ニュース
六甲の館×シリウス 対談「利用者ファーストのための職員ファースト」

社会福祉法人弘陵福祉会「特別養護老人ホーム六甲の館」(神戸市、溝田弘美理事長/施設長)は昨年、政府の「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」で、これまで取り組んできた介護ロボット等を活用した生産性向上、ノーリフティングケアなど職員の待遇改善が評価され内閣総理大臣表彰を受けた。昨年末には、入浴や清拭と異なる満足感の高いケアの手段として、介護テクノロジーを活用したシリウス(東京都台東区、亀井隆平社長)の介護用洗身用具「switle BODY(スイトルボディ)」を施設各階に導入した。
六甲の館 溝田弘美理事長/施設長 私たちの考えとして、利用者70人を大切にしたケアをするためには、48人の職員(常勤33人・非常勤15人、2024年1月時点)を大切にする必要があるという「利用者ファーストのための職員ファースト」があります。
介護度の高い人が増える中で、職員の身体的負担が増してきたこともあり、2003年より人が人を持ち上げないケアによる腰痛ゼロを目指してきました。現在では、居室・浴室・トイレに天井走行リフト30台を活用しており、兵庫県「ひょうごノーリフティングケアモデル施設」にも認定いただいています。腰痛のある職員も56%から9%に減少したほか、離職率も16%(20年2月)から、3%(24年2月)に改善しました。
見守り機器についても、個別アセスメントの結果により▽寝たきり状態の人向けのバイタルタイプ▽やや動きのある人や離床事故リスクのある人向けのカメラタイプ(2タイプ)――の全3タイプから、その方に最適のものを選定しています。夜勤中の平均訪問回数は6.3回から3.8回となりました。
介護度の高い人が増える中で、職員の身体的負担が増してきたこともあり、2003年より人が人を持ち上げないケアによる腰痛ゼロを目指してきました。現在では、居室・浴室・トイレに天井走行リフト30台を活用しており、兵庫県「ひょうごノーリフティングケアモデル施設」にも認定いただいています。腰痛のある職員も56%から9%に減少したほか、離職率も16%(20年2月)から、3%(24年2月)に改善しました。
見守り機器についても、個別アセスメントの結果により▽寝たきり状態の人向けのバイタルタイプ▽やや動きのある人や離床事故リスクのある人向けのカメラタイプ(2タイプ)――の全3タイプから、その方に最適のものを選定しています。夜勤中の平均訪問回数は6.3回から3.8回となりました。
入浴介助の負担軽減と職員配置の最適化
シリウス 亀井隆平社長 昨年8月から介護用洗身用具「スイトルボディ」を試用され、昨年末に各フロアに導入いただきました。介護現場での入浴介助の課題や、入浴に関する介護テクノロジーへの期待はあったのですか。
六甲の館 ICT担当・介護職員 溝田ラビ氏 全国の介護現場に共通することかと思いますが、重度者には特殊浴槽を使うものの、自立支援や尊厳の保持の観点から、本人の希望などを伺いながら個浴を目指す流れがあります。しかし同時に、入浴介助には人員が必要であること、介助者の身体的負担があることなどが課題です。
これに対して、当施設では浴室に2台の天井走行リフトを設置し身体的負担を軽減し、入浴に要する職員数も減らせました。そうしてできた余裕は、職員配置の最適化により、フロアでのレクリエーションの充実を実現させることができました。
六甲の館 ICT担当・介護職員 溝田ラビ氏 全国の介護現場に共通することかと思いますが、重度者には特殊浴槽を使うものの、自立支援や尊厳の保持の観点から、本人の希望などを伺いながら個浴を目指す流れがあります。しかし同時に、入浴介助には人員が必要であること、介助者の身体的負担があることなどが課題です。
これに対して、当施設では浴室に2台の天井走行リフトを設置し身体的負担を軽減し、入浴に要する職員数も減らせました。そうしてできた余裕は、職員配置の最適化により、フロアでのレクリエーションの充実を実現させることができました。
コロナ禍で高まった室内洗身の必要性
ラビ氏 5類移行前の新型コロナ禍でクラスターが発生し、利用者もスタッフもフロア間の移動が禁止された状況下でも衛生性を確保し、QOLを高めるため、室内で清潔保持を行う必要性が増しました。
現在でも、利用者の中には室内での入浴を希望する人もいるなど好評です。ただ、ベッド上でのミスト浴などは準備・片付けに6~10分の時間がかかり、希望者全員の要望に応えることができない状況です。
「スイトルボディ」の試用貸出をお願いしたのは、こうした課題が解決できるのではないかと考えたからです。
現在でも、利用者の中には室内での入浴を希望する人もいるなど好評です。ただ、ベッド上でのミスト浴などは準備・片付けに6~10分の時間がかかり、希望者全員の要望に応えることができない状況です。
「スイトルボディ」の試用貸出をお願いしたのは、こうした課題が解決できるのではないかと考えたからです。
介護用洗身用具の期待と可能性
亀井社長 そういった経緯があったのですね。
スイトルボディは、本体タンクとそこから伸びたホースからなる洗身機器です。タンクに水と専用ソープを注ぎ、側面のボタンで水温を調整すれば準備完了です。
ホース先端のシャワーヘッドを要介護者の肌に密着させ、ボタンを押したまま優しくすべらせると、中心部の吹き出し口から適量の温水が噴出し、同時に吸い取ってタンクに排水されます。続いて専用ソープを手元ボタンで吹き付けて、優しくマッサージすることで毛穴から汚れをしっかり浮かせます。仕上げに再度ボタンを押すことで温水が吹き出し、汚れとともに吸い取ることで、周囲を濡らさずに洗身することができます。ヘッド部分をスポンジからシリコンに変えれば洗髪も可能です。
使用する水の量は1人あたり約1Lと節水にも寄与します。本体は丸みを帯びた家電製品のようなコンパクトボディーで、約5.5㎏と軽量で持ち運びもしやすいです。
ですが、当初に試用いただいた仕様は「不採用」という結果でした。
溝田理事長 確かにそうでしたね。当初の仕様では大きく2つの課題がありました。1つ目は利用者の中には皮膚が脆弱で、細心の配慮をもって洗う必要がある人もいるのですが、皮膚に触れるスポンジのクッション部分が薄く、プラスチック部分が当たってしまったこと。2つ目はお湯の温度や皮膚に当たる量が十分ではなく「寒い」「冷たい」という利用者の声があったことです。
亀井社長 自信をもって開発したものでしたが、介護現場の高齢者の状況をつかめていなかった。第一線である六甲の館でNGだったものは、他の介護現場でも支持されないことは明らかです。今となれば当社にとって金言だったのです。
ご指摘をもとに行った改良は、現在出荷の製品に活かされています。
溝田理事長 6回ほどの訪問(3カ月間)で課題点をすべて改善していただきました。
亀井社長 今回の改良については社長直轄として、トップダウン式で改善を進めました。
スイトルボディは、本体タンクとそこから伸びたホースからなる洗身機器です。タンクに水と専用ソープを注ぎ、側面のボタンで水温を調整すれば準備完了です。
ホース先端のシャワーヘッドを要介護者の肌に密着させ、ボタンを押したまま優しくすべらせると、中心部の吹き出し口から適量の温水が噴出し、同時に吸い取ってタンクに排水されます。続いて専用ソープを手元ボタンで吹き付けて、優しくマッサージすることで毛穴から汚れをしっかり浮かせます。仕上げに再度ボタンを押すことで温水が吹き出し、汚れとともに吸い取ることで、周囲を濡らさずに洗身することができます。ヘッド部分をスポンジからシリコンに変えれば洗髪も可能です。
使用する水の量は1人あたり約1Lと節水にも寄与します。本体は丸みを帯びた家電製品のようなコンパクトボディーで、約5.5㎏と軽量で持ち運びもしやすいです。
ですが、当初に試用いただいた仕様は「不採用」という結果でした。
溝田理事長 確かにそうでしたね。当初の仕様では大きく2つの課題がありました。1つ目は利用者の中には皮膚が脆弱で、細心の配慮をもって洗う必要がある人もいるのですが、皮膚に触れるスポンジのクッション部分が薄く、プラスチック部分が当たってしまったこと。2つ目はお湯の温度や皮膚に当たる量が十分ではなく「寒い」「冷たい」という利用者の声があったことです。
亀井社長 自信をもって開発したものでしたが、介護現場の高齢者の状況をつかめていなかった。第一線である六甲の館でNGだったものは、他の介護現場でも支持されないことは明らかです。今となれば当社にとって金言だったのです。
ご指摘をもとに行った改良は、現在出荷の製品に活かされています。
溝田理事長 6回ほどの訪問(3カ月間)で課題点をすべて改善していただきました。
亀井社長 今回の改良については社長直轄として、トップダウン式で改善を進めました。

