未来のケアマネジャー

未来のケアマネジャー89 タイムスタディ調査から見る「働き方」の変遷

未来のケアマネジャー89 タイムスタディ調査から見る「働き方」の変遷

 今年度はいよいよ報酬改定に関する議論が行われる。近年の政策検討にはエビデンスが欠かせない。厚生労働省は報酬改定ごとに影響調査を行ってきた。2025年度にも、居宅介護支援事業所の24年度報酬改定後の実態を全国調査した。同年に行ったのは、アンケート調査とタイムスタディの二つの調査である。その結果が4月に公表された。

 アンケート調査の報告書は500頁、タイムスタディは約300頁、合計800頁に及ぶ。本号ではその中から、主だった点をピックアップして紹介する。これを頭に入れておくことで、これから始まる国の報酬改定の議論が理解しやすくなる。

労働投入時間の経年推移と現状

 居宅介護支援事業所のケアマネジャーの労働時間は、介護保険制度の改正や現場環境の変化を色濃く反映している。25年度に実施されたタイムスタディ調査の結果によると、ケアマネジャー1人あたりの1カ月間の合計労働投入時間は、平均170.8時間であった。過年度の調査結果と比較すると、(表1)のとおり推移している。調査実施月や調査期間は年度により異なることから、単純な比較には慎重な判断を要するが、依然として高い労働負荷が継続している実態が浮き彫りとなった。

業務構造の分析―書類作成が占める大きな比重

 労働時間の内訳を大分類で見ると、直接的な支援に関わる「①ケアマネジメント業務」が124.3時間(構成比72.8%)、事務作業等の「②区別のない業務」が41.8時間(同24.5%)となっている。とりわけ①ケアマネジメント業務のうち「書類の作成(利用票、提供票、実績確認等)」は平均37.9時間で、全労働時間の約2割、ケアマネジメント業務時間の約3割に相当し、対面業務である「訪問・来所」の合計時間(42.8時間)に近い時間数であることがわかった。

利用者1人あたりの手間と要介護度

 利用者1人あたりにかける1カ月あたりの労働投入時間は平均150.6分。要介護度別の内訳は下表のとおりである(表2)。

 介護保険制度施行当初は介護度が高いほど手間がかかっていたが、認知症や独居など対象像の変化により、現在は要介護1から5の間で投入時間の差はわずかとなった。検討委員会では、「要介護4、5は施設入所が進み、在宅では状態が安定しているケースも多い一方、要介護1〜3は家族への対応や要望が多く、時間を要する」といった意見もあった。また、認定申請中の利用者は平均297.1分と突出しており支援初期の調整や書類作成の負担が大きいことがデータで裏付けられた。

ICT・AI活用の進展と業務効率化の兆し

 業務負荷の軽減策として期待されるICT導入については、84.2%の事業所で「PCの1人1台利用」が実現している。また、人工知能(AI)の利用目的は、「議事録作成(76.3%)」、「ケアプラン作成支援(61.8%)」が上位に挙がった。これは過去にない特徴である。

「シャドーワーク」と個別支援の複雑化

 介護保険制度の枠組みを超えた支援(いわゆるシャドーワーク)の実態では、金融機関への同行、入退院時の付き添い、家事支援などの「その他個別利用者への支援」を行った場合、利用者1人あたりの投入時間は平均342.1分に達し、支援がないケース(141.0分)の2倍以上に跳ね上がる。これらは独居高齢者の増加に伴い避けて通れない業務となりつつあるが、地域包括支援センターや行政、連携するチームや機関との共有や可能な限りの役割分担の整理が急務である。

 最新の調査結果から、ケアマネジャーの業務は、特に支援初期の調整の負荷、要介護度だけでは推し量れない個別性の高い複雑な支援の狭間に置かれていることが明らかになった。ICTやAIの活用による「事務の効率化」と、シャドーワークを含む「地域支援の役割分担」の最適化こそが、次期報酬改定に向けた議論の核心となるだろう。

(シルバー産業新聞2026年5月10日号)

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