千田透の時代を読む視点

「2025年問題」以降介護分野の問題点と解決策 :千田透

 団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年が幕を開けた。前号では2025年から40年にかけて想定される介護保険制度の課題を整理したが、本稿ではその解決策を考察したい。

 介護保険で解決しなければならない課題は多岐に渡るが、制度の存続にかかわるのが財源問題である。ご承知のように、国家予算の一般歳出に占める社会保障費の割合は、年々増加を続けており、24年度は一般歳出の56%を占めるまでになってきている。その中で特に費用の伸びが大きいのが、介護である。

 こうした状況に対し、介護保険部会では「給付と負担」をテーマに、いくつかの具体策が議論されているが、その中で、▽利用者負担が2割となる「一定以上所得の判断基準」▽ケアマネジメントの給付の在り方▽軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方――の3つについては、次の第10期介護保険事業計画の開始までに結論を得ることになっている。

 いずれも、利用者や事業者にとって影響が大きく、結論を得ることは容易ではないが、見直しで得られる財政効果については、それほど高いわけではない。たとえば、「一定以上所得の判断基準」の見直しでは、現行の2割負担のラインである、被保険者の上位20%以上(年収280万円以上)を、仮に上位30%以上(年収220万円)に引き下げたとしても、580億円程度の財政効果にしかならない。

 また、ケアマネジメントの給付の在り方でも、仮にケアマネジメントに自己負担を導入したとしても、居宅介護支援の費用額は5356億円(23年度)なので、その1割の535億円しか財政効果が出ない。
 介護保険全体の費用額は、年間で11兆2146億円(23年度)なので、わずか0.5%程度の財政効果にしかならないのである。
 そうした見直しの必要性を否定しているわけではないが、制度の持続可能性を考えるのであれば、もっと大きな視点の見直しが必要である。その一つが、被保険者の範囲・受給者の範囲の見直しであろう。

 介護保険の仕組みがあるドイツやオランダなどでは、全年齢を対象とした保険給付が行われている。日本でも「介護の普遍化」を目指し、40歳以下の人たちにも保険料を負担してもらえる制度へと見直していくべきであろう。
 一方で、この20年間で高齢者の体力的な若返りも指摘されている。その結果、65歳以上の人たちを一律に高齢者と捉えることについては、実態に合わなくなってきているのも事実だ。
 これから先のことを考え、1号被保険者の対象年齢の引き上げについても、検討していく必要があるだろう。

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