連載《プリズム》

「落とし穴」はありませんか

「落とし穴」はありませんか

 3月11日の震災から4カ月が経とうとしている。避難所生活を脱して、仮設住宅への入居が本格化してきた。英知を結集して、明日につながる復興に向けてしっかりと方針を決めてほしいし、福島原発の循環冷却システムは一刻も早く稼働させなければならない。(プリズム2011年7月)

 6月10日鹿児島、11日宮崎で地元の福祉用具事業者、カクイックスウィングが、チャリティ講演会を開催し入場料を被災地に寄付した。演壇に立った、災害時の福祉を実践するNPOサンダーバード代表の小山剛さんは、「津波には早く逃げることだ。いざとなれば、そこにいる人たちで救助を考えざるを得ない」と、それぞれの居場所で判断し対処しなければならないと話した。

 5月22日には、宮崎県で津波と土石流を想定した避難訓練が行われ、沿岸部と新燃岳周辺の市町村が参加した。日向灘に面した立地の特養「クローバー 一つ葉」や「三愛園」でも、入居者を近くの大型ショッピングモール屋上まで車で避難させた。当日は地震から15分以内で避難する目標だったが、歩ける人や車いす移動ができる人を10人ほど事前に選んでの訓練だったのでうまくいった。施設では、これまでも津波を想定した避難訓練を行ってきたが、人手の少ない夜間や休日にふいに起こるとどうなるか、不安が隠せない。市の危機管理室によると、市街地ではリヤカーを使って在宅の要介護高齢者を高い建物に移動させたというが、災害時の車いす活用では、がれきに強いパンクレスタイヤの導入をすすめるべきだと感じた。

 岩手県盛岡市にある軽費老人ホーム「松園ハイツ」では、数年前に防火訓練を行った際に、交換時期を迎えた消火器を利用者に実際に使ってもらった。しかし消火器の栓は抜けたが、利用者にはハンドルを握りつづける力がなく、消火できなかった。実際に試すことで、消火器はあっても使えないことが分かった。何よりも火を出さないことが先決と、プロパンガスを全面的にIHに入替えた。訓練だと思って手を抜かず、何事も本気で臨めば、意外な落とし穴も見えてくる。震災の教訓を活かさなければならない。

(シルバー産業新聞2011年7月10日号)

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