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介護テクノロジー活用最前線② 患者情報を医療、介護、在宅で連携・活用

介護テクノロジー活用最前線② 患者情報を医療、介護、在宅で連携・活用

 社会医療法人三愛会(大分市、三島康典理事長)は医療機関「大分三愛メディカルセンター」(190床=一般病床114床/高度治療室4床/地域包括ケア病棟44床/回復期リハ病棟28床)を中心に、診療所や介護保険サービスも幅広く展開する。高齢者では脳血管障害や大腿骨頸部骨折などの急性期から、在宅復帰後の生活維持まで一気通貫に支援するため、ICT活用にも前向きだ。

 三愛会グループは見守りセンサーやICT機器を活用し、得られたデータ活用により職員の職場環境改善や利用者の在宅復帰、在宅生活維持を一貫して実現することを目指す。

 同法人の情報システム課・笠木英行課長は大手IT企業の営業担当の経歴があり、ICT活用の第一人者でもある。

 病床や介護施設では、一般に入院患者や入所者との対話はナースコールを前提としているが、同氏はこれを「余程のことがない限りコールすることをためらう人も一定数おり、認知症の人もコールが後手に回る。テクノロジー活用によるDXを考えたとき、患者・入所者が主体的にボタンを押すのではなく、異変を察知し、先回りして能動的にケアすることが求められるという考えだ」と述べる。

 特に介護施設などでは見守りセンサーを中心に導入が進んでいるが、転倒や離床などのリアルタイムの通知・遠隔確認にとどまらず、蓄積した各人のデータ活用でより良いケアを実現することが次のトレンドになっている。

AI活用で先回りのリスク対応

 同法人ではエコナビスタの「ライフリズムナビ+Dr.」を使用。蓄積したデータ解析により、眠りの深さから排泄のタイミングを把握できるほか、AI解析により▽睡眠時間の大きな変化▽疲労回復度・快眠指数・快適環境指数に大きな変化▽昼夜逆転傾向や転倒事故後の急変リスクの高まり――など特定のリスク要因を捉え、注視すべき患者・入所者をピックアップする機能が特長。リスクに先回りした個別ケアの実践を助ける。

 同法人の購買責任者・半澤浩太主任は「法人グループの社会福祉法人(特養)などでは全床で導入し時間創出ができた。人材採用でも、働く人に負担の少ない職場であるということで、これまで以上に注目を集めるようになった」と話す。

 のつはる診療所(大分市)の師長・津野聖香氏は「導入した2025年4月以前は、骨折事故などインシデントレベル3a・3bの重大事故が発生することもあったが、現在では無くなった。当初、医療機関での導入が少ないという懸念はあったが、導入半年で効果が見られた」と説明する。

一気通貫して見守るためのSaaS型システム

 笠木氏は「同システムがSaaS型(インターネットを通じてクラウドに情報を上げる)であることにも拡張性・将来性を感じている。大分三愛メディカルセンターを中心に、医療機関や介護事業所など市内12事業所を展開しているが、各所からの情報を集約・解析しやすく、法人本部からの指示・伝達が滞りなくできることは魅力だ」。

 さらに「システムがカルテ系・業務系・介護系など情報が連結されているので、急性期医療から、リハビリテーション(老健)、在宅介護サービスで患者を一気通貫で支えていく上で有用性が極めて高い」とSaaS型のシステムの優位性を説明する。
左より半澤主任、笠木課長、 津野師長

左より半澤主任、笠木課長、 津野師長

 国は「医療DXの推進に関する工程表」(23年6月2日医療DX推進本部決定)に基づき①全国医療情報プラットフォームの創設②電子カルテ情報の標準化等③診療報酬改定DX――を3本柱として取組を進めており、同法人グループ、エコナビスタの取組はこうした将来を見据えた取り組みと言える。

 「ライフリズムナビ+Dr.」はTAISシステム(テクノエイド協会)の「貸与マーク」を取得しており、要介護認定を受ければ介護保険福祉用具貸与としてレンタル利用も可。
(シルバー産業新聞2025年11月10日号)

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