現場最前線の今

現場最前線の今224 「中核的人材」と「広域的支援人材」を配置へ

 激しい自傷や破壊・他害行為、奇声をあげる、睡眠障がい(夜中もずっと起きて室内や廊下を徘徊するなど)、特定のものや位置などへの強度のこだわり、異食がある(服の糸や植木の枝を食べてしまうなど)等、強度行動障害の状態を示す自閉症や知的障がいの人の支援として、国・厚生労働省は近年「中核的人材」と「広域的支援人材」を各地に配置することで対応しようと考えている。

 2022年11月から23年3月にかけて計8回開催された「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」とその報告書が、現在の国・厚労省の基本的な指針となっている。

 本報告書で正式に位置づけられた中核的人材とは、「強度行動障害支援者養成研修(基礎・実践)により育成される人材に加えて、同研修で学ぶ標準的な支援を踏まえて現場において適切な支援を実施し、組織の中で適切な指導助言ができる人材」であり、「強度行動障害を有する者を支援する事業所に1人以上の配置を想定」と明記されている。

 また、広域的支援人材とは、「強度行動障害を有する者への支援を行っている事業所に対して、個別事案を含めた支援に関する指導助言等を行うなど、地域の事業所を支え、その対応力を強化するとともに、地域の支援体制づくりを牽引する、地域の強度行動障害を有する者への支援における中心的な役割を果たすことが求められる」とのことで、「都道府県等の広域で必要数を想定」している。

 筆者は検討会メンバーの関係者として意見表明をする機会をいただき、本報告書発表後に始まった国立のぞみの園が主催する中核的人材養成研修のプログラムディレクターを務めて、現在に至っている。

 中核的人材の養成と支援現場への本格配置は、強度行動障害支援の半世紀にわたるわが国の取り組みの中で、ある意味、エポックメーキングになることだろう。これまでは個々の専門家・研究者の間で語られてきた支援技法や、各地で取り組まれた個別事案のケーススタディが点在していた状況から、これからは全国レベルで「標準的な支援」に方法論が統合され、広く支援現場で共有されることになるのだ。

 支援現場において中核的人材に求められることは、強度行動障害のある人の行動上の課題を具体的に解決していくことに他ならない。一個人が一ケースを扱って、何がしかの改善が見られたという取り組みではなく、今後は、当事者の行動上の課題には中核的人材が中心となってチームで即座に問題解決に動き出すことを期待されている。その意味で、中核的人材は、支援チームが機能するための現場リーダーの役割を果たす。

 一方、広域的支援人材は、いわゆるコンサルタントとして中核的人材を含む支援チームにコンサルテーションをおこない、より機能的に現場実践がはかれるようバックアップする役割となる。

 広域的支援人材の登録と実際の活動は、現時点ではまだ各都道県単位で準備している段階だ。

 本検討会でも話題になったが、4日間の座学中心の強度行動障害養成研修は確かに知識やアイデアを学ぶ/知ることはできるが、それだけで強度行動障害の「標準的な支援」を実施/実践することは難しい、というのが関係者間の共通認識にあった。

 座学で講師の話を聞き受講生同士で話し合ったりする従来の研修スタイルでは、現場実践につながらない。
 この冷徹な事実認識に立って、現在、私たちが取り組んでいる中核的人材養成研修では、オンサイトの現場実践とオフサイトの研修会を一体的に運用する新たな研修スタイルを構築している。(続く)

(シルバー産業新聞2025年12月10日号)

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