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音声入力AIアプリが記録を最適化 ~キヤノンシステムアンドサポートの伴走支援~

音声入力AIアプリが記録を最適化 ~キヤノンシステムアンドサポートの伴走支援~

 介護老人保健施設紫泉の里(福島県郡山市)は5月に①介護記録ソフト②音声入力AIアプリ③見守り機器・カメラ④ナースコール――を導入。各種機器の運用に必要なスマートフォンやインカムも揃え、Wi―Fi環境も整備した。「これまで紙ベースで負担が大きかった介護記録の効率化や、夜勤業務の軽減が主な目的でした」と看護介護部長の五十嵐広恵さん。現場の困りごとが解決できる最適なラインナップを選定した。

 導入以前の介護記録は、ケアを行いながら紙でメモをとり、その後パソコンで数十人分をまとめて転記入力していた。3階入所フロア課長の小澤由紀さん(介護福祉士)は「職員1人が多床室2部屋・8人を担当すれば、ファイルを8冊持ち運ぶ必要がありました」と話す。音声入力AIアプリは装着したインカムに話すだけで手元の端末を通じて介護記録ソフトに入力され、後で転記する必要がない。「特に効果が大きいのが夜勤帯。夜勤職員が行っていた食事量やバイタル経過のグラフ化作業が無くなり、今はソフト上で確認できます」(小澤さん)。

 五十嵐さんは「専門用語の認識や、利用者の姓・名の区別など、話す内容を日々学習していることがよく分かります」と音声入力AIアプリを評価。また、介護記録ソフトについては法人内での情報共有にも役立っているとのことだ。「常駐していない薬剤師にも、介護記録ソフトで利用者の生活の様子やより詳しい服薬情報を常時共有できます。薬剤師から医師へ服薬の変更などを提案する機会がこれまで以上に多くなりました」。急な転院、受診の際も同行職員が端末とポケットWi―Fiを持参し、情報伝達やサマリー作成を施設外でも即時行える体制をとっている。
(左から)熊田さん、五十嵐さん、小澤さん

(左から)熊田さん、五十嵐さん、小澤さん

成果は通所リハから 残業減・レク充実に

 同施設は2、3階が入所(各50床、計100床)、1階では通所リハビリテーション(定員30人・6~7時間未満)を提供する。介護記録ソフトは通所リハビリでも使用。通所リハ課長の熊田奈己さん(介護福祉士)は「1日30~40分は記録時間が短縮され、残業も減りました。現場が本当に楽になりました」と喜ぶ。以前は午後2~3時の間、レク担当を除く全職員が午前中のバイタルや入浴、昼食の記録等を行っていたが、今は各職員が音声入力した記録をリーダーが確認し修正等を加えるだけ。利用者とのコミュニケーションの時間やレクの充実につながっている。

 さらに、併設の居宅介護支援事業所にも同ソフトを導入。利用者情報の共有から、翌月の予定表・提供表の取り交わしもペーパーレスになった。「ケアマネジャーとのやり取りがスムーズ。1枚ずつ紙で予定表を確認していた時と比べ、送迎スケジュールも格段に組みやすくなりました」(熊田さん)。

 1階はもともとネットワーク環境が整っていたため、入所より先に活用が進んだ。「通所のリハ職員が積極的に使い、入所の職員へ教えてくれました」と五十嵐さん。「入所は同じ時間帯に全職員が揃うことがまずありません。『次の職員、明日の職員へ伝える』意識を高めました。今は最高齢、81歳の看護職も使っています」。

 利便性を高めるために取組んだのが、入力欄の絞り込みと統一。「介護記録ソフトはケアの内容別に検索し履歴を追えるのが非常に便利ですが、入力箇所を職員各自に委ねるとバラバラになってしまう恐れがあります」(熊田さん)。例えば、通所リハでは看護処置は「看護欄」、失禁や食べこぼしは「支援経過欄」に記録するなどルールを明確化。入所では「普段の様子」「家族へ説明した内容」など、直接的なケアではない項目についても入力統一をはかっている。

過不足のない夜間訪室

 入所の夜勤帯は1フロアにつき看護職員2~3人体制。以前は見守り機器にマットセンサーを使用していたが、コール毎の駆けつけが負担になっていた。今回導入したのは、寝返りや呼吸・脈拍などの体動を検出し睡眠状態を判定する非接触型センサー。現在、入所者の半数にあたる50台を運用する。カメラは立ち上がりや歩行が不安定で、転倒リスクがある利用者などを対象に20台を設置した。

 覚醒や起き上がり、離床などステータスに応じて、利用者ごとに通知の有無を設定。通知はナースコールを通じて、職員のスマートフォンへ届く。また、カメラは入所者の様子と同時にベッド周りも映し出す。「寝返りをうっただけの通知もあります。逆に通知がない場合も、気になる利用者の様子を定期的にスマートフォンで確認することができるようになりました」と小澤さん。視覚的な情報が職員へ安心感を与えていると話す。
見守り機器はマットレス下に敷くタイプ

見守り機器はマットレス下に敷くタイプ

 以前転倒が発生した際はカメラ映像を遡り、原因を究明。「頭をベッド柵にぶつけていました。こうした情報が確実に得られると、CT検査の判断などが適切に行えます」と五十嵐さん。今後は見守り機器から得た情報からケアの質を高めていくことが施設全体の課題だと強調した。

(シルバー産業新聞2024年12月10日号)

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