生き活きケア
生き活きケア 医療法人社団オレンジ(福井市)

在宅医療から、つながる地域資源づくりへ
医療法人社団オレンジ(福井市、紅谷浩之理事長)の立上げは2011年、福井県で初となる24時間・365日の在宅専門クリニックの開業にはじまる。「豊かな暮らしを支える」理念から、医療的ケア児の通いの場、地域の誰もが利用できるカフェ、フィットネスジムなど、医療機能以外の資源開発にも着手。フレイル・介護予防で重要視される孤立解消へ、住民どうしのつながる場を創出している。
紅谷理事長は県内の医療過疎地・嶺南地域で4年半の間、地域医療に携わってきた。「田舎だと1人の医師が外来、在宅、健診、施設訪問まで行うのは普通。他方、福井市に戻ると、これらは複数の医療機関で分業されている。しかしその中で、在宅医療だけが抜け落ちていた」。11年に医師2人で、24時間体制の「オレンジホームケアクリニック」を開業した。
開業時から取り組んだのは、地域の多職種との勉強会。ケアマネジャーや訪問看護師、医療ソーシャルワーカーなどと顔の見える関係を築き、在宅患者の紹介につなげてきた。「今まで、訪問看護師は在宅療養で困ったことがあっても、病院の医師とはすぐに相談できる距離感ではなかった。医療ソーシャルワーカーも、退院患者が自宅を希望しているのに、施設を紹介せざるを得ないケースも多かったと聞いた。医師と対等に、気軽に話せる場を大変喜んでいただいた」(同氏)。
最初は施設入所待ちや、退院日数の都合でやむを得ず在宅医療を選択する、いわゆる「ネガティブ在宅医療」の患者が多かったと同氏。しかし、続けていくうちに「自分らしく暮らしたい」「入院はしたくない」とポジティブに在宅医療を選択する患者層が増え、ニーズの高さを実感した。
医学を超える成長環境
在宅医療で小児にも関わる中、12年には医療的ケア児の通いの場「オレンジキッズケアラボ」を開設。「自宅で閉じこもって医療を受けるだけでは成長を阻害する。『遊び』や『交流』を得る生活の場が必要だと考えた」と同氏は説明する。
単に預かるだけでなく、動物園や水遊びなど外出活動も。医学的所見では難しいとされていた、歩行や会話ができるようになった子もいる。「保育園、学童保育のイメージ。最終的にはここを卒業し、地域の保育園等に通えるようサポートを行う」(同氏)。
「患者」で固定しない
「在宅医療を続けるうちに、重度化するもっと手前で予防的に関わりたいという気持ちが強くなった」と話す紅谷氏。16年には法人初の外来診療「つながるクリニック」を開業した。さらに6年後の22年には「つながるベース」としてカフェ、フィットネスジムを併設。年齢や病気の有無に関わらず、誰もが集まれる場所へと変貌させた。
ジム「ROOT×ROUTE」はトレーナー全員が理学療法士。一般的なジムと異なり、心筋梗塞や脳梗塞の人も利用する。クリニックの診断結果から運動メニューを組む人もいる。もう一つの違いは、最終的には自宅で運動習慣をつけ、ジムの卒業をめざすこと。トレーナーが自宅を訪問し、椅子など家にあるもので実践できる運動メニューを提案する。そのため、施設には専用マシンなどはあまり置いていない。
「みいつカフェ」は地域のつながりを作る場。スタッフが活発に声かけして暮らしの様子や趣味などを聞き、定期的に開催する趣味イベントなども案内する。「介護予防には栄養、運動とあわせて孤立解消が必須。店のある場所は新興住宅地やアパートが多く、親子で孤立している世帯もある。ママ友づくり、共通の趣味を楽しむ場にしていきたい」(同氏)。施設内には、趣味教室などに利用できるレンタルスペースも設ける。
こうした多機能拠点は、住民の生活の力を引き出すきっかけにも。例えば敷地内で園芸などを楽しむ「庭くらぶ」は、普段は外来患者として、またカフェやジムの利用客として訪れる高齢者が、この日ばかりは同法人の若手職員へ庭仕事を教える「先生」として活躍する。
こうした活動の集大成の一つ、秋祭りは一昨年より開催。趣味教室の人たち、またオンライン診療で関わる無医地区の人たちも名産品を出店する。何より、地元で長く暮らす住民ですら驚くほど、多くの人で賑わうそうだ。
