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住宅型有老ホーム、規制強化へ
厚生労働省の「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」は10月31日、サービスの質の確保や運営の透明化に向けた「とりまとめ案」を公表した。現行の届出制を、特に入居者保護の必要性が高いホームについて「登録制」へ移行することを検討するほか、職員配置基準の法定化や、長年の課題である「囲い込み」対策の強化などを盛り込んだ。高齢者の「終の住処」としての役割が強まる中、事業者に質の高いサービス提供と適正な運営を求める制度改革の方向性が示された。
中重度者向けホーム「登録制」へ
近年、有料老人ホーム、特に住宅型有料老人ホームにおいて、事業者の経営破綻によるサービス提供の停止、入居者紹介事業者への高額な手数料支払い、職員による高齢者虐待の増加など、入居者の安全を脅かす事案が発生している。
こうした背景には、有料老人ホームが「介護付き」だけでなく「住宅型」においても、重度者や医療的ケアが必要な高齢者の「終の住処」としての役割を担うようになり、求められるサービスの質が高度化している実態がある。
しかし、現行の届出制の下では、事業者の参入は容易である一方、行政による指導監督には限界があると指摘されてきた。今回は、こうした状況を踏まえ、今年4月から重ねてきた議論を取りまとめたものだ。
最大の柱は、参入規制の強化。現行の届出制は、過去に処分歴のある事業者でも参入が可能で、自治体は問題点を指摘しても瑕疵のある届出を受理せざるを得なかった。さらに、開設後の行政指導にも強制力がないため、事業者の質を担保する仕組みとしての限界が指摘されていた。
入居者保護を強化するため、現行の「届出制」を見直し、行政の関与を強める「登録制」により、事前規制の導入を検討する方針を提示。対象は、中重度の要介護者や医療的ケアを要する高齢者など、特に安全確保の必要性が高い入居者を受け入れるホームが想定されている。事業計画の妥当性や過去の処分歴などを事前に確認し、不適切な事業者の参入を防ぐ狙いがある。
こうした背景には、有料老人ホームが「介護付き」だけでなく「住宅型」においても、重度者や医療的ケアが必要な高齢者の「終の住処」としての役割を担うようになり、求められるサービスの質が高度化している実態がある。
しかし、現行の届出制の下では、事業者の参入は容易である一方、行政による指導監督には限界があると指摘されてきた。今回は、こうした状況を踏まえ、今年4月から重ねてきた議論を取りまとめたものだ。
最大の柱は、参入規制の強化。現行の届出制は、過去に処分歴のある事業者でも参入が可能で、自治体は問題点を指摘しても瑕疵のある届出を受理せざるを得なかった。さらに、開設後の行政指導にも強制力がないため、事業者の質を担保する仕組みとしての限界が指摘されていた。
入居者保護を強化するため、現行の「届出制」を見直し、行政の関与を強める「登録制」により、事前規制の導入を検討する方針を提示。対象は、中重度の要介護者や医療的ケアを要する高齢者など、特に安全確保の必要性が高い入居者を受け入れるホームが想定されている。事業計画の妥当性や過去の処分歴などを事前に確認し、不適切な事業者の参入を防ぐ狙いがある。
職員配置や設備基準を法令で規定
指導監督の実効性を高めるため、新たな登録制の導入に伴い、現行の「標準指導指針」を老人福祉法に基づく統一的な基準として法制化することが必要だとした。これにより、都道府県が事業の開始前・開始後を問わず、効果的な対応をとれるようにする。
具体的には、職員の配置基準として、入居者の介護・医療ニーズや夜間の緊急時対応を想定した人員体制を求める。設備基準では、現行の指針にある「1人あたりの床面積13㎡以上」といったハード面の規定も盛り込む。さらに運営基準として、高齢者虐待防止措置や身体的拘束適正化への取り組み、事故防止措置と事故報告の実施、看取りに関する指針の整備などを法令で定める。
また素案では、事業参入後の運営の質を維持・確保するための方策も示された。事業運営の質を継続的に確保するため、「更新制」を導入し、一定の条件の下で更新を拒否できる仕組みが必要ではないかとした。
不正行為などで行政処分を受けた事業者の役員等が組織的に関与していた場合には、一定期間、新たな事業所の開設を制限する制度の導入も検討する。また、経営の継続が困難と見込まれる事業者に対しては、迅速な事業停止命令などを可能にするための法的な整理が必要とした。
具体的には、職員の配置基準として、入居者の介護・医療ニーズや夜間の緊急時対応を想定した人員体制を求める。設備基準では、現行の指針にある「1人あたりの床面積13㎡以上」といったハード面の規定も盛り込む。さらに運営基準として、高齢者虐待防止措置や身体的拘束適正化への取り組み、事故防止措置と事故報告の実施、看取りに関する指針の整備などを法令で定める。
また素案では、事業参入後の運営の質を維持・確保するための方策も示された。事業運営の質を継続的に確保するため、「更新制」を導入し、一定の条件の下で更新を拒否できる仕組みが必要ではないかとした。
