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とろみ調整を時短・均質化 介護テック「とろみサーバー」活躍

とろみ調整を時短・均質化 介護テック「とろみサーバー」活躍

 調理現場でも介護テクノロジーの活用を――。厚生労働省が6月に策定した「省力化投資促進プラン」(介護分野)では、さらなる介護テクノロジーの普及に向け、業務別の優良事例を整理。調理配膳等に関しては再加熱カートやとろみサーバー等による省力化を行い、その時間を直接的なケアや職員の休憩・研修等に充当することと明記されている。

 佐賀県みやき町の特別養護老人ホーム「なかばる紀水苑」(70床、短期入所含む)もこうした業務改善に取組む施設。3年前にとろみサーバー(凰商事製)を導入し、飲料提供時の業務負荷を大幅に改善させてきた。

 とろみサーバーは①飲料の種類②温・冷③とろみの濃さ――をボタンで選ぶだけで、とろみ調整済飲料を自動抽出。とろみ剤にはつるりんこ(森永乳業クリニコ)を使用し、とろみの濃さは日本摂食嚥下リハビリテーション学会基準の「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階で調整できる。

 飲料の種類は水(湯)以外で常時3種類の抽出が可能。なかばる紀水苑では緑茶、麦茶、りんご風味のニアウォーターを提供する。また、同じとろみ飲料を大容量で抽出できる便利な「まとめ取り」機能も重宝する。

衛生性向上・ロス削減も

 同施設の平均要介護度は4以上。食事時間を含む1日6回の飲料提供時、とろみ付けが必要な利用者は4分の3以上を占める。導入以前は急須でお茶を作り、そこから1杯ずつとろみ調整を行う完全な手作業だったが、今ではまとめ取り機能で抽出した飲料を取り分けるだけ。まとめ取り1回で約1L(5~6人分)に相当する。

 介護主任の佐藤由美さんは「作業時間の短縮はもちろんですが、誰が使っても常に一定のとろみ飲料を提供できるのが大きなメリットです。手作業だと目分量で誤差が出ることがあります。嚥下機能が低下した利用者にとっては無視できないリスクになり得ます」と強調する。

 とろみサーバー本体は施設2階、食事等を行う共用スペースのバックヤードに設置。手作業と違い手元を常に見ておく必要もないので、準備しながら利用者の様子を観察するなど周囲に目を配る余裕も出てきたと、現場職員の評価も高い。
 提供時は使い捨ての紙コップ(凰商事製)を使用。「衛生面、洗い作業をなくすことを優先しています」(佐藤さん)。配茶スペースには利用者名ととろみ粘度のリストがあり、これを見て紙コップに名前・濃度を記入し、濃度ごとに整理。これにより濃度の間違いを防ぐとともに、各濃度の必要量が正確に把握できるため、作り過ぎのロスも減ったそうだ。
 夜勤帯の業務改善にも大きく寄与したと佐藤さん。「夜間は基本、職員3人体制ですが、巡回やおむつ交換を行いつつ、朝食に向けて給茶の準備もしなくてはなりません。手作業のときは午前3時頃から始めていましたが、今では6時頃でも間に合います」と説明する。作ってから提供までが短いため衛生面の心配もなく、何より温かいままのお茶が提供できると喜ぶ。
佐藤介護主任(左)と柴田京子苑長

佐藤介護主任(左)と柴田京子苑長

 とろみサーバーはレンタルも対応。製品詳細、価格に関する問合せは凰商事(TEL0120・915・746、平日9~17時)まで。

(シルバー産業新聞2025年8月10日号)

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