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財政審 「要介護1、2の生活支援・通所介護を保険外」

財政審 「要介護1、2の生活支援・通所介護を保険外」

 社会保障費の抑制を目指す改革案が、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会(以下、財政審、分科会長=榊原定征・経団連名誉会長)でとりまとめられる。介護分野では、▽要介護2までの生活援助サービスの地域支援事業への移行▽利用者負担、原則2割▽ケアマネを通じた価格競争の推進▽ケアマネジメントへの自己負担導入――などが検討されており、政府の社会保障改革案への反映を目指している。

 社会保障費は、政府の一般歳出99兆4291億円のうち、33兆9914億円(34.2%)となり、全体の3分の1を占める。高齢化の進展に伴い、医療保険や介護保険に対する給付抑制が圧力を増している。 

 4月23日に開催された財政審では、社会保障費抑制の具体策を提言。介護分野では、①保険給付範囲のあり方②保険給付の効率的な提供③負担の公平化――の3点を「改革の視点」として掲げ、それぞれに具体策が提示された。給付の範囲では、「要介護度・要支援度の軽重にかかわらず同じ保険給付率となっている制度を改め、『小さなリスク』については、より自助で対応すべき」との考え方を示し、要介護2までの訪問介護と通所介護について、第8期介護保険事業計画中に市町村の地域支援事業に移行させることや、生活援助サービスに特化した支給限度額の設定などを検討するよう提言している。給付の効率的な提供では、介護費の地域差の縮減に向けて、インセンティブ交付金の活用による保険者機能の一層の強化を提言。「要介護認定率の変化」や「通いの場参加率」など、アウトカム指標の占める割合が、都道府県分の評価指標で約3%、市町村分で約5%などと低い点に触れ、「より適切なアウトカム指標の設定や、配点のメリハリ付けを行うべき」と見直しを求めている。

 その上で、介護予防・重度化防止の取組によって認定率や給付の抑制などに成果をあげた保険者に、「傾斜配分する仕組みを検討すべき」とし、財源は調整交付金を活用するよう求めている。インセンティブを使って、保険者の自立支援・重度化予防の取組みを促進させ、給付の抑制や効率化を図っていく考えだ。ケアマネに料金説明を義務化サービス提供体制の面からは、介護療養病床の着実な転換を図り、国民負担を抑制していく考えを示し、介護報酬にメリハリを付け、「転換促進を図るための十分な対応を行うべき」としている。 

 現在、総量規制や公募制の対象となっていない居宅サービス(訪問介護・訪問入浴・訪問リハ・通所介護・通所リハ・短期入所生活介護等)についても、自治体がコントロールできる仕組みに改めるべきだとした。介護サービス事業の経営の効率化・安定化に加え、護人材の確保やキャリアアップを促進していく観点から、介護サービスの経営主体の統合・再編を促す施策を講じる考えや、生産性向上に向け、介護ロボットなどの設備に応じて運営基準や報酬に差を設けることなども求めている。このほか、エビデンスに基づき、介護サービスの質や経営への効果検証を行うPDCAサイクルを確立し、介護報酬に反映させていく必要性についても指摘した。

 さらに、「給付の効率的な提供」の観点では、ケアマネジャーに複数事業のサービス内容と料金について説明を義務化させ、確実に価格競争が行われる仕組みも提案。市場原理を働かせ、介護報酬を下回る価格設定をする事業所を出現させるのが狙いだ。

 そして、財政審の提言の中で、利用者の生活に最も影響が大きいのが③負担の公平化だ。改革の方向性として、利用者負担を「年齢でなく能力に応じた負担」に変えていくことを示し、具体的に利用者負担を原則2割にすることや、ケアマネジメントへの自己負担の導入を提言している。また、在宅と施設の公平性確保の観点から、多床室の室料負担や補足給付の見直しについても提言。補足給付については15年度改正で、すでに預金や有価証券などの資産要件が給付の条件として加えられているが、住宅・宅地などの不動産についても資産要件に追加するよう検討を求めている。 財政審では近く意見をとりまとめ、政府の社会保障改革案への反映を目指している。

(シルバー産業新聞2019年6月10日号)

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