現場最前線の今

人材確保にすぐできる3つの対策/中山清司(連載142)

人材確保にすぐできる3つの対策/中山清司(連載142)

 人材確保の観点から、障害福祉サービス従事者をとりまく状況は、次のようにまとめられる。

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 人材確保の観点から、障害福祉サービス従事者をとりまく状況は、次のようにまとめられる。

 少子高齢化が加速し、我が国は労働人口全体が減るトレンドにあり、どの業種・業界も人手不足が顕著になってきている。今後、業種・業界をまたいだ人材確保の競争はますます激しくなるだろう。

 一方、障害福祉サービスは国から利用単価が一律に決められているため、どこの福祉サービス事業所もこれ以上大幅に事業収入を増やすことは制度上できない。その結果、事業支出の多くを占める人件費、つまりスタッフの給与待遇は、どの事業所も同じような水準にならざるを得ない。そして、現状の利用単価では、障害福祉サービス事業所は他の業種・業界と比較して、スタッフの給与待遇面で大きな格差が生じている。そういうことで、福祉サービスの現場で働く正職・常勤スタッフの確保はますます厳しくなると予想される。

 このような構図は、高齢者の介護現場や保育所でも同じだ。抜本的な解決には、国が決める利用単価や加算を大幅にアップさせるか、国の規制を緩和させるなどの制度改革が望まれる。現場最前線にいる筆者の感触では、現行の制度のままだと、障害福祉サービス業界の人手不足は今後も相当悲観的で、実際に人手不足が要因で閉所・廃業する事業所などが増えるのではないかと危惧している。

 障害福祉サービスにおける人手不足・人材確保の困難さに、今すぐ事業所レベルでできる対策として、筆者は大きく3つあると思っている。

 1つは、各事業所の魅力や内実を、積極的に外部に開示・アピールするとともに、さまざまな場面で人材が出入りできるようアクセシビリティを高めることだ。そうすることで、興味関心を持つ人材が現れる可能性が高まるだろう。各事業所を比較しても、先述したように給与待遇面では横並びなので、給与待遇面とは別のところでやりがいや働きやすさをアピールしたいところだ。

 最近は、紙媒体のパンフレットにとどまらず、ホームページやSNSなどの情報発信も容易になってきた。ただパンフレットの画像をホームページに貼り付けるだけでなく、障がいのある利用者とそれを支えるスタッフが生き生きと活動している様子をアップデートしていきたい。また、家族をはじめ、近隣の方々や学生、関連業者の出入りを活発にさせて、人脈を広げていく。福祉施設では昔からバザーやお祭りを企画・開催しているところが多いが、そのスタイルにとらわれず、学生インターンを積極的に受け入れたり、勉強会や見学会を関係機関と共催したりするなどのアイデアも考えられる。

 2つ目は、正職・常勤の雇用形態に縛られず、パートタイムスタッフを積極的に現場に受け入れ、再雇用制度やフレックス勤務などを導入し、誰もが働きやすい職場環境を整えていくことだ。実際、最近の障害福祉サービスの事業所には、主婦や高齢者がかなりの比率で働いている。彼らを補助のスタッフと位置付けるのではなく、メインスタッフとしてチームでの役割を果たしてもらい、活躍の場を広げ専門性を高めるようにしていきたい。国も提唱する同一労働同一賃金を先取りして、多様なスタッフが働けるようにすることで人材不足を補い、業務の効率化を目指す。

 そして3つ目の対策は、事業所運営・経営に当事者に積極的に参画してもらうことだ。筆者の場合は、自閉症・発達障がいの人たちの支援が中心だが、彼らの秀でたスキルや感性、あるいは真面目さや律義さを活かして、福祉サービス事業にかかわってほしいと思っている。実際には、福祉サービス事業所が障がい者雇用をするやり方が多いが、それ以外にも、ホームワークでパソコン入力や教材作成をしてもらったり、事業所が休みのときに清掃チームとして入ってもらうなども考えられるだろう。(つづく

中山清司(特定非営利活動法人 自閉症eサービス理事長)

(シルバー産業新聞2019年2月10日号)

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