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結婚の見通しが立てづらい 福祉現場スタッフ/中山清司(連載141)

結婚の見通しが立てづらい 福祉現場スタッフ/中山清司(連載141)

 少子高齢化のトレンドの中、福祉サービスの人材確保はますます困難になってきている。

 国は「処遇改善加算」という制度を設けて、福祉現場で働く現場スタッフへの待遇改善をはかっているところだ。しかしながら前回も触れたとおり、その加算額を含めても常勤職の平均月額給与は31万円、年収換算で370万円程度だ。この数字には、賞与や手当も含まれているので、基本給は月額25万円程度と考えてよいだろう。そこから社会保険等が控除されるわけで、手取りはさらに下がる。

 民間労働者全体の平均年収は420万円なので、福祉現場で働くスタッフとは年50万円程度の格差が生じている。さらに言えば、民間労働者のうち男性のみだと年510万円程度だという。つまり福祉現場の男性スタッフは、民間労働者全体と比較して、年140万円(月にして10万円以上!)も及ばない。

 この給与水準の現実を見れば、福祉現場に人が集まらない、特に男性スタッフがいない事情は一目瞭然ではないだろうか。

 年収の問題を少し別な視点からも検討してみよう。多くの統計データが年収と未婚率との相関関係を指摘している。2015年の「国勢調査」によると、30~34歳男性の未婚率は47.1%、35~39歳の未婚率は35.0% である。つまり、働き盛りの30代男性の半分は未婚である(グラフ)。

 その30代男性の中でも、年収300万円未満だと実は未婚率9割以上、年収300~400 万円で未婚率7割程度になり、年収が上がると未婚率は下がる(つまり結婚率が上がる)という、直線的な傾向が見られる(「年収ガイド」https://www.nenshuu.net/)。

 「年収ガイド」のコメント欄では、次のように総括されている。「男性の場合は年収300万円以上がひとつの大きなボーダーラインとなっています。300万円以上であれば、結婚率が30%程度になりますが、300万円未満の場合は結婚率が一桁台まで大きく減少します。将来を考えた場合、年収300万円未満では結婚に踏み切ることができないという事なのでしょう」。

 障害福祉サービスの話に戻れば、現場第一線にいるはずの若い男性スタッフたちの年収は他業種と比べかなり低い状態にあり、結婚の見通しは立たず将来設計を思い描くことができないでいる。そうであれば、就職をあきらめ、転職を考えるのもやむを得ないのではないだろうか。いくら志を高く福祉現場で働きたいと思っていたとしても、現場スタッフたちの経済合理性の現実を私たちは直視しなければならない。
 中山清司(特定非営利活動法人 自閉症eサービス理事長)

(シルバー産業新聞2019年1月10日号)

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