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ケアマネアンケート 福祉用具貸与・販売の選択制 「対象種目拡大すべきでない」53%

ケアマネアンケート 福祉用具貸与・販売の選択制 「対象種目拡大すべきでない」53%

 厚生労働省は、今年度に実施している介護報酬改定検証調査で、福祉用具貸与・販売の選択制について、事業者や保険者に、現在対象外の貸与種目を、選択制の対象に加えることへのニーズや意向を調査している。これを受け、本紙では9月〜10月にかけて全国のケアマネジャーを対象に「福祉用具貸与・販売の選択制」についてアンケートを実施。262件の回答が得られた。アンケートでは選択制そのものについて、63%のケアマネジャーが「評価できる」と回答。一方、対象種目を拡大することについては、「拡大すべき」が40%、「拡大すべきでない」が53%と、「拡大すべきでない」が上回る結果となった。「拡大すべき」と答えたケアマネジャーでも、対象や範囲を限定した上で拡大するべきという意見が目立った。

Q1 「選択制」への評価について

 2024年介護報酬改定では、①固定用スロープ②歩行器③単点杖④多点杖――の4種類について、利用者が貸与か販売を選べる「選択制」が導入された。

 アンケートでは、まず、導入から1年半が経った選択制への評価を尋ねた。その結果、「評価できる」と答えたケアマネジャーは63%、「評価できない」は33%と、6割以上のケアマネジャーが選択制の制度を評価していることが分かった。

 その理由を自由記述で尋ねたところ「利用者が選択して決定できる機会は大切だと思う」(北海道、女性)、「利用者の経済状態に応じた選択の幅が広がる」(大分県、男性)、「貸与と販売のメリット・デメリットを説明したうえで、利用者自身が納得して選べることを満足されている」(宮崎県、女性)など、利用者の選択の幅が広がったことを理由にあげる意見が最も多かった。

 また「長期に使用できる商品であれば、購入の方が負担が少ない」(和歌山県、女性)、「まだ判断しかねる部分があるが、金銭的な負担は少なからず軽減できると思う」(京都府、男性)といった利用者の費用負担が減らせるという声や、「介護保険の財源の抑制になると思う」(宮崎県、女性)、「国の財政を踏まえ、仕方ないのでは」(大分県、女性)など、公費抑制につながる点を評価する意見もあった。

 一方「評価できない」と答えた意見では、「対象となる人のADL等の変化に応じた対応が必要なので、基本は貸与であるべき」(和歌山県、男性)、「今後のメンテナンス等を考えると安易に提案しにくい」(愛媛県、女性)など、「選択制」で購入を選んだ場合、利用者の状態変化への対応やメンテナンスといったアフターフォローに不安を覚えるという声が目立った。

 「利用者、家族が混乱している」(茨城県、女性)、「制度が複雑で説明を理解できにくい人が多い」(愛媛県、女性)など、かえって利用者の混乱を招いているという実体験も寄せられた。

 選択制の導入方針が決定した23年に、本紙で同様の質問をした際には、「評価できる」と答えたケアマネジャーは71%、「評価できない」は25%という結果だった。

Q2 選択制の対象種目拡大について

 「介護報酬改定検証・研究委員会」では、今年度の改定検証調査で、福祉用具貸与事業所・居宅介護支援事業所に対し、購入を希望する利用者の声がある貸与種目を尋ねている。調査結果や今後の審議次第で、選択制の対象種目が拡大される可能性がある。

 本紙アンケートの「『選択制』の対象種目を拡大するべきか」という問いに対しては、53%のケアマネが「拡大すべきでない」と答えた。

 自由記述では、「現在の4つの種目だけでも利用者への説明等が難しいので、拡大すべきでない」(愛媛県、女性)、「これ以上支援者の負担を増やさないでほしい」(京都府、女性)など、ケアマネジャーをはじめとした事業者の負担増を懸念する意見が多くみられた。

 「これまでに購入を選んだ利用者は2人しかいなかったため」(和歌山県、女性)、「説明をしても理解するのが難しく購入は少ないのが現状」(大分県、女性)のように、購入の実績が少ないため現状維持を望む声も複数あった。
また、Q1と同様に状態変化への対応や、利用者の理解が得られづらいことも理由にあげられた。

 「拡大すべき」と答えた意見でも、「例えば洋式トイレ用手すりなど、衛生面を考慮して拡大してもよいのでは」(愛媛県、女性)、「低価格帯の物であれば、拡大には理解ができる」(北海道、男性)といった、範囲を限定した上での拡大を容認する意見が多かった。

 今回のアンケートから、ケアマネジャーの多くは「選択制」は評価しつつも、対象種目の拡大については、慎重な意見が多いことが分かった。今後の対象拡大の議論にあたっては、現場の声を丁寧に拾い上げていくことが重要だ。

 アンケートは9月から10月にかけて行い、全国のケアマネジャー262人から回答を得た。
 ※アンケートへのご協力、ありがとうございました。
(シルバー産業新聞2025年11月10日号)

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