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介護テクノロジー活用最前線① 大分県の将来を見据えた人材確保と定着

介護テクノロジー活用最前線① 大分県の将来を見据えた人材確保と定着

 社会医療法人三愛会(大分市、三島康典理事長)は、医療機関「大分三愛メディカルセンター」(190床=一般病棟114床/高度治療室4床/地域包括ケア病棟44床/回復期リハ病棟28床)を中心に、退院後から在宅復帰までの調整・準備、在宅復帰後の生活維持のため、診療所や介護保険サービスも幅広く展開する。ICTを中心とした介護テクノロジーも積極的に活用している。全2回シリーズ。今回は老健編。

 同法人は80年にわたって地域の医療を支えてきた。現在では二次救急病院として大分市南部のほか、周辺の由布市・竹田市・豊後大野市からも救急患者を受け入れている。

 急性期を脱した高齢者の在宅復帰に向けた取組にも注力。法人グループには地元に根差した診療所、老健施設・有料老人ホーム・高齢者グループホーム・訪問看護・訪問介護なども展開する。

老健として在宅復帰を目指す背景

 国は2012年介護報酬改定で、老健施設に在宅復帰機能を期待して「在宅強化型」を新設、より高い報酬を設定した。背景には全国的な特養施設の入所待ち増大の中で、老健であっても、特養の代わりとして長期入所を希望する利用が多かったことがある。

 同法人グループの介護老人保健施設「わさだケアセンター」(大分市、小野敬司施設長、入所定員100人・通所定員60人)は、入所者の意向に基づいて、早期の在宅復帰を目指す老健のあるべき姿に向け、12年改定で在宅強化型の要件を満たし、続く18年改定でも最上位評価の「超強化型老健」となった。

 同施設事務長(社会福祉士)の萩原和哉氏は「それと同時に、当法人グループでは在宅生活維持のための介護サービス提供などの取組を進めており、積極的に在宅復帰を目指しやすかった」と在宅復帰推進の理由を説明する。

働きやすい職場づくり

 介護離職をなくすためにワークライフバランスの良い職場づくりにも取り組んだ。

 具体的には▽見守りセンサーの全床採用による夜勤職員の負担軽減▽持ち上げない介護の実践のための介護リフトの活用――など。大分県は全国に先駆けてリフト活用の重要性を普及啓発しており、介護リフトの追加導入にも補助金活用ができた。

 床走行や天井走行リフトのほか、移乗支援機器「Hug」(FUJI製)を5台導入。離床してトイレ誘導をする時の本人の自立・尊厳保持と、介護職の負担軽減による働きやすい職場づくりの実現に取り組む。

 現在、同施設では生産性向上推進体制加算Ⅱ(10単位/月・人)を算定。来年度以降はインカム導入を目標としており、上位加算のⅠ(100単位/月・人)の算定を目指す。

変化を掴むAI活用の夜間見守り

 見守りシステムとして半年前にエコナビスタの「ライフリズムナビ+Dr.」の見守りセンサーとカメラを全床に導入した。「導入にあたって周辺機器が充実しているので、同じメーカーで連携しやすいことや、メーカー担当者がスケジュールを共有しながら伴走支援をしてくれたこと、データに基づいたケアができることに魅力を感じた」と萩原氏。

 同機器の特長は「要注意者ピックアップ機能」。特定のリスク要因(睡眠時間の大きな変化、疲労回復度・快眠指数・快適環境指数の大きな変化、昼夜逆転傾向や転倒事故後の急変リスクが高めの利用者)をAIが解析し、注視する利用者をピックアップする。介護職員の見落としを回避し、夜勤職員の心理的負担からも解放する。

介護職による定量的データ活用

 導入3カ月で基本的な使い方を習得。介護部係長の伊藤つばさ氏からは「日々のデータの変化などをカンファレンスで使いたかった。老健施設は看護師、リハビリ職、管理栄養士など専門職が多く、介護職が対等に意見交換をするためには、介護に関する定量的なデータが欲しかった」と評価する。

 見守りシステム導入したことで訪室すべき判断ができるようになり訪室回数が減った。訪室業務で削減できた時間はこれまでできなかった業務時間に使っている。

 これまで残業で対応してきた業務を介護テクノロジーで業務時間内に終えることができるのは、自立支援や在宅復帰の実現をしながら、介護職員の働き方改革とともに可能にする技術として一層の普及・活用が求められることになる。(続)
「定量的なケアデータを活用している」と介護部係長の伊藤氏

「定量的なケアデータを活用している」と介護部係長の伊藤氏

(シルバー産業新聞2025年10月10日号)

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