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訪問看護1.8万カ所、15年で3倍に

訪問看護サービスの伸びが著しい。介護保険の訪問看護受給者、請求事業所数は5年前から約1.4倍に増加している。全国訪問看護事業協会(中島正治会長)の調べでは、訪問看護ステーション(医療保険・介護保険含む)は今年4月時点で1万8754カ所。同協会が調査を開始した2010年以降、毎年過去最高を更新し続け、15年間で3倍に達している。病床削減に伴う在宅医療の需要増、介護報酬改定などの背景を探る。
厚生労働省の介護給付費実態統計をもとに、在宅主要サービスの2020年4月審査分と25年4月審査分を比較(表)。受給者数は訪問介護9.2%増、通所介護4.5%増に対し、訪問看護は42.6%増、また請求事業所数は訪問介護6.0%増、通所介護1.4%に対し訪問看護36.9%増と、居宅サービスの中でもその伸びが際立つ。単に「要介護者の増加」が原因とは言い切れない状況だ。
一方で、1人当たり費用額は0.4%減(訪問介護16.8%増)との結果に。訪問看護は介護職員等処遇改善加算の対象サービスではないため、その影響が大きい。また、介護報酬改定では重度者対応を評価してきた反面、理学療法士等による訪問(いわゆる訪看リハ)の回数が多い場合などは減算を強化。予防訪問看護に至っては1人費用額が5年間で8.1%減となっている。
一方で、1人当たり費用額は0.4%減(訪問介護16.8%増)との結果に。訪問看護は介護職員等処遇改善加算の対象サービスではないため、その影響が大きい。また、介護報酬改定では重度者対応を評価してきた反面、理学療法士等による訪問(いわゆる訪看リハ)の回数が多い場合などは減算を強化。予防訪問看護に至っては1人費用額が5年間で8.1%減となっている。

全国訪問看護事業協会では毎年、訪問看護ステーションの指定・稼働数、および新規開設・廃止・休止数の調査を行う。それによると、今年4月1日時点で稼働事業所数は1万8754カ所(前年比1425カ所、8.2%増)。2012年以降は毎年7~10%増で推移している。
同協会が要因の一つに挙げるのが、在宅療養者の増加。「同じ要介護者でも85歳以上、つまり医療処置が必要な人の割合が大きく、40年に向けてさらに増加する」と髙砂裕子副会長は話す。年齢階級別1日あたり訪問診療患者数の推計では、20年~40年で75~85歳未満は2万人とほぼ変わらないのに対し、85歳以上は4.8万人から7.8万人への増加が見込まれる。
国は高度急性期、急性期、回復期、慢性期病床の必要量を推計した「地域医療構想」(現在は40年に向けた「新たな地域医療構想」策定ガイドラインを検討中)を掲げ、その中で急性期を中心とした病床の機能分化や在院日数の短縮化、その受け皿として在宅医療の充実をはかってきた。15年~23年で病床数は5.8万減の119.3万床、急性期に限っては7.1万減の52.5万床となっている。在宅療養者の増加はこうした医療施策の結果でもあると、同協会参与・齋藤訓子氏は述べる。
さらに髙砂氏は、「入院から在宅」に拍車をかけたのが新型コロナだと説明。「入院すると家族と面会できなくなる。看取りだけは自宅で、というケースも増えた」と話す。介護サービスも通所系、短期入所系の利用控えの反動で、訪問系の需要が増加。その中で、感染管理の専門性をもつ看護師の訪問に対する信頼度が高まった。
同協会が要因の一つに挙げるのが、在宅療養者の増加。「同じ要介護者でも85歳以上、つまり医療処置が必要な人の割合が大きく、40年に向けてさらに増加する」と髙砂裕子副会長は話す。年齢階級別1日あたり訪問診療患者数の推計では、20年~40年で75~85歳未満は2万人とほぼ変わらないのに対し、85歳以上は4.8万人から7.8万人への増加が見込まれる。
国は高度急性期、急性期、回復期、慢性期病床の必要量を推計した「地域医療構想」(現在は40年に向けた「新たな地域医療構想」策定ガイドラインを検討中)を掲げ、その中で急性期を中心とした病床の機能分化や在院日数の短縮化、その受け皿として在宅医療の充実をはかってきた。15年~23年で病床数は5.8万減の119.3万床、急性期に限っては7.1万減の52.5万床となっている。在宅療養者の増加はこうした医療施策の結果でもあると、同協会参与・齋藤訓子氏は述べる。
さらに髙砂氏は、「入院から在宅」に拍車をかけたのが新型コロナだと説明。「入院すると家族と面会できなくなる。看取りだけは自宅で、というケースも増えた」と話す。介護サービスも通所系、短期入所系の利用控えの反動で、訪問系の需要が増加。その中で、感染管理の専門性をもつ看護師の訪問に対する信頼度が高まった。

