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TECIA 異業種71社が団結「産業発展で高齢社会を支える」

TECIA 異業種71社が団結「産業発展で高齢社会を支える」

 2016年に設立された「台湾エルダリーケア産業協会」(台灣銀髮產業協會、略称=TECIA)は、台湾で高齢者関連事業を展開する71社・団体が参画している。

 会員は台湾の介護制度「長照」での事業のみに捉われず、▽スマートテクノロジー▽福祉用具・高齢者向け製品▽食品メーカー・飲食▽介護事業者・施設▽高齢者住宅▽税務・法律事務所▽金融・生命保険▽大学▽コンサルティング▽メディア――の11分野という広い異業種で構成される。

 日本を上回るペースで高齢化が急速に進む台湾。会員各社は、来る超高齢社会に向けて、多種多様なシルバー産業の発展と連携が欠かせないという共通認識を持つ。初代理事長・李宗勇氏の呼びかけで集った。

 三代目を務める林莉婷理事長は、「例えば民間企業が高齢者住宅の整備を進める上でも、金融・法律の専門家やコンサルタント、人材育成機関と連携できるのは大きな利点です」と説明する。

社会課題の「住まい」

 一方で、これほど多くの業種が揃うと、一つの団体としての活動の足並みは揃わなくなりそうだ。「そこで我々は、特に社会課題である住まいをテーマに決めて活動を始めました。台湾には460万人を超える高齢者がいますが、施設のベッドや病床数は15万床ほどしかありません。社会課題であると同時に、産業として高い可能性を秘めているということです」(林理事長)

 同協会はまず、現役で働く55~64歳(準銀髪族)を対象にしたアンケート調査を21年に実施。これから高齢者となる世代へ、住まいに対するニーズ把握に着手した。その結果、準シニア世代を捉えるキーワードとして①安心して暮らせる住環境②生活の質を高める総合的なサービス③社会参加④自己成長――が浮かび上がったという。

 同協会は報告書をまとめ、その中で高齢者住宅に関する「未来の10大トレンド」を発表。「コミュニティは将来の生活にも欠かせず、多様なコミュニティと相互に作用する空間やモデルづくりが重要」などの10項目を挙げる。報告書は台湾内務省からも高く評価されたという。

「原居安老」を提言

 次に取り組んだのは、一般消費者に向けた啓発だった。「調査を通じて感じたのは、準シニア世代は65歳以降の自身の生活があまりイメージできていないことでした。現役で働いている人たちなので、老後に意識が向いていなくても無理はありませんが、元気なうちから将来について考えてもらうことがやはり大切です」と林理事長。老後の生活に関心を寄せてもらうツールとして、「住宅志向テスト(20の質問)」と「安心して暮らすための100の処方箋」を作成し、22年に公表した。

 翌年はこれまでの集大成として、他団体とも協力し、「原居安老」のコンセプトを提唱。高齢者が尊厳をもって自立して自宅・地域で暮らす、いわゆる「エイジング・イン・プレイス」の概念だ。日本、オランダ、ドイツ、中国の事例についても調査・分析。日本の事例ではシルバーウッドが運営するサ高住「銀木犀」が取り上げられた。これをもとに政府や各業界の専門家を交え、求められる高齢者住宅のあり方について議論を行った。

 産業発展で台湾の高齢社会を支えようと業種を超えて集まった民間団体が、市場調査から啓発、そして政策や未来のあり方についての提言と精力的な活動を続けている。「台湾の高齢化も待ったなし。原居安老を実現するため、政府の施策だけでなく、台湾の民間産業が迅速に行動していかなければなりません」と林理事長は力強く語った。

(シルバー産業新聞2025年5月10日号)

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