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被災地で働き続ける看護師の母と介護福祉士の娘
被災地で福祉の仕事を志す若い世代がいる。震災から6年後の2017年、当時高校3年生だった西内紗弥さんは、母で看護師の光恵さんの訪問看護の話や、お年寄りとの交流を通して被災地の高齢者を支えたいと、福祉の道に進むことを決心。震災の津波で壊滅的な被害を受けた老健「ヨッシーランド」が、同年12月に高台に移設して再開することを知り、見学に訪れた。介護に携わるなら事業の立ち上げから関わりたいと考え、光恵さんの言葉にも背中を押され、18年から同施設で共に働くことを選択。利用者からの「ありがとう」が紗弥さんにとって仕事を頑張れる理由だと話す。
美容師から福祉へ
南相馬東高校に進学した紗弥さんは、当初多くの友人が進む美容師の専門学校への進学を考えていた。同高校は進路に合わせて授業を選択して組むことが可能。紗弥さんは「母が訪問看護の仕事をしており、近所のおじいちゃんおばあちゃんと話すのが好きだったので、美容師以外にも福祉に関連する授業も選択していました」と話す。
学年が進むにつれて、光恵さんの訪問先での話を聞き、お年寄りとの交流の中で南相馬市に暮らす高齢者に寄り添う仕事がしたいと、介護の仕事への思いが強くなったという。
そこで、専門学校への進学について光恵さんに相談したところ「働きながら学べることは多い。福祉の部分で卒業したてでも手伝えることはたくさんあるから」とのアドバイスを受けて、卒業してすぐに働き始めることにした。
学年が進むにつれて、光恵さんの訪問先での話を聞き、お年寄りとの交流の中で南相馬市に暮らす高齢者に寄り添う仕事がしたいと、介護の仕事への思いが強くなったという。
そこで、専門学校への進学について光恵さんに相談したところ「働きながら学べることは多い。福祉の部分で卒業したてでも手伝えることはたくさんあるから」とのアドバイスを受けて、卒業してすぐに働き始めることにした。
一から介護に携わりたい
就職先を探しているときに、再開直前のヨッシーランドを見学。「被災した施設の再開に関わるのはめったに経験できない。固定化されたルールもまだなく、いろいろなことを教えてもらいながら自由にできる」と考え、同施設で働くことにした。「ゼロからの出発への不安よりも、何ができるんだろうとわくわくするような前向きな気持ちが大きかったです」と紗弥さんは振り返る。
いつの間にか母も働くことに
3月、同施設に紗弥さんの制服の採寸や業務の説明を受けに訪れた際、光恵さんは当時の事務局の池田幸さんに呼び出された。「看護師として一緒に働きませんか」。
まさかの言葉に驚いたものの、良い機会だと娘にも相談したうえで一緒に働くことにした。
紗弥さんは「一緒に働くことに賛成はしたのですが、当初は周りの目も気になり、実はあまりうれしくなかったです」と当時の思いを語る。
光恵さんは仕事中に腰を痛めて、しばらく仕事は休もうと考えていたそうだ。「ヨッシーランドには訪問看護をしているときに一緒に働いていた職員がいたので、安心して娘を預けられると勧めた。まさか一緒に働くことになるとは思っていませんでした」と驚きを語る。
インターンを経験したものの、紗弥さんにとっては初めての介護現場。実際に働いてみると、会議や委員会、申し送りなど、想像していた介護業務以外にも仕事が多くあり、行きづまることもよくあった。「その時に、母に相談できるので、今は一緒に働けてとてもよかったです」と紗弥さん。
まさかの言葉に驚いたものの、良い機会だと娘にも相談したうえで一緒に働くことにした。
紗弥さんは「一緒に働くことに賛成はしたのですが、当初は周りの目も気になり、実はあまりうれしくなかったです」と当時の思いを語る。
光恵さんは仕事中に腰を痛めて、しばらく仕事は休もうと考えていたそうだ。「ヨッシーランドには訪問看護をしているときに一緒に働いていた職員がいたので、安心して娘を預けられると勧めた。まさか一緒に働くことになるとは思っていませんでした」と驚きを語る。
インターンを経験したものの、紗弥さんにとっては初めての介護現場。実際に働いてみると、会議や委員会、申し送りなど、想像していた介護業務以外にも仕事が多くあり、行きづまることもよくあった。「その時に、母に相談できるので、今は一緒に働けてとてもよかったです」と紗弥さん。
「ありがとう」 をやりがいに
仕事の魅力について紗弥さんは「ありがとうの言葉」と強調する。昨年はコロナの影響で特に忙しく、利用者に気を使わせて我慢をさせているのではないかと、もどかしさを感じることもあったそう。その中でも「助かったよ。ありがとう」と言ってもらえることが仕事を続けるモチベーションになったという。
日々のちょっとした出来事にもうれしさを感じている。「去年成人を迎え、振袖姿を見せたのですが、今でもそのことを嬉しそうに話してくれて、私もその度にうれしくなります」(紗弥さん)。
日々のちょっとした出来事にもうれしさを感じている。「去年成人を迎え、振袖姿を見せたのですが、今でもそのことを嬉しそうに話してくれて、私もその度にうれしくなります」(紗弥さん)。
吹奏楽がつなぐ縁
紗弥さんは小学生から続けていた吹奏楽の経験を活かして、ほかの職員やボランティアと一緒に演奏会もするそうだ。今は、楽器のレパートリーを増やそうと、オルガンにも挑戦しているとのことだ。
去年からは高校の部活の後輩が同施設に就職し、演奏会にも参加している。高校での職場説明会で、紗弥さんが登壇して福祉の仕事をPRしている姿を見て、同じ施設で働きたいと来てくれたそうだ。
さらに今年の4月からはその後輩の友人も新しく働き始めるなど、紗弥さんの縁がどんどんつながっている。
紗弥さん自身も今年介護福祉士国家試験に合格。「もっと利用者に専門的にかかわることができる」と喜びを語る。光恵さんは「娘は人との会話を通して癒す力があると感じていました。福祉の道を進んでくれて本当によかったと心から感じています」と喜びを語った。
(シルバー産業新聞2021年5月10日号)
去年からは高校の部活の後輩が同施設に就職し、演奏会にも参加している。高校での職場説明会で、紗弥さんが登壇して福祉の仕事をPRしている姿を見て、同じ施設で働きたいと来てくれたそうだ。
さらに今年の4月からはその後輩の友人も新しく働き始めるなど、紗弥さんの縁がどんどんつながっている。
紗弥さん自身も今年介護福祉士国家試験に合格。「もっと利用者に専門的にかかわることができる」と喜びを語る。光恵さんは「娘は人との会話を通して癒す力があると感じていました。福祉の道を進んでくれて本当によかったと心から感じています」と喜びを語った。
(シルバー産業新聞2021年5月10日号)