(左から)齋藤参与、高砂副会長
報酬体系を整理
実は、介護保険制度創設時の「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」(ゴールドプラン21)で、訪問看護ステーションは2004年に9900カ所の整備目標が掲げられていた。しかし、2000年以降の10年間は4~5000台で伸び悩んだ。
齋藤氏は「訪問看護の個別ニーズに対し、報酬が追い付いていなかったのが要因の一つ」と指摘。「入院中の外泊先への訪問看護や、退院当日の訪問看護は算定が認められず、ほぼボランティアになっていた」と述べる。また医療保険と介護保険で報酬の扱いが異なりすぎて、その煩雑さが参入を妨げてきた。12年の診療・介護報酬の同時改定では、同協会、訪問看護財団、日本看護協会が両報酬を一覧・可視化し、制度の整合性をはかるよう主張。ケアに見合った報酬体系でステーションの安定経営を支えていく転機となった。
また、同改定では地域での医療・介護連携を具現化したサービスとして、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護の2サービスも創設。在宅での看護師の活躍の場が一層広がった。
訪問看護の担い手について齋藤氏は「新卒の大半はまず医療機関(病棟)に勤める。結婚や子育てを機に一旦現場を離れ、また復帰しようとするが、夜勤ができないとの理由で訪問看護を選ぶ。こうした30代がけっこう多い」と説明する。
訪問看護の大規模化は緩やかに進み、22年時点で5人以上の事業所が半数弱。「介護も同じだが、職員の高齢化と事業継承は今後の大きな課題。昨年は初めて、看護系大学も定員割れした」と齋藤氏は危機感を募らせる。
数字上は増加を続ける事業所数も中身を見ると、昨年度は新設が2487カ所あるのと同時に、廃止が886もある。髙砂氏は「経営、マーケティングの問題。地域の高齢化の状況や想定する利用者(患者)像、立地周辺の医療機関などへのリサーチが足りていない。在宅や地域への志だけでは事業は成り立たない」と強調する。
同協会では経営支援の一つとして、訪問看護の自己評価システムを策定し普及に努めている。「事業計画の策定、実施した訪問看護の内容、職員研修などを自己評価し、自事業所の強み・弱み、課題を抽出する。大切なのは、そこから改善策の立案と実行。事業所の質向上につながるだろう」(髙砂氏)。
(シルバー産業新聞2025年9月10日号)
齋藤氏は「訪問看護の個別ニーズに対し、報酬が追い付いていなかったのが要因の一つ」と指摘。「入院中の外泊先への訪問看護や、退院当日の訪問看護は算定が認められず、ほぼボランティアになっていた」と述べる。また医療保険と介護保険で報酬の扱いが異なりすぎて、その煩雑さが参入を妨げてきた。12年の診療・介護報酬の同時改定では、同協会、訪問看護財団、日本看護協会が両報酬を一覧・可視化し、制度の整合性をはかるよう主張。ケアに見合った報酬体系でステーションの安定経営を支えていく転機となった。
また、同改定では地域での医療・介護連携を具現化したサービスとして、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護の2サービスも創設。在宅での看護師の活躍の場が一層広がった。
訪問看護の担い手について齋藤氏は「新卒の大半はまず医療機関(病棟)に勤める。結婚や子育てを機に一旦現場を離れ、また復帰しようとするが、夜勤ができないとの理由で訪問看護を選ぶ。こうした30代がけっこう多い」と説明する。
訪問看護の大規模化は緩やかに進み、22年時点で5人以上の事業所が半数弱。「介護も同じだが、職員の高齢化と事業継承は今後の大きな課題。昨年は初めて、看護系大学も定員割れした」と齋藤氏は危機感を募らせる。
数字上は増加を続ける事業所数も中身を見ると、昨年度は新設が2487カ所あるのと同時に、廃止が886もある。髙砂氏は「経営、マーケティングの問題。地域の高齢化の状況や想定する利用者(患者)像、立地周辺の医療機関などへのリサーチが足りていない。在宅や地域への志だけでは事業は成り立たない」と強調する。
同協会では経営支援の一つとして、訪問看護の自己評価システムを策定し普及に努めている。「事業計画の策定、実施した訪問看護の内容、職員研修などを自己評価し、自事業所の強み・弱み、課題を抽出する。大切なのは、そこから改善策の立案と実行。事業所の質向上につながるだろう」(髙砂氏)。
(シルバー産業新聞2025年9月10日号)