インタビュー・座談会

DK City 黄家彦事業部長に聞く 日本市場へ本格参入

DK City 黄家彦事業部長に聞く 日本市場へ本格参入

 フィットネス機器の製造受託で世界60カ国に輸出実績を持つ台湾の大手ヘルスケアメーカー「DK City(東庚企業股份有限公司)」。今年2月に介護ベッドの新ブランド「home Familia」を立ち上げ、日本の介護市場に本格参入した。1987年の創業期を日本企業に支えられたという同社が、成熟した日本市場でどのような事業展開を目指すのか。製品に込めた思いと今後の展望について、黄家彦事業部長に話を聞いた。

高度成長期に創業、フィットネス機器で世界へ

 ――DK Cityのこれまでの歩みについて。

 当社は、台湾が「アジア四小龍」の一つとして高度経済成長の只中にあった1987年に、台中で創業しました。当時は日本のバブル経済の入口と重なり、日本向けに高級家具を製造・販売することから事業をスタートさせました。創業間もない当社に対し、日本の取引先は製品品質の考え方から商売の仕方に至るまで、本当に丁寧に指導してくださいました。当社の礎は、日本の協力なしには築けませんでした。

 その後、経済成長の次は健康志向の時代が来ると確信し、ヘルスケア製品の分野に進出しました。95年からは電子制御を取り入れたフィットネス機器の開発・製造を手がけ、現在では世界60カ国に輸出するまでに成長しました。従業員は約650人、台湾4カ所、中国1カ所の製造拠点を持ち、直近の売上高は26億台湾ドル(約125.6億円)です。

「人の夢をつなぐ」ヘルスケア事業から介護分野へ

 ――どのようにして介護用ベッドを手がけるようになったのか。

 当社のブランド名「DKCITY」には、「健康的なライフスタイルで、人の夢をつないでいきたい」というメッセージが込められています。その思いは、フィットネス機器から始まり、2016年に開発したアジャスタブルベッド(健常者向け電動ベッド)へと繋がりました。フィットネス機器で培ったアクチュエーターや電子制御、耐久性の高い製品設計技術は、ベッド開発に大きく貢献しました。このアジャスタブルベッドは、今や年間約45万台を製造する第2の柱に成長しています。

 介護分野への本格的な参入のきっかけは、17年に開発した折りたたみ式のアルミ製軽量電動車いすです。移動に不自由がある人に「動く楽しさ」を取り戻してほしいという思いで開発したこの製品を機に、より高い安全性と安定した品質が求められる介護機器の分野へ本格的に参入し、欧米を中心に輸出を開始しました。

 自社ブランドの介護ベッドは、日本での販売に先駆け、24年7月から台湾で販売を開始しています。

環境と人に優しいアルミ製ベッドが主力

 ――今年2月に日本法人DK Groupを立ち上げ、満を持して日本市場へ参入した。

 冒頭で申し上げた通り、創業時に日本の皆さんにはとてもお世話になり、事業でいつか恩返しをしたいと常々考えていました。

 超高齢社会を迎えた日本のニーズに対し、私たちが培ってきたスチールやアルミの構造設計技術、電子制御技術、そして品質保証体制を総合的に活かせるのは、介護ベッドを中心とした製品だと考えたのです。

 日本の市場は成熟しており、新規参入が容易でないことは承知しています。しかし、私たちが培ってきた技術と経験があれば、安心できる製品をコストメリットとともに提供できると確信しています。

 ――新ブランド「home Familia」に込めた意味は。

 家族とは、愛情にあふれ、安心感とくつろぎを与えてくれる存在です。私たちが届ける製品も、まるで家族のように、利用される方が安心して自分らしくいられる「home」のような存在であるべきだと考えています。その思いを、私たちの技術と経験に込めた製品をお届けしたい。それが「home Familia」です。

 主力製品のアルミ製ベッドには環境と働く方々への二つの思いやりが込められています。アルミは性質の劣化がほとんどなく、繰り返しリサイクルが可能です。その際、エネルギー消費やCO2排出量も新規製造に比べて約5%以下に抑えられる、非常にサステナブルな素材です。未来の資源を守るため、私たちはあえてアルミという素材を選びました。

 第二に「働く方々への思いやり」です。従来の介護ベッドは1ユニット20㎏以上あるのが一般的でしたが、アルミ製にすることで、1ユニット12㎏という軽量化を実現しました。納品やメンテナンスを行う方々の負担を大幅に軽減できる、人に優しい製品です。アルミは軽量な一方でたわみやすい特性もありますが、電動車いすなどで培った設計・製造技術を駆使し、軽さと高い堅牢性の両立に成功しました。
主力のアルミ製ベッド。1 ユニットあたり12kg未満で、持ち運びやメンテナンスが容易

主力のアルミ製ベッド。1 ユニットあたり12kg未満で、持ち運びやメンテナンスが容易

顧客の声に迅速対応、HCRで新製品も披露

 ――日本市場での手ごたえは。

 今年2月に製品発表会を行って以降、経験豊富な日本の福祉用具事業者の皆様から、製品に対する厳しい意見や改善要望を数多くいただきました。私たちは、その一つ一つの声を真摯に受け止め、改善を重ねています。私たちの強みである開発スピードの速さは、多くの顧客から評価をいただいている点です。

 台湾は政府が「スマート医療」を推進するデジタルヘルスの国です。ITやデジタル産業の強みを医療に応用する土壌があり、この成果を介護マーケットにも活かせると考えています。まだ先の話になりますが、台湾のデジタルヘルスを活用した新たな製品・サービス開発にも着手していますので、期待していただきたいと思います。

 HCR2025では、発表済みのアルミ製ベッドに加え、日本の普及版となるベーシックモデルも新たに展示します。また、電動車いすも、軽量折りたたみタイプからスタンディング機能付きのものまで、多彩なラインナップを展示する予定です。当社が培ってきた製品づくりを、ぜひ会場で体験してください。

(シルバー産業新聞2025年10月10日号)

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