ニュース

老施協大会 高齢者の暮らしと介護を守るために声を上げる <介護施設系団体 全国大会のみどころ>

老施協大会 高齢者の暮らしと介護を守るために声を上げる <介護施設系団体 全国大会のみどころ>

 介護業界の経営は、いま非常に厳しい局面を迎えている。事業を継続するためには、安定した雇用と給与体系を確立しなければならない。諸物価が高騰する一方で、私たちの業界では値上げがほとんどできず、人件費は上昇を続けている。このままでは持続可能な経営が難しい。いまこそ戦わなければならない時だ。2040年問題を見据え、高齢者の暮らしや介護を守るために、声を上げるべき時だということを山口大会で発信したい。

 近年は人手不足が深刻化し、教育やケアの質のさらなる向上が難しくなっている。残念ながら、高みを目指すよりも現状維持に精一杯という施設も少なくない。介護業界は下を向いて歩いている。

 本大会では、2000年の介護保険制度創設時に抱いた志を思い出し、もう一度上を向いて歩むべく、業界全体のモチベーションを高めていきたい。

介護は「なくならない仕事」

 AI等の発達により「消える職業」が話題になる一方で、介護の仕事は「なくならない仕事」として上位に挙げられている。AIや機械では、人に寄り添うケアを完全に代替することはできない。人生の最期に、「生きていてよかった」と思ってもらえるために私たちもスキルアップしていく必要がある。

 また、女性活躍の推進にも力を入れたい。そもそも介護は女性の力なくして成り立たない。大山会長が全国老施協で初めての女性会長ということもあるが、女性の活躍の場をさらに広げていきたいとの思いを込めたプログラムも用意している。

現地参加で志の共有を

 分科会や特別報告では、外国人雇用や看取りなど、現場が直面する重要課題を扱う。老施協の大きなテーマとして、「人生の最後までその人らしく生きられる社会の実現」がある。人手不足が続くが機械化やAIに頼るばかりではなく、一人ひとりが学び続ける姿勢が欠かせない。

 コロナ禍以降、学びの機会がオンライン化し、現地で「集まって学ぶ」ことがおろそかになってきた。しかし、対面で学ぶことには、知識の習得だけでなく、同じ志を持つ仲間と気持ちを共有し、高め合うという大きな意義がある。知識だけで全てが解決するわけではない。最初に強い気持ちがないと、介護という仕事はできない。現地にはぜひ多くの方に足を運んでほしい。

外国人雇用は国際交流のチャンス

 介護職の平均月収は全産業平均より8万3000円低く、人材確保は難しい。円安の影響もあり、外国人も日本を選びにくくなっているが、事業継続のためには、外国人職員の活躍が鍵となる。

 一方で、外国人雇用は、国際交流の重要な機会でもある。かつて日本は多くの国民を移民として海外に送り出した国だ。しかし今の日本は移民受け入れについては閉鎖的だ。技能実習や特定技能といった制度を国際交流のチャンスととらえ、いまこそ広い心で、外国の人たちの受入れを考えるときだ。

死にしっかりと向き合う

 看取りも欠かせないテーマだ。日本では老衰による死が十分に受け入れられていない。人生の最終段階で医療やケアの方針を話し合う「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」に加え、「どう生ききるか」を考える「ALP(アドバンス・リビング・プラン)」の視点も必要だ。死を考えることは、生きることを考えることでもある。人生の最後に「良い人生だった」と言えるような最期を迎えてもらうために、介護職員は学び続けなければならない。

 医療費について、国民一人あたりの年間平均医療費は約33万円。しかし85歳を超えると100万円を上回る。延命のために投じられる莫大な費用は、果たして本人の望む姿なのか。延命と「その人らしい最期」を支える社会の仕組みについても重要なテーマだと考えている。
(シルバー産業新聞2025年11月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル