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25年度介護事業概況調査結果 収支差率4.4%に微減

25年度介護事業概況調査結果 収支差率4.4%に微減

 2025年度介護事業経営概況調査の結果が公表された。全サービスの平均収支差率は24年度決算で4.4%となり、前年度(4.7%)を0.3ポイント下回った(左表)。サービス別平均では赤字のサービスはなかったものの、22サービス中12サービスで収支差率が前年を下回った。減少幅が大きかったのは、夜間対応型訪問介護の▲2.8ポイント、短期入所生活介護の▲1.6ポイント、訪問看護の▲1.6ポイント、訪問介護の▲1.5ポイントなど。一方で、看多機は+1.4ポイント、老健は+1.1ポイント、小多機は+0.7ポイントと収益率が改善した。

 サービスごとの収支差率水準でみると、最も高かったのは定期巡回サービスの12.9%(前年度13.7%)、最も低かったのは地域密着型特定施設の0.1%(同0.5%)だった。9%以上の収支差率となったサービスは、夜間対応型訪問介護12.2%(同15.0%)、訪問リハビリ10.5%(同11.5%)、訪問看護9.7%(同11.3%)、訪問介護9.1%(同10.6%)などいずれも訪問系だった。

 収入に占める給与費割合は、居宅介護支援が76.2%と最も高く、福祉用具貸与は31.5%で最低だった。70%台となったのは、夜間対応型訪問介護74.5%、定期巡回サービス73.5%、訪問看護70.1%。特定施設入居者生活介護は43.5%で、その他は60%台となった。

 回答した全事業の37.5%が赤字を計上する。

 しかし、介護事業所の廃止・休止が相次ぐ中で、多くのサービスが比較的高い収支差率を示した点について、介護事業経営調査委員会では戸惑いの声も上がった。

 野口晴子氏(早稲田大学政治経済学術院)は「今回の概況調査では、訪問介護を含む全体的な経営状況に急激な悪化も改善も見られず、穏やかな変動にとどまった」と述べ、訪問介護での基本報酬引き下げの悪影響が顕著に表れなかった点を評価した。一方で「物価高騰や人件費上昇の影響は、データ上では十分に把握できない」と指摘した。

 泉千夏氏(EY新日本監査法人)も「収支差率を一覧で比較するだけではリスクがある。施設サービスは労働集約と資本集約の折衷型、在宅サービスは労働集約型で、事業行動が大きく異なる。居宅サービスは収支差率が高く見えても差額は小さく、経営が安定とは言いがたい。外部環境のわずかな変化で赤字に転じる」と述べた。

 これらを踏まえ、座長の田辺国昭氏(東京大学大学院法学政治学研究科)は「現場では何らかの変化が起きているはずだが、データからは十分に把握できない。施設系の赤字が訪問系より増えており、稼働率低下や人件費高騰など要因を丁寧に確認する必要がある。訪問介護についても同一建物減算や移動時間別の分析を行ったが、大きな差は出なかった」と述べ、報酬改定を検討するうえでさらなる精緻な分析が必要だと強調した。

(シルバー産業新聞2025年12月10日号)

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