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高知県の介護保険 中山間地域のサービス提供に補助金3700万円
高知県の高齢者人口は、昨年10月時点で約24万人、高齢化率は36.6%と秋田県に次いで2番目に高い。2020年の国勢調査では、高齢単身世帯の割合が17.8%に上り全国1位。高齢者人口は、同年をピークに減少しているが、総人口も減少しており、高齢化率は2040年頃にかけて増加が見込まれている。
今年5月末の要介護・要支援者数が約4.7万人。そのうち、居宅サービスの利用者はおよそ半数の2万2900人を占め、グループホームや特定施設といった居住系サービスが4300人、特養や老健などの施設サービスの利用者が7800人となっている。もともと高知県は、施設サービスの利用率が全国平均より高く、居宅サービスの利用率が、北海道に次いで2番目に低い状況にある。
今期の介護保険事業支援計画では、県民が住み慣れた地域で安心して健やかに暮らし続けることが目標に掲げられている。
県では中山間地域が多く、利用者が点在して居住。そのような地域では、サービス提供効率が悪く、経営面でも不利で新規事業者が参入しづらい。介護職員の確保も非常に厳しい状況にあり、訪問介護は昨年度、県内で16カ所の事業所が廃止した。利用者に必要な介護サービスが行き届かないことが危惧されている。
今期の介護保険事業支援計画では、県民が住み慣れた地域で安心して健やかに暮らし続けることが目標に掲げられている。
県では中山間地域が多く、利用者が点在して居住。そのような地域では、サービス提供効率が悪く、経営面でも不利で新規事業者が参入しづらい。介護職員の確保も非常に厳しい状況にあり、訪問介護は昨年度、県内で16カ所の事業所が廃止した。利用者に必要な介護サービスが行き届かないことが危惧されている。
移動時間に応じた補助金で報酬上乗せ
中山間地域における介護サービス確保の対策として、県では、中山間地域介護サービス確保対策事業費補助金を実施している。11年度から、事業所が中山間地域等の特別地域加算対象地域の利用者に対してサービスを提供した場合、訪問・送迎にかかる移動時間に応じた基本報酬への上乗せ補助を行っている。
移動時間に応じて、片道20分以上60分未満は15%、60分以上は35%が報酬に加算される。今年度からは、移動時間片道75分以上の枠組みを創設し、加算率50%と補助のさらなる拡充を行った。
地区によっては訪問介護の事業所がない自治体もある。そのような場合、利用者の自宅での生活を維持するために、ケアマネジャーが遠方の事業所に頼み込んでサービス提供を依頼しているケースもある。自治体の中でサービスを賄いきれない場合は、自治体外の事業者の訪問が必要になるケースもあり、補助金が活用されている。23年度にも補助の拡充を行っており、居宅介護支援事業所を対象事業所に追加。訪問や送迎に伴う有料道路の利用料金や、通所系サービスで片道送迎を行う場合も対象に加えた。また、中山間地域に所在する事業者が新たに雇用する訪問介護員やケアマネジャーに対して、一時金や転居費用を支給した場合の費用を補助するなど手厚く支援している。
現在、県内34市町村のうち22市町村が補助金を活用。基本的には県の予算で実施しており、昨年度は約3700万円の実績がある。
移動時間に応じて、片道20分以上60分未満は15%、60分以上は35%が報酬に加算される。今年度からは、移動時間片道75分以上の枠組みを創設し、加算率50%と補助のさらなる拡充を行った。
地区によっては訪問介護の事業所がない自治体もある。そのような場合、利用者の自宅での生活を維持するために、ケアマネジャーが遠方の事業所に頼み込んでサービス提供を依頼しているケースもある。自治体の中でサービスを賄いきれない場合は、自治体外の事業者の訪問が必要になるケースもあり、補助金が活用されている。23年度にも補助の拡充を行っており、居宅介護支援事業所を対象事業所に追加。訪問や送迎に伴う有料道路の利用料金や、通所系サービスで片道送迎を行う場合も対象に加えた。また、中山間地域に所在する事業者が新たに雇用する訪問介護員やケアマネジャーに対して、一時金や転居費用を支給した場合の費用を補助するなど手厚く支援している。
現在、県内34市町村のうち22市町村が補助金を活用。基本的には県の予算で実施しており、昨年度は約3700万円の実績がある。
外国人人材確保を後押し
人材確保の点からは、外国人介護人材の確保も重要となっている。県では国の補助制度を活用し、外国人材の日本語学習支援や、海外現地での人材獲得活動に取り組む事業者への助成を行っている。
訪問介護事業所では、いきなり外国人材を受け入れるのは現実的に難しい面があるが、同一法人内で施設部門を経験した職員が、将来的に訪問介護へ移る可能性はあるとみている。
訪問介護事業所では、いきなり外国人材を受け入れるのは現実的に難しい面があるが、同一法人内で施設部門を経験した職員が、将来的に訪問介護へ移る可能性はあるとみている。
住民が支え合うフレイル予防を目指す
住み慣れた地域で生活を続けるためには、要介護状態にならないことが重要であり、そのためにフレイル対策が欠かせない。
例えば、仁淀川(によどがわ)町などは「口腔・栄養」「運動」「社会参加」の三つの柱でアプローチする東大方式を採用するなど、全国的にも先進的な取り組みを実施。県は、昨年全国的に立ち上げられたフレイル予防推進会議にも参画し、得られた知見や好事例を県内全域に展開することを計画している。住民同士が体力測定などのフレイルチェックを行い、声掛けや仲間づくりの輪が広がり、フレイル予防を通じて住民が元気を取り戻すことで、口コミなどで地域全体の活動としての普及を目指している。