ベッド上でも簡単洗身
「入浴予定先送り」の削減で、利用者・スタッフともにメリット
ラビ氏 現場では当日に血圧が高いなどで入浴予定が変更(先送り)になることがあるのですが、そういった利用者に代替として、ベッド上で安静にしながら洗身をしてもらえるようになったこともメリットの1つです。職員のスケジュール変更が少なくなり、入浴してさっぱりしたいという利用者の気持ちに、すぐに応えやすくなりました。本人の快適さ・衛生性の観点から、おむつ交換時に陰部洗浄として活用する例もあります。

現場の声もとに改良施された「switle BODY」
「switle BODY」は、発売から7カ月後の昨年11月に改良モデルを発表。機器を活用した介護施設や医療機関の意見をもとに、①利用者の肌への負担軽減②お湯の体感温度上昇――をはかった。
①については、ヘッドに装着するスポンジを5㎜厚くして対応。肌に当てても摩擦を受けにくい柔らかさで、ヘッドのプラスチック部分の接触によるリスクを低減する。吸水性向上にも寄与する。
②は介護施設の「お湯の温かさが感じられにくい」という意見を受け、湯温の上限を42度から45度へ引上げ。しぶきを飛ばさないために噴射口を伸ばし、なるべく肌の近くでお湯が出るよう調整を行った。また吸引時に発生する風が湯温を低下させる点にも着目し、吸引口の数を削減。穴あたりの吸引量を強化し、従来どおり水が滴り落ちない吸引力を保っている。
価格は18万4800円(税込)。
問合せは同社(TEL0120-91-4649)まで。
①については、ヘッドに装着するスポンジを5㎜厚くして対応。肌に当てても摩擦を受けにくい柔らかさで、ヘッドのプラスチック部分の接触によるリスクを低減する。吸水性向上にも寄与する。
②は介護施設の「お湯の温かさが感じられにくい」という意見を受け、湯温の上限を42度から45度へ引上げ。しぶきを飛ばさないために噴射口を伸ばし、なるべく肌の近くでお湯が出るよう調整を行った。また吸引時に発生する風が湯温を低下させる点にも着目し、吸引口の数を削減。穴あたりの吸引量を強化し、従来どおり水が滴り落ちない吸引力を保っている。
価格は18万4800円(税込)。
問合せは同社(TEL0120-91-4649)まで。

(シルバー産業新聞2025年1月10日号)