだと自覚している。
――どういうことを実現させたいか。
これから2040年にかけて、高齢者人口が増加していく一方で、生産年齢人口は減少していく。介護人材不足の問題が深刻化していく中で、福祉用具や住宅改修が果たすべき役割が、これまで以上に大きくなるのは間違いない。
ご利用者の身体状況の変化に応じて、環境調整を行うのが我々の仕事であり、地域包括ケアを推し進めていく上で、必要不可欠なサービスであることを、正面を切って各方面に訴えていきたい。
もう一つが、介護サービスの「インフラ」としての役割を担っていくことだ。国でも議論されているが、40年にかけて、特に中山間地域などでサービス提供体制をどのように維持していくかが、大きな課題になっている。マンパワーに依拠せず、利用者の自立を支える福祉用具は、人口減少地域における〝最後の砦〞のような存在であり、介護保険の一翼を担う事業者の責任として、全国各地で福祉用具を供給できる体制を整備・維持していきたい。
――介護ロボットや見守りセンサーなど、テクノロジーに期待する声も大きい。
介護施設では、見守りセンサーなどを用いて、業務の効率化やサービスの質の向上に取組む動きが活発になってきているが、在宅でのテクノロジー活用は、普及に向けた課題が大きく、まだこれからの段階にある。ボトルネックになっているのは、個別に使い方などを説明する支援体制がないことや、Wi―Fiなどの通信環境が整っていないことだが、こうした部分で、われわれ福祉用具事業者や専門相談員が果たせる役割は大きいはずだ。ぜひ、活用を検討してもらいたい。
また、6月11日に開かれた「介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会」では、通信機能付きの福祉用具を保険給付の対象として認める考えが大筋で了承された。テクノロジーが普及する現状を踏まえた大きな見直しであり、今後の商品開発などにも期待したい。
――貸与・販売の選択制や上限価格の制度見直しについて。
選択制については、厚労省が今年度、「介護報酬改定検証・調査研究事業」を行う予定になっている。日福協では、国の調査結果を待つだけではなく、昨年度より、自主事業として、選択制の実施状況を把握し、課題などについて調査研究に取り組んでいる。これまでの調査では、福祉用具の長期利用を見込むことの困難さなどが確認されている。今年度も調査研究を継続し、適切な制度運用がなされるように、現場の実態を伝えていきたい。
また、日福協では、昨今の物価高騰の影響が福祉用具貸与事業にどのような影響を与えているのかについても独自調査を行っている。その結果、多くの事業者が、福祉用具の仕入れ価格や燃料価格の上昇分を貸与価格に転嫁できておらず、その理由について、9割を超える事業者が「上限価格があるため」と答えている。次期改定に向けて、こうした実態についても訴えていくつもりだ。
――ふくせんでは、ブロック資金の着服などの不祥事があった。どのようにして信頼回復に取り組むのか。
今年3月末に、ふくせんのブロック会計担当社員が、38万円の資金を着服する事案が発覚した。また、昨年5月に不同意わいせつ容疑で、元ブロック役員が逮捕される事案もあった。いずれも、福祉用具専門相談員としての活動の中で、ご利用者に被害を与えた事案ではないが、会員が起こした不祥事であり、心よりお詫びを申し上げる。
ブロック資金の着服については、組織として不正を見抜けなかったことについて、私自身、責任を感じている。過去にさかのぼって同様の不正がないか調査するとともに、倫理問題処分規程の制定を行い、再発防止の徹底に努めることが当面の責任の取り方だと思っている。
(シルバー産業新聞2025年8月10日号)