不正行為などで行政処分を受けた事業者の役員等が組織的に関与していた場合には、一定期間、新たな事業所の開設を制限する制度の導入も検討する。また、経営の継続が困難と見込まれる事業者に対しては、迅速な事業停止命令などを可能にするための法的な整理が必要とした。
囲い込み対策を強化
一部の住宅型有料老人ホームなどで問題視されてきた、過剰な介護サービス提供、いわゆる「囲い込み」についても複数の対策が提案された。囲い込みについては、家賃を低く設定して入居者を集め、不足分を併設の介護サービス事業所で区分支給限度額の上限近くまでサービスを提供することで、介護報酬で利益を確保する経営モデルがあると指摘されている。
これに対し、入居希望者の自由なサービス選択の確保を重要視し、ケアマネジメントの中立性を担保する方策が打ち出された。具体的には、ホームと資本・提携関係にある居宅介護支援事業所の利用を入居契約の条件とすることや、それらの利用を促す家賃優遇といった条件付け、さらには、かかりつけ医やケアマネジャーの変更を強要することを禁止する措置が提案されている。
こうした取り組みを実効性あるものにするため、行政によるチェック機能の強化も明記された。ホームが居宅介護支援事業所などと提携する場合、その提携状況を事前に行政へ報告・公表させ、中立性を担保する体制が整っているかを行政がチェックできる仕組みを構築する。加えて、自治体が実態を正確に把握できるよう、入居者が決定した居宅介護支援事業所から連絡票を届け出ることで情報を紐づける仕組みも有効であるとした。
これに対し、入居希望者の自由なサービス選択の確保を重要視し、ケアマネジメントの中立性を担保する方策が打ち出された。具体的には、ホームと資本・提携関係にある居宅介護支援事業所の利用を入居契約の条件とすることや、それらの利用を促す家賃優遇といった条件付け、さらには、かかりつけ医やケアマネジャーの変更を強要することを禁止する措置が提案されている。
こうした取り組みを実効性あるものにするため、行政によるチェック機能の強化も明記された。ホームが居宅介護支援事業所などと提携する場合、その提携状況を事前に行政へ報告・公表させ、中立性を担保する体制が整っているかを行政がチェックできる仕組みを構築する。加えて、自治体が実態を正確に把握できるよう、入居者が決定した居宅介護支援事業所から連絡票を届け出ることで情報を紐づける仕組みも有効であるとした。
特定施設への移行促す
厚労省は、不透明な経営実態の是正も要求。有料老人ホームの「住まい事業」と併設の「介護サービス事業」の会計を明確に分離し、公表することを求める。
さらに、実態として重度の要介護者が多く入居している住宅型については、介護付き(特定施設入居者生活介護)への移行を促進すべきとしている。特定施設は包括報酬で運営が安定しやすく、かつ利用者負担も明瞭であり、行政の指導監督も行き届きやすいメリットがあるためだ。素案は、移行を進めるために自治体が「総量規制」を適切に設定し直す必要があると指摘。あわせて、自治体にとっても移行促進のメリットを明確化し、その判断材料として、
管内の住宅型に係る給付状況や移行による給付への影響を簡便に把握できる仕組みが必要だとした。
一方、事業者側が人員などの体制確保が困難で「一般型特定施設」への指定申請が難しいケースも想定。その場合は「外部サービス利用型特定施設」への申請も考えられるため、住宅型からの移行を念頭に置いた基準や報酬体系の整備も検討する必要性にも言及している。
さらに、実態として重度の要介護者が多く入居している住宅型については、介護付き(特定施設入居者生活介護)への移行を促進すべきとしている。特定施設は包括報酬で運営が安定しやすく、かつ利用者負担も明瞭であり、行政の指導監督も行き届きやすいメリットがあるためだ。素案は、移行を進めるために自治体が「総量規制」を適切に設定し直す必要があると指摘。あわせて、自治体にとっても移行促進のメリットを明確化し、その判断材料として、
管内の住宅型に係る給付状況や移行による給付への影響を簡便に把握できる仕組みが必要だとした。
一方、事業者側が人員などの体制確保が困難で「一般型特定施設」への指定申請が難しいケースも想定。その場合は「外部サービス利用型特定施設」への申請も考えられるため、住宅型からの移行を念頭に置いた基準や報酬体系の整備も検討する必要性にも言及している。
入居者紹介事業者の健全化も
高額な紹介手数料が問題となった入居者紹介事業者の健全化にも言及する。業界団体による現行の届出公表制度を前提としつつ、新たに「優良事業者を認定する仕組み」の創設が有効ではないかと指摘。紹介手数料については、賃貸住宅の仲介を参考に、月額家賃などをベースに算定することが適切とした。
今後、このとりまとめ案を基に具体的な制度設計が進められることになる。事業者にとっては、基準の法定化や登録制への移行は、人員確保や設備改修など新たな対応が求められる。一方で、適正な運営を行う事業者が評価され、業界全体の信頼性向上につながることも期待される。
今後、このとりまとめ案を基に具体的な制度設計が進められることになる。事業者にとっては、基準の法定化や登録制への移行は、人員確保や設備改修など新たな対応が求められる。一方で、適正な運営を行う事業者が評価され、業界全体の信頼性向上につながることも期待される。
(シルバー産業新聞2025年11月10日号)



