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障がい者雇用で高いアドバンテージもつ福祉施設・事業所/中山清司(連載145)

障がい者雇用で高いアドバンテージもつ福祉施設・事業所/中山清司(連載145)

 前回の記事で、「筆者の試算によると、障がい福祉サービス事業における障がい者雇用のポテンシャルは、常勤換算で6万人以上になる」と書いたが、改めて精査したところ表のようになった。表の通り、障害者支援施設及び障害福祉サービス事業所等の常勤換算従事者数の総合計は約60万人である。

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 そのため、障がい者雇用における法定雇用率2.2% の数は約1万3200人ということになる。お詫びして訂正させていただく。

 前回の記事にも書いた通り、筆者は常々、「障害福祉サービス事業所における、発達障害をはじめ障がいのある人たちの雇用について」関心を寄せてきた。そこには、「障がい者を支援する施設や事業所だからこそ、障がい者雇用にも積極的にあるべきではないか」という思いと、「日頃から障がい者を支援している施設や事業所であれば、障がい特性に配慮することができ、障がい者雇用もうまくいくのではないか」という期待があった。

 残念ながら、福祉サービス事業所等での障がい者雇用に関する統計は見当たらなかったのだが、筆者の感覚では、他の業界に比べ障がい者雇用が進んでいるようには思われない。筆者が直接かかわった事例で言うと、福祉サービス事業所等で発達障がいの人たちの現場実習をしてもらうことが何度かあったのだが、周囲の現場スタッフからは「(障がい特性があるとしても)一般のスタッフと同じように働いてもらわないと困る」という反応が多く、そこに壁があるように思われる。

 施設や福祉サービス事業所にあって、障がいのある人たちはいつも支援を受ける立場にあり、支援を提供する側あるいは運営を担う側で受け入れてきた経験は皆無であろう。しかしながら、今後、障がいのある人も様々な形で働くことを目指す時代にあって、施設や福祉サービス事業所が障がい者雇用のトレンドから置いていってしまわれることを危惧しなければならない。

 障がい者雇用において、施設や福祉サービス事業所は、障がいのある人たちと常に関われていることがメリットになる。障がい特性の理解、支援の実践、本人・家族のニードの把握、就労支援関係制度の活用などで、他の業界よりも格段にアドバンテージがあるのだ。あとは、実践を蓄積していけばいい。障がいのある人の働く場・雇用の場として、施設や福祉サービス事業所を見直していきたい。
 中山清司(特定非営利活動法人 自閉症eサービス理事長)

(シルバー産業新聞2019年5月10日号)

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