連載《プリズム》

介護のプロの観察

介護のプロの観察

 訪問介護時、ヘルパーは、身体介護の時にも生活支援の時にも、本人の状態をしっかりと観察している。たとえば、身体介護に従事している時間の73%は、疾患を踏まえて、病状の変化を観察している。(プリズム2016年11月)

 同じく、調理中心の生活援助を行っている時にも、その64%の時間は病状の変化の観察も行っている。プロの介護職は、直接的な介護行為と平行して、病状の変化や顔色の変化、サービス提供責任者への連絡の必要性検討などの介護観察をしている。介護観察には、専門性や技術と知識が要る(日本在宅介護協会東京支部の調査。16年9月7日)。

 在宅介護に直接プロの介護員が関わる時間は、24時間365日の中でわずかな時間だが、専門職として、その後の大部分の時間を本人や家族で過ごせるよう関わっている。配食サービスや家事サービスに見守りなどの付帯サービスもあるが、訪問介護員の観察と同等視はできない。家族だけの時間を考えての適切な声がけが本人や家族の力を呼ぶ。全人的なサービスである介護の専門性は、医療や介護の知識や経験に裏打ちされたマルチタスクに在るのかも知れない。

 15年改正では、地域包括ケアの推進をめざして、在宅の中重度者を支えるために、訪問系サービスの充実が図られた。訪問介護は、20分の身体介護こそ伸びてきたが、デイサービスに比べて、訪問介護員という専門職が必要なために、深刻な介護専門職不足がストレートに影響して、利用者拡大のスピードは低速運転が続いている。

 一方、外国人介護職の門戸が広がろうとしている。これまでのEPA(経済連携協定)で来日し、介護福祉士の国家試験を合格した外国人介護福祉士による訪問介護も認められるようになった。技能実習適正化法改正が成立すると、外国人技能実習制度の対象職種に介護が加わることにもなる。

 介護人材不足に対処するため、介護福祉士が介護業務に特化できるように、施設での周辺業務を、若年高齢者などに介護助手として働いてもらう検討も行われている。また来年4月には、介護職の賃金を平均月1万円相当アップするための介護報酬の見直しが決まった。

(シルバー産業新聞2016年11月10日号)

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