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処遇改善加算一本化 要件や経過措置期間中に必要な対応を総ざらい 

処遇改善加算一本化 要件や経過措置期間中に必要な対応を総ざらい 

 今年6月より、介護報酬の処遇改善3加算が「介護職員等処遇改善加算」(以下、新加算)へ一本化される。2024年度中は経過措置区分の(Ⅴ)が設けられ、また新たな要件となる月額賃金改善要件や職場環境要件の厳格化も25年度から適用される。一本化の完全実施に向けて、24年度中に移行体制を整える必要がある。今後の対応や新加算の要件をおさらいする。

2つの新加算の移行パターン

 新加算は(Ⅰ)〜(Ⅳ)の4区分。ただし、2024年度中(2025年3月まで)は経過措置区分として(Ⅴ)①〜⑭が設けられる。これにより、事業所の対応は大きく2パターンに分けられる。一つは、要件を満たして6月から(Ⅰ)〜(Ⅳ)のいずれかを算定する。もう一つが、24年度中は(Ⅴ)①〜⑭のいずれかを算定し、体制を整えて25年4月からは(Ⅰ)〜(Ⅳ)へ移行するパターンだ。
 厚生労働省は先月、「移行先検討・補助シート」を公開した。サービス種別と現行3加算の取得状況を選択すれば、移行パターンを示してくれる。例えば、「処遇改善加算Ⅰ、特定加算未算定、ベア加算算定」の特養の場合、新たに要件を満たして新加算(Ⅱ)に移行するパターンAと、現行体制のまま(Ⅲ)に移行するパターンBが示される。(Ⅱ)を算定する場合は3.7ポイント、(Ⅲ)では1.4ポイント、現行よりも加算率が上がることがわかり、比較検討しやすくなる。
「移行先検討・補助シート」。サービス種別と3加算の取得状況から推奨の移行パターンを示してくれる

「移行先検討・補助シート」。サービス種別と3加算の取得状況から推奨の移行パターンを示してくれる

 指定権者への処遇改善計画書の届出期限は4月15日。今回は、一括で申請する事業所数が10以下の場合や、処遇改善加算をこれまで未算定で24年度から新規算定する事業者向けに、それぞれ簡素化した様式が用意されている。また計画書の記入方法の解説動画も厚労省のウェブサイトで公開中だ。

キャリアパス要件には「誓約」特例も

 新加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)の主な要件はキャリアパス要件、月額賃金改善要件、職場環境等要件の3つ。ただ、新しい要件のほとんどは25年度から適用され、24年度中は経過措置が設けられている。

 キャリアパス要件は①任用要件・賃金体系の整備②研修の実施等③昇給の仕組みの整備④賃金改善後の年収が440万円以上である経験・技能のある介護職員を1人以上⑤一定割合以上の介護福祉士などの配置――の5つがある(図)。①〜③は処遇改善加算、④と⑤は特定加算からスライドした要件だ。現行の処遇改善加算Ⅲでは、キャリアパス要件①か②のどちらかを満たせばよかったが、新加算では最も加算率が低い(Ⅳ)でも①②の両方が必須となる。
 ただし①〜③については、24年度中に限り、実際には満たしていなくても、「25年3月末までに満たす」と誓約することで要件をクリアできる特例が設けられた。これは4月・5月分の処遇改善加算にも使える特例だ。厚労省の担当者は、「ぜひ誓約を活用して、年度当初から、より高い区分を算定してもらいたい」と呼びかける。また厚労省は、就業規則の作成義務がない10人未満の小規模法人などの参考となるよう、キャリアパスや賃金規定のモデルも示している。
処遇改善計画書に「誓約」のチェック欄が設けられている

処遇改善計画書に「誓約」のチェック欄が設けられている

25年度から(Ⅳ)の半額以上を月給引き上げに

 月額賃金改善要件は、①新加算(Ⅳ)相当の加算額の2分の1以上を月給(基本給、または毎月決まって支払われる手当)の改善に充てる(25年度から適用)②旧ベア加算の未算定事業所に限り、ベア加算相当額の3分の2以上を月給改善に充てる(24年度から適用)――の2つ。

 新加算を算定する全ての事業所に求められるのは①の要件だ。(Ⅰ)〜(Ⅳ)いずれの区分を算定していても、(Ⅳ)の半額以上を月給での賃金改善に充当する。

 例えば、(Ⅳ)を算定したとして見込める加算額が1000万円ならば500万円以上となる。月給の改善額が要件に満たない場合、一時金で支払っている分を減額し、月給へ付け替えるといった対応が求められる。同じ金額の賃金改善でも、一時金ではなく、月給に反映させることで、介護分野の職種の魅力を高めたい考えだ。

 月額賃金改善は、基本給か、毎月決まって支払われる手当の引上げで行う。ある事業者は、「基本給の引き上げで改善したいのはやまやまだが、基本給をベースにしている賞与などに反映され、管理が一気に複雑になってしまう」と話す。介護・福祉事業者を専門にサポートする、タスクマン合同法務事務所(大阪市)の井ノ上剛代表も、「基本給での引き上げは実務面の負担増大に加え、労使ともに加算でいくら賃金が改善しているかがわかりにくくなる」と指摘。「基本給での引き上げが難しい場合、当社は処遇改善手当のような名称で固定手当をつくることをおすすめしている。改善額が労使ともにわかりやすく管理もしやすい。その手当が年次や職位、評価などにより定期的に上がる仕組みにしておくとベターだ」と説明する。

新加算全体で配分ルールを柔軟化

 また新加算では職種間配分ルールが緩和される。現行の処遇改善加算は介護職員のみ、特定加算は介護職員への重点配分など一定の要件が定められていたが、新加算では加算全体で柔軟な配分を認められるようになる。この緩和は、一本化前の現行加算4月・5月分にも適用される。

「生産性向上の取組み」を重視

 職場環境等要件は、職員のキャリアアップ支援、働きやすい職場づくり、生産性向上など、賃金改善以外の取組みを求めるもの。現行では、6区分24項目が定められていて、処遇改善加算は全項目から1つ以上、特定加算は区分ごとに1つ以上の実施が必要になっている。新加算では、24年度中は(Ⅲ)(Ⅳ)が全項目から1つ以上、(Ⅰ)(Ⅱ)が全区分ごとに1つ以上と現行通りだが、25年度からは(Ⅲ)(Ⅳ)は区分ごとに1つ以上(生産性向上区分は2つ以上)、(Ⅰ)(Ⅱ)は区分ごとに2つ以上(生産性向上区分は3つ以上)と厳格化がされる。実施を継続していれば、毎年新たな取組みまでは求められない。
 25年度以降は、項目自体も6区分28項目に見直される。他の区分より多く実施が求められるようになる生産性向上区分での見直しが目立つ。「生産性向上ガイドラインに基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、または外部の研修会の活用等)を行っている」「現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)の実施」などが新設され、(Ⅰ)(Ⅱ)ではどちらかは必須で取り組む項目とされている。

 ただ、今改定で短期入所系、居住系、多機能系、施設系サービスに新設された「生産性向上推進体制加算」を算定する場合は、この生産性向上区分を満たすものとされる。
2025年から見直される職場環境等要件

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