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福祉用具選択制の効果検証 次期改定へ「対象種目の拡大」も意向調査

厚生労働省は7月25日、介護報酬改定検証・研究委員会(委員長=松田晋哉・福岡国際医療福祉大学教授)を開催し、2024年度介護報酬改定の効果検証を行う調査についての議論を行った。各調査は次期27年度改定の審議の基礎資料となる。前回改定で導入された福祉用具貸与・販売の選択制の調査では、事業者や保険者へのアンケートで、現在対象外の貸与種目についても選択制の対象とすることへのニーズや意向を問う。調査結果や今後の審議次第で、次期改定で選択制対象種目が拡大される可能性がある。
貸与事業所と保険者は全数調査
今年度の「介護報酬改定の効果検証および調査研究に係る調査」では4つの調査が実施され、「一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入に関する調査研究事業」はそのうちの一つ。前回改定の審議報告では、今後の課題として「福祉用具の安全利用の促進、サービスの質の向上、給付の適正化の観点から、貸与と販売の選択制の導入やその他の見直しに係る効果・課題等について引き続き調査・検証を行い、その結果を踏まえ、必要な対応を検討していくべき」とされていた。
7月25日の同委員会では、調査方法などの案について審議を行った。選択制についての調査は、事業所や保険者へのアンケートやヒアリング、介護保険総合データベース分析を行う。アンケートは全福祉用具貸与事業所と全保険者に加え、6000カ所の居宅介護支援事業所などが対象。選択制の利用状況や導入に伴う対応、サービスの提供状況などを問う内容になっている。
7月25日の同委員会では、調査方法などの案について審議を行った。選択制についての調査は、事業所や保険者へのアンケートやヒアリング、介護保険総合データベース分析を行う。アンケートは全福祉用具貸与事業所と全保険者に加え、6000カ所の居宅介護支援事業所などが対象。選択制の利用状況や導入に伴う対応、サービスの提供状況などを問う内容になっている。
利用者の購入ニーズを調査
注目は、現在対象外の貸与種目について追加するかどうかを今後検討するための設問があること。福祉用具貸与事業所と居宅介護支援事業所は、購入を希望する利用者の声がある用具を貸与種目から選択し、その理由を記載する。市町村は保険者の視点から、貸与と販売を選択できるようにした方が良いと考えられる種目を選び、理由を記載する。さらに保険者には、固定用スロープなど現行の選択制対象用具についても「貸与のみとすべき」「販売のみとすべき」といった意見を求める項目もある。
厚生労働省の濵本健司高齢者支援課長は、「対象をどこまで広げていくかということは、現時点でわれわれとして予断を持っているわけではない。ただ利用者の声などをできる限り把握し、それを踏まえながら検討していくことになるだろう」と説明する。
ただ選択制の対象拡大については、当初からその可能性が示されていた。選択制導入を決めた同省「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」の取りまとめでは、「貸与と販売の選択を利用者の意思に委ねるのであれば、対象種目・種類を限定する必要はないのではないかという意見も考えられる」という記述がある。これに対して、委員が「そうした意見が実際にこの検討会で出たわけではない」と削除を求めたところ、当時高齢者支援課長だった峰村浩司氏は「対象を絞って、まずはこういった制度を導入してみることが今回の出発点。実施状況を検証しながら、効果を見極めた上で、今回は対象としなかった用具についても対象にする必要があるかどうかについては今後、検討が必要だ」と回答していた。
現在対象の「固定用スロープ」「歩行器(歩行車除く)」「歩行補助杖(松葉杖除く)」は、①要介護度に関係なく貸与可能②比較的廉価③希望小売価格をひと月の平均貸与価格で割って算出した「分岐月数」より長く利用している者の割合が相対的に高い(およそ4割程度以上)④分岐月数よりも平均貸与月数が長いか、同等のもの――という条件の下で定められたが、こうした前提も変わる可能性がある。仮に対象種目が一気に拡大されれば、「原則貸与」からの実質的な転換となる。
厚生労働省の濵本健司高齢者支援課長は、「対象をどこまで広げていくかということは、現時点でわれわれとして予断を持っているわけではない。ただ利用者の声などをできる限り把握し、それを踏まえながら検討していくことになるだろう」と説明する。
ただ選択制の対象拡大については、当初からその可能性が示されていた。選択制導入を決めた同省「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」の取りまとめでは、「貸与と販売の選択を利用者の意思に委ねるのであれば、対象種目・種類を限定する必要はないのではないかという意見も考えられる」という記述がある。これに対して、委員が「そうした意見が実際にこの検討会で出たわけではない」と削除を求めたところ、当時高齢者支援課長だった峰村浩司氏は「対象を絞って、まずはこういった制度を導入してみることが今回の出発点。実施状況を検証しながら、効果を見極めた上で、今回は対象としなかった用具についても対象にする必要があるかどうかについては今後、検討が必要だ」と回答していた。
現在対象の「固定用スロープ」「歩行器(歩行車除く)」「歩行補助杖(松葉杖除く)」は、①要介護度に関係なく貸与可能②比較的廉価③希望小売価格をひと月の平均貸与価格で割って算出した「分岐月数」より長く利用している者の割合が相対的に高い(およそ4割程度以上)④分岐月数よりも平均貸与月数が長いか、同等のもの――という条件の下で定められたが、こうした前提も変わる可能性がある。仮に対象種目が一気に拡大されれば、「原則貸与」からの実質的な転換となる。

慎重な検討求める声も
介護報酬改定検証・研究委員会で、田宮菜奈子委員(筑波大学教授)は「介護施設などでは高機能の車いすなどがあまり備えられていないという課題がある。特定販売の対象となれば購入した福祉用具を施設入所の際に利用者が持ち込めるとメリットが生まれるかもしれない」と発言した。一方、同調査の検討組織委員長も務める福井小紀子委員(東京科学大学大学院教授)は「検討では、購入を選択するとケアマネジャーの関わりが外れてしまうケースもあるため、慎重な議論が必要という意見もあった」と報告した。
日本福祉用具供給協会の調査では、選択制で購入を選択した利用者のうち13%は状態の変化などの理由により、半年後には購入した福祉用具を利用していなかった。状態に応じて変更できる貸与サービスの意義は大きい。
今後は8月下旬の介護給付費分科会に調査案を諮り、調査を開始する予定。その結果により、来年から始まる27年度改定の議論の俎上に載せられる流れとなる。
(シルバー産業新聞2025年8月10日号)
日本福祉用具供給協会の調査では、選択制で購入を選択した利用者のうち13%は状態の変化などの理由により、半年後には購入した福祉用具を利用していなかった。状態に応じて変更できる貸与サービスの意義は大きい。
今後は8月下旬の介護給付費分科会に調査案を諮り、調査を開始する予定。その結果により、来年から始まる27年度改定の議論の俎上に載せられる流れとなる。
(シルバー産業新聞2025年8月10日号)