インタビュー

ダスキン・長沼洋一取締役 高齢者ケアの事業展望

ダスキン・長沼洋一取締役 高齢者ケアの事業展望

 フランチャイズビジネスを手掛けるダスキン(大阪府吹田市、山村輝治社長)。高齢者ケアの分野では、福祉用具サービスを提供する「ヘルスレント」と介護 保険制度外で高齢者の暮らしをサポートする「ホームインステッド」の2つの事業を展開する。今年4月から両事業を統括している長沼洋一取締役に話を聞い た。

ヘルスレント 全国209店舗を計画

 ヘルスレント事業は、2012年の4月末時点で全国に108店舗、利用者数は約5万人、売上は昨年度約54億円で、対前年比10.5%の伸びとなっている。今期中にさらに10店舗以上の増店を見込んでおり、期末には120店舗に届くだろう。

 最終的に日本を209のエリアに分けて、1エリアに1店舗出店する計画なので、現在の108店舗はまだ半分という状況である。

  出店には必ず固定費が発生するため、本来は1店舗で、できるだけ広いエリアをカバーする方が効率的だ。しかし、それは企業側の論理であって、お客様の立場 になれば「すぐに駆けつけてもらえる」ことが重要であり、地域包括ケアシステムの中で表現されている「おおむね30分以内に必要なサービスが届く」という 構想から考えても、やはり提供エリアをできる限り細かく分割することが、目指すべき方向だと思っている。

 何よりも、地域包括ケアの考え方が出る前から、我々は清掃用具のレンタル事業において、地域密着型でお客様に接してきた歴史があり、小商圏での活動を重視しているグループでもある。

  さらにフランチャイズには珍しいことだが、当社には加盟店会というのが存在する。仲間からどういうことをするとお客様から喜ばれたかなどの事例が報告・共 有され、それがまたお店の励みにもなるという好循環を生み、非常にうまく機能している。これは商圏エリアを細かく分けているからであり、対立関係ではな く、協調関係を生む仕組みとしても有効だと思っている。

 先日から、福祉用具に関する事故の問題などが話題になっているが、お客様に安全・安心なものを提供することは、我々のグループに共通する考え方だ。

 その方針を貫くため、当社では製品の安全性をメーカー任せにせず、自社機関の「ダスキン商品検査センター」で独自に評価を行い、その評価をクリアした製品だけを取り扱うようにしている。社内体制も事業部側と検査センター側とで明確に区別しており、社内に利益相反の関係を作ることで、事業部サイドの「売りたい、扱いたい」という要望だけで、ものごとが動かない仕組みを作っている。

 現場サイドでは3カ月に1度は必ずモニタリングを行うということをヘルスレント加盟店のルールにしているほか、4月から始まった「福祉用具サービス計 画」をきちんと作成し、専門性の高いサービスの提供と事故防止のための情報共有を徹底していく。こうした重層的な仕組みで、お客様に安全・安心を届けられ るよう努力している。

ホームインステッド 下半期から出店再開

 ホームインステッド事業は2000年にスタートし、現在、全国に111店舗、利用者数は約3500人で売上は昨年度で約22億円となっている。

 このサービスは、介護保険の制度外の部分で高齢者の身の回りの世話や家事のお手伝いをするため、利用方法や時間に制約がなく、お客様やご家族が望まれるサービスを自由に設計できるのが特徴だ。

 ただ、制度に左右されず、自由にサービスを使ってもらえる分、お客様が我々に求めるサービス内容は多様であり、その全てに対し、満足していただける質が求められる。つまり、それらをいかに担保するかが、この事業の最大のテーマであり、その対策として、我々は「品質確認の定期訪問」という手法で、質の高いサービス提供ができるよう努めている。

 具体的には、ケアスタッフがサービスを提供するタイミングとは別に、オフィスのスタッフがお客様のお宅を訪問し、お届けしたサービスに本当に満足できているかを確認する。こうした手法で、一定のサービスの質を担保しているわけだ。

 この2年間はホームインステッドのビジネスパッケージを改めて構築するために、出店は控えてきた。ただ、その間も、利用に関する問い合せや加盟の希望が多く寄せられており、今年の下半期までには、ビジネスパッケージを再構築して、出店を再開していきたいと考えている。

 私自身、認知症になった親の介護を経験する中で、両事業を担当することになった。日本の高齢化が加速度的に進んでいく中で、社会の環境変化にどう応えていけば望ましいのか。個人的な思いも重ねながら追求していきたいと思っている。

(シルバー産業新聞2012年6月10日号)

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