同氏は「患者、利用者で固定化しないこと。地域の人たちに役割を提供し、エンパワーメントする。将来的に介護予防につながる」と強調。「高齢化とともに、治す医学モデルは難しくなる。病院で検査を受けても孤独感は分からない。病気と付き合いながら、暮らしを支える地域医療を体現していきたい」と語った。
紅谷理事長は県内の医療過疎地・嶺南地域で4年半の間、地域医療に携わってきた。「田舎だと1人の医師が外来、在宅、健診、施設訪問まで行うのは普通。他方、福井市に戻ると、これらは複数の医療機関で分業されている。しかしその中で、在宅医療だけが抜け落ちていた」。11年に医師2人で、24時間体制の「オレンジホームケアクリニック」を開業した。
開業時から取り組んだのは、地域の多職種との勉強会。ケアマネジャーや訪問看護師、医療ソーシャルワーカーなどと顔の見える関係を築き、在宅患者の紹介につなげてきた。「今まで、訪問看護師は在宅療養で困ったことがあっても、病院の医師とはすぐに相談できる距離感ではなかった。医療ソーシャルワーカーも、退院患者が自宅を希望しているのに、施設を紹介せざるを得ないケースも多かったと聞いた。医師と対等に、気軽に話せる場を大変喜んでいただいた」(同氏)。
最初は施設入所待ちや、退院日数の都合でやむを得ず在宅医療を選択する、いわゆる「ネガティブ在宅医療」の患者が多かったと同氏。しかし、続けていくうちに「自分らしく暮らしたい」「入院はしたくない」とポジティブに在宅医療を選択する患者層が増え、ニーズの高さを実感した。
医学を超える成長環境
在宅医療で小児にも関わる中、12年には医療的ケア児の通いの場「オレンジキッズケアラボ」を開設。「自宅で閉じこもって医療を受けるだけでは成長を阻害する。『遊び』や『交流』を得る生活の場が必要だと考えた」と同氏は説明する。
単に預かるだけでなく、動物園や水遊びなど外出活動も。医学的所見では難しいとされていた、歩行や会話ができるようになった子もいる。「保育園、学童保育のイメージ。最終的にはここを卒業し、地域の保育園等に通えるようサポートを行う」(同氏)。
「患者」で固定しない
「在宅医療を続けるうちに、重度化するもっと手前で予防的に関わりたいという気持ちが強くなった」と話す紅谷氏。16年には法人初の外来診療「つながるクリニック」を開業した。さらに6年後の22年には「つながるベース」としてカフェ、フィットネスジムを併設。年齢や病気の有無に関わらず、誰もが集まれる場所へと変貌させた。
ジム「ROOT×ROUTE」はトレーナー全員が理学療法士。一般的なジムと異なり、心筋梗塞や脳梗塞の人も利用する。クリニックの診断結果から運動メニューを組む人もいる。もう一つの違いは、最終的には自宅で運動習慣をつけ、ジムの卒業をめざすこと。トレーナーが自宅を訪問し、椅子など家にあるもので実践できる運動メニューを提案する。そのため、施設には専用マシンなどはあまり置いていない。
「みいつカフェ」は地域のつながりを作る場。スタッフが活発に声かけして暮らしの様子や趣味などを聞き、定期的に開催する趣味イベントなども案内する。「介護予防には栄養、運動とあわせて孤立解消が必須。店のある場所は新興住宅地やアパートが多く、親子で孤立している世帯もある。ママ友づくり、共通の趣味を楽しむ場にしていきたい」(同氏)。施設内には、趣味教室などに利用できるレンタルスペースも設ける。
こうした多機能拠点は、住民の生活の力を引き出すきっかけにも。例えば敷地内で園芸などを楽しむ「庭くらぶ」は、普段は外来患者として、またカフェやジムの利用客として訪れる高齢者が、この日ばかりは同法人の若手職員へ庭仕事を教える「先生」として活躍する。
こうした活動の集大成の一つ、秋祭りは一昨年より開催。趣味教室の人たち、またオンライン診療で関わる無医地区の人たちも名産品を出店する。何より、地元で長く暮らす住民ですら驚くほど、多くの人で賑わうそうだ。
同氏は「患者、利用者で固定化しないこと。地域の人たちに役割を提供し、エンパワーメントする。将来的に介護予防につながる」と強調。「高齢化とともに、治す医学モデルは難しくなる。病院で検査を受けても孤独感は分からない。病気と付き合いながら、暮らしを支える地域医療を体現していきたい」と語った。
