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来年4月「介護テクノロジー重点分野」拡大 「ICT系」「ロボット系」両輪で普及目指す

来年4月「介護テクノロジー重点分野」拡大 「ICT系」「ロボット系」両輪で普及目指す

 厚生労働省と経済産業省は、介護ロボットやICT等のテクノロジーを活用した機器のうち「ロボット技術の介護利用における重点分野」について、2025年4月より「機能訓練支援」「食事・栄養管理支援」「認知症生活支援・認知症ケア支援」の3分野3項目を追加し「9分野16項目」とすることを決めた。名称も、介護ロボットとICT等を包括した「介護テクノロジー」とする。

重点分野策定と見直し

 厚労省と経産省は、介護ロボットやICT等のテクノロジーを活用した機器のうち重点分野を策定することで▽介護施設等が導入時に補助金対象となる機器範囲(介護テクノロジー導入支援事業、介護テクノロジー定着支援事業=厚労省所管)▽メーカーが重点的に開発支援を受けられる機器範囲(医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業=経産省所管)――の判断基準としてきた。12年に策定し、14年、17年に改訂してきた。

 12年当初は「5分野8項目」(①移乗介助:装着/非装着②移動支援:屋内/屋外歩行支援③排泄支援:排泄物処理のできるトイレ④見守り支援:施設/居宅⑤入浴支援:浴槽への出入りを支援できる機器)だったが、17年改訂で1分野5項目(介護業務支援分野、移動支援分野に装着型歩行アシスト項目、排泄支援分野に排泄予測をしてトイレ誘導する排泄予測項目/トイレ個室での下衣着脱などの動作支援項目、「見守り」分野を「見守り・コミュニケーション」分野と名称変更し、対話・顔認識機能など高齢者等とコミュニケーションができるコミュニケーション支援機器項目)をそれぞれ追加し、現行の「6分野13項目」となった経緯がある。(トップ画像参照)

 25年4月以降はさらに「機能訓練支援」「食事・栄養管理支援」「認知症生活支援・認知症ケア支援」が追加とされ「9分野16項目」となる。

機能訓練支援

 身体機能や生活機能の訓練で職員が実施する業務(アセスメント・計画作成・訓練実施)を支援する機器・システム。歩行姿勢を撮影して動作解析するものや歩行訓練機器の使用時間・距離・速度計測等を自動計測するものなどが想定され、収集されたデータは、介護記録システムやケアプラン作成支援ソフト、科学的介護情報システム(LIFE)等と連携を目指す。訓練の実施状況や効果については家族などへのフィードバックも目指す。

食事・栄養管理支援

 誤嚥を検知する機能や、栄養管理を支援する機器・システムを想定する。具体的には、高齢者等の誤嚥発生や誤嚥リスクを検知し、速やかに介護職等に通報する支援を行い、データの蓄積ができるもの。栄養管理を支援する機器・システムは、高齢者等の食事摂取内容等を把握。介護職の食事記録業務の負担軽減を目指し、情報・データの蓄積により、低栄養等のリスク要因を把握できるもの。管理栄養士や介護職員等の多職種にデータが共有され、栄養改善のための食事提供や栄養管理業務の効率化が期待される。

認知症生活支援・認知症ケア支援

 認知機能が低下した高齢者等の自立した日常生活や、介護施設での個別ケアを支援する機器・システム。時間や場所、目的など認知機能の低下による日常生活のしづらさの解消を目指し、自身で操作しやすい工夫や介助者に情報共有される機能をもち、日常生活の自立性の向上を支援する。

 一般にも使用されるような汎用性のあるものでなく、認知機能が低下した高齢者等の支援に特化したもの。

 介護施設等の個別ケアに活かすため、認知機能、生活環境、表情等の情報を収集・蓄積し、それを基に個々の特性に合わせた介護サービス提供を支援する機能をもち、介護サービスの質の向上と職員の負担軽減を目指す。収集された情報が、ケアマネジャーや地域包括支援センターも含む多職種に共有され、個々の特性に合わせた介護サービス提供を支援することが可能であれば加点評価する。

ケアの質向上と負担軽減を同時実現へ

 ポイントは、介護テクノロジー全体像のうち、新3分野項目を含む「ICT系」と、アクチュエーター(モーター)により動作を支援する「ロボット系」の2系統に整理したこと。

 ICT系は、自立支援や誤嚥防止、排泄自立の実現、認知症ケアの充実など、より良いケア計画の検討・見直しや、介護記録のペーパーレス化、通所サービスの送迎ルート作成・変更対応の自動作成、ケア必要時間の傾向からのシフト最適化などの業務改善について、データをクラウドに束ね、AIなどにより最適解を導き出すDXの実現を目指す。

 具体的には、LIFEへの提出データ作成の補助やデータ解析に対応した介護ソフトなどの介護業務支援分野の機器活用が重要になる。

 ロボット系は、介護現場での職員の身体負担の軽減を図りながら、排泄や入浴のための離床・歩行による自立支援の機会を最大化する目的で、動作による負担を軽減するアクチュエーターを搭載したもの。排泄介助(排泄動作)や入浴支援では、安全のため通常は2人介助(支え役・介助役)で一連の排泄動作を行うところを、1人介助でも可能にする。

 この分野の最先端機器としては、移動支援分野(室内)の移乗支援タイプに、浴室への移動介助のために防水機能を搭載したものや、入浴支援分野のうち、浴槽以外に温浴ミスト浴やベッド上で温水・ソープ・吸引が1台で可能な機器などがある。

 課題は普及率で、ICT系の「見守り・コミュニケーション分野」30.0%、「介護業務支援」10.2%に対し、ロボット系は「入浴支援」11.2%、「移乗支援」9.7%、「移動支援」1.2%と、ICTに偏重していること。また、補助金で導入できる介護施設での活用が中心で、福祉用具貸与・特定福祉用具販売対象の介護テクノロジーが少なく、在宅に広がりが見られないことがある。

 これについて、政府は25年度より「介護テクノロジーを福祉用具貸与・販売の対象に追加する」「介護生産性向上総合相談センターの開設を加速し、課題の洗い出しに基づいて、見守りセンサー以外にもバランスの良い介護テクノロジーの導入を支援する」「25年度予算での補助制度等の充実」を掲げ、取り組む方針を固めている。(続)
(シルバー産業新聞2024年9月10日号)

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