連載《プリズム》

木がつなぐ安心

木がつなぐ安心

 岩手県釜石市では仮設住宅の出入り口が向かい合わせに造られている。「同じ方向だと、左右の家の人には挨拶はしても前の家は後ろ向きですから関わりが薄くなります」と、千葉県柏市にある東京大学高齢者社会研究機構の鎌田実機構長が話す。(プリズム2011年9月)

 津波に奪い去られた地域のつながりを仮設住宅でどのように創り直していくか。「玄関の向きを向かい合わせただけではなく、仮設の建物と建物の間にウッドデッキを設けたのです」。これで2つの建物が一体化し、住居どうしもつながって、あたかも共同住宅のような環境が造られた。「2つの建物の外との間には段差は生まれてしまうのですが、住人の間の段差は低くなり、コミュニケーションがうまれることが期待されます」と。仮設住宅の入居期限は一般に2年間と決められている。阪神淡路大震災の時は3年間まで延ばされた。その間に各人は物心両面で自立への準備をしていく。

 鎌田さんはいま柏市で今後の都市周辺部の急速な高齢化に対応したまちづくりに取り組んでいる。柏市とUR都市機構、東大のプロジェクトに、40数社の企業が参画した。研究機構には、日本に2台と言われる最新のMRI(磁気共鳴画像診断装置)から、車いすやリフトなどを整備したモデルハウスまで、幅広い道具を取り揃えている。鉄筋コンクリートの建物内部は、鎌田さんの発案で木の板を多用した。「検査などでたくさんの高齢者のみなさんがやって来られますから」と言う。馴染んできた木質の柔らかさが人々を受け入れてくれ、無意識のうちに心身に影響を与えている。被災地の復興にあたっても、安全や効率を求めるだけではなく、吟味した構造や材質にしてもらいたいと思う。

 木といえば年輪。年輪といえば、ねんりんピックがある。今年は10月15日~18日の4日間、熊本県での開催。全国から選手役員2万人が参加する高齢者の大イベント。県内各地でラグビーやなぎなた、俳句、将棋などが競われる。姉妹紙の「ねんりんピック新聞」の取材でお会いする選手のみなさんは、日頃の鍛錬ぶりを思う存分発揮しようと張り切っておられた。お一人おひとり、年輪のように刻まれた人生の喜怒哀楽を語っていただいている。地域包括ケアの「予防」の実践者、地域では社会参加の先頭と切って走っておられる。被災地域もこうした地域をよく知る方々が軸になり、復興が進められることが基本だろう。

 【写真】ウッドデッキの仮設住宅(本紙撮影)

 (シルバー産業新聞2011年9月10日号)

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