県内には、年齢・障がいの有無にかかわらず、誰もが気軽に集える場として、55カ所の「あったかふれあいセンター」が整備されている。中山間地域もカバーするため、拠点のほかにもサテライト施設がある。
市町村が設置し、集会や話し合いの場となるなど、社会参加の促進に活用されている。拠点によっては、地域の見守り訪問やスタッフが体操やレクリエーションなどのプログラムを実施する。花見などの行事を企画することもあり、介護予防に資する取り組みがなされている。
例えば、仁淀川(によどがわ)町などは「口腔・栄養」「運動」「社会参加」の三つの柱でアプローチする東大方式を採用するなど、全国的にも先進的な取り組みを実施。県は、昨年全国的に立ち上げられたフレイル予防推進会議にも参画し、得られた知見や好事例を県内全域に展開することを計画している。住民同士が体力測定などのフレイルチェックを行い、声掛けや仲間づくりの輪が広がり、フレイル予防を通じて住民が元気を取り戻すことで、口コミなどで地域全体の活動としての普及を目指している。
県内には、年齢・障がいの有無にかかわらず、誰もが気軽に集える場として、55カ所の「あったかふれあいセンター」が整備されている。中山間地域もカバーするため、拠点のほかにもサテライト施設がある。
市町村が設置し、集会や話し合いの場となるなど、社会参加の促進に活用されている。拠点によっては、地域の見守り訪問やスタッフが体操やレクリエーションなどのプログラムを実施する。花見などの行事を企画することもあり、介護予防に資する取り組みがなされている。
通所Cで進める介護予防
短期集中予防サービスの通所型Cでは、フレイルやその予備軍の人を対象に健康指導を実施し、元気な状態に戻す事を目指す。「バス停まで行けなくなった人が、歩いて行けるようになる」といった、個人ごとのプログラムや目標設定をして取り組む。リハビリ専門職のアドバイスが必須で、県ではリハ職3団体と連携し、地域活動を行うリハ職の育成に補助金を支給している。また、育成したリハ職が現場に出向いてアドバイスできるような仕組み作りを行っている。
一方で、状態が改善した後、どのように生活を維持していくのかが、受け皿となる体制作りを含めて課題となっている。
住民主体のフレイル予防の活動と連携し、地域で支え合いながらモチベーションを維持できる仕組み作りを目指している。
一方で、状態が改善した後、どのように生活を維持していくのかが、受け皿となる体制作りを含めて課題となっている。
住民主体のフレイル予防の活動と連携し、地域で支え合いながらモチベーションを維持できる仕組み作りを目指している。
ノーリフティングケアを積極的に推進
県は、日本でも有数のノーリフティングケア先進地域であり、現場では高いレベルでの実践が進む。
介護テクノロジー補助金の対象としてリフトを指定しており、ナチュラルハートフルケアネットワークに事業を委託。ノーリフティングケアの普及啓発や組織としてノーリフティングケアを推進していくためのリーダー養成研修を実施している。年1回、優れた取り組みを表彰し、県内での普及を目指している。結果として、入所系施設では、リフトなどの福祉用具導入が進んでおり、介護テクノロジー補助金の中でも、見守り機器に次いでリフトの申請が多い。
リフトは今年度からテクノエイド協会のTAIS「介護テクノロジー」に掲載され、国の補助金対象として正式に認められた。しかし県ではそれ以前から独自の補助制度を設け、リフト導入を支援してきた経緯がある。昨年度までは「1事業所あたり補助上限60万円」「補助率2分の1」とし、リフトに限らず、高さ調整が可能なベッドや移乗しやすい車いす、摩擦を軽減するグローブ・ボード・シートなど、ノーリフティングケアに資する福祉用具の導入を幅広く支援してきた。
リフトについては、今年度からは介護テクノロジー補助金に移行。より事業者にとって有利な制度設計となっており、さらなる職場環境改善と生産性向上への支援を進めている。
(シルバー産業新聞2025年11月10日号)
介護テクノロジー補助金の対象としてリフトを指定しており、ナチュラルハートフルケアネットワークに事業を委託。ノーリフティングケアの普及啓発や組織としてノーリフティングケアを推進していくためのリーダー養成研修を実施している。年1回、優れた取り組みを表彰し、県内での普及を目指している。結果として、入所系施設では、リフトなどの福祉用具導入が進んでおり、介護テクノロジー補助金の中でも、見守り機器に次いでリフトの申請が多い。
リフトは今年度からテクノエイド協会のTAIS「介護テクノロジー」に掲載され、国の補助金対象として正式に認められた。しかし県ではそれ以前から独自の補助制度を設け、リフト導入を支援してきた経緯がある。昨年度までは「1事業所あたり補助上限60万円」「補助率2分の1」とし、リフトに限らず、高さ調整が可能なベッドや移乗しやすい車いす、摩擦を軽減するグローブ・ボード・シートなど、ノーリフティングケアに資する福祉用具の導入を幅広く支援してきた。
リフトについては、今年度からは介護テクノロジー補助金に移行。より事業者にとって有利な制度設計となっており、さらなる職場環境改善と生産性向上への支援を進めている。
(シルバー産業新聞2025年11月10日号)



