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トピックス 仲介大手に聞く 介護M&Aの現状
昨今の物価高や人材不足によって介護事業所の経営の先行きは不透明だ。後継者不在などの理由で事業継続自体が危ぶまれる事業所も多く、打開策として介護業界でもM&A市場が活況だ。M&A仲介大手のストライク(東京都千代田区、荒井邦彦社長)のヘルスケアグループリーダーの箕浦悠氏、アドバイザーの木村郁哉氏へのインタビュー、ブティックス(東京都港区、新村祐三社長)の売却案件より介護業界のM&Aの現状について読み解く。
ストライク
人材確保策として活用
レコフデータ(東京都千代田区、高橋豊社長)によると、2024年の介護関連の主だったM&Aの成立件数は143件。5年間で1・4倍に増加している。当社の医療・介護分野の仲介実績も同様に伸びている。
介護分野に限らないが、人材を確保する手段の一つとしてM&Aを活用するケースが総じて増えている。一方の売手企業側も、人手が集まらず、大手の採用力やブランディング力を求めて譲渡先を探す例も多い。
それ以外にも、▽人件費や諸物価の高騰▽大規模修繕を控えるなどの運転資金の不足▽後継者不在――などの課題があるが、解決策の一つとしてM&Aが広がりつつある。目の前の経営は行き詰っていないものの、「経営疲れ」や「先行きが見通せないから」といった相談を受けるケースも増えてきている。
介護分野に限らないが、人材を確保する手段の一つとしてM&Aを活用するケースが総じて増えている。一方の売手企業側も、人手が集まらず、大手の採用力やブランディング力を求めて譲渡先を探す例も多い。
それ以外にも、▽人件費や諸物価の高騰▽大規模修繕を控えるなどの運転資金の不足▽後継者不在――などの課題があるが、解決策の一つとしてM&Aが広がりつつある。目の前の経営は行き詰っていないものの、「経営疲れ」や「先行きが見通せないから」といった相談を受けるケースも増えてきている。
買手企業のニーズの高い業種、サービスで差
一概にはいえないが、介護分野のM&Aでは買手のニーズが旺盛な業種と、買手が限定的になりやすい業種がある。例えば、介護付き有料老人ホームやグループホームといった居住系サービスは買手のニーズが高い。これらのサービスは総量規制の対象で、計画に位置付けた必要定員総数を超える場合には自治体が指定を拒否できるケースがある。事業者の裁量で自由に新規開設ができないため、事業拡大にM&Aの手法が用いられるケースが多い。
在宅の事業所を併設する住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も一体的に譲渡され、高いニーズがある。訪問看護や福祉用具貸与なども買手のニーズが旺盛な業種だ。
条件にもよるが、これらのサービスと比較すると、訪問介護や通所介護は買手企業が限定されやすい傾向がある。訪問介護は、前回の介護報酬改定でのマイナス改定やヘルパーの高齢化など、今後の見通しを立てにくい印象が広がっている。もちろん買手の出店したいエリアがあるので一括りに語れないが、訪問介護などでも都市部は買手のニーズが高いことも多々ある。
また要介護度が高く、支援が困難な利用者に対し、専門性の高い従業員を多く配置することで取得できる特定事業所加算といった加算項目を、しっかりと取得できているかどうかといった点も評価のポイントとしてあげられる。
在宅の事業所を併設する住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も一体的に譲渡され、高いニーズがある。訪問看護や福祉用具貸与なども買手のニーズが旺盛な業種だ。
条件にもよるが、これらのサービスと比較すると、訪問介護や通所介護は買手企業が限定されやすい傾向がある。訪問介護は、前回の介護報酬改定でのマイナス改定やヘルパーの高齢化など、今後の見通しを立てにくい印象が広がっている。もちろん買手の出店したいエリアがあるので一括りに語れないが、訪問介護などでも都市部は買手のニーズが高いことも多々ある。
また要介護度が高く、支援が困難な利用者に対し、専門性の高い従業員を多く配置することで取得できる特定事業所加算といった加算項目を、しっかりと取得できているかどうかといった点も評価のポイントとしてあげられる。
譲渡価額は下落傾向
全体を見渡すと介護事業者の1件当たりの譲渡価額は下落傾向にあると分析している。厳しい財政状況の中、介護報酬が今後右肩上がりに伸びていくことは想像しがたいからだ。最終的な譲渡価額は売手企業・買手企業の交渉や合意で決まるが、一般的に介護分野のM&Aでは純資産を重視した算定方法か、収益・キャッシュフローを重視した算定方法を用いることが多い(談)
ブティックス
全国的にM&Aへのニーズあり
同社の直近のM&A売却希望案件を都道府県別に見ると、東京都や大阪府、神奈川県など首都圏や大都市を中心に登録数が多い。一方で、地方であっても一定件数の登録がありM&Aによる事業承継へのニーズの高さが伺える。
「後継者不足」に悩む経営者
また、譲渡理由を見ると「後継者不足」が最大の79件、「事業の選択と集中」が71件と続く。「経営疲れ」13件、「経営者がリタイアするため」10件と昨今の物価高や人材不足による介護事業所の経営の厳しさが見て取れる。「グループインによる経営安定のため」6件からは昨今の介護事業所の大規模化による効率化を目指す動きが示唆される。また、「その他」の中には、「従業員の退職」「対象事業まで手が回らない」などの理由が含まれた。(図1)

通所介護が最多
業務内容を整理すると通所介護が77件と最多で、訪問介護が33件と続く。通所介護は後継者不足や稼働率が低く赤字であることを理由に挙げる事業所が散見される。また、訪問介護も同様に、後継者不足や赤字を理由として挙げるケースが見られる。(図2)

無償から高額案件まで希望価額は様々
年間売上げに関しては、デイサービスの最低250万円からサ高住・住宅型有料等の複数拠点での最高14億円まで幅広く分布。1億円以下が138件、1億円以上が64件と業種により様々で、特に1億円以上では住宅型有料老人ホームなど居住系サービスが見られた。(図3)
希望価額は無償から最大12億5千万円まで分布し、高額な案件には施設系サービスが多い。(図4)
希望価額は無償から最大12億5千万円まで分布し、高額な案件には施設系サービスが多い。(図4)

(シルバー産業新聞2025年6月10日号)