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厚労省 入門的研修 来年度導入

厚労省 入門的研修 来年度導入

 厚生労働省は2017年9月26日、社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会(委員長=田中滋・慶應義塾大学名誉教授)を開催し、深刻化する介護人材不足を解消する手立てとして、入門的研修の導入や介護福祉士の養成カリキュラムの見直しを柱とする報告書案をまとめた。具体的なカリキュラムについては、今年度中に示される予定。未経験者の参入を促し、介護人材の裾野を拡げるとともに、介護福祉士の資質を高めて、意欲や能力に応じたキャリアアップの仕組みをつくり、人材の定着を図っていく。 

 厚労省の試算では、2025年時点の介護人材の需要見込みは253.0万人、それに対し供給見込は215.2万人と、37.7万人の需給ギャップが生じる見込みになっている。

 こうした状況に対し、同委員会では3年前から人材確保策を検討。前回のとりまとめでは、目指すべき方向として、「まんじゅう型」から「富士山型」へと介護人材の構造転換を図るイメージ(図)を提示。今回、その具体策などについて整理を行った。

介護福祉士、介護職のリーダーに

 報告書案の柱は①新たに入門的研修を導入し、介護未経験者の参入を促進する②介護福祉士の資質を高めるために養成カリキュラムを見直す③介護職のリーダーに介護福祉士を位置付け、キャリアパスの仕組みをつくる――の大きく3つ。

 入門的研修は、未経験者が介護分野への参入に不安を感じている▽介護保険制度に関する内容▽トイレへの誘導や衣服の着脱などの基本的な介護の方法▽認知症に関する基本的な理解▽緊急時の対応方法――などを学ぶ内容にする。委員会では、既存の「介護職員初任者研修」(130時間)の半分程度の時間数にする案も示されたが、具体的な時間数やカリキュラムは今年度末までに詰める。ステップアップをしやすくするため、初任者研修や実務者研修などと受講科目の読み替えも可能にする。

 研修が始まるのは18年度以降だが、研修実施費用は、すでに地域医療・介護総合確保基金のメニューとして、来年度の概算要求に予算計上されている。国として、介護分野に参入する際の必須の研修とはせず、あくまで「任意研修」として位置付ける考えだ。

介護福祉士の役割を明確化

 介護福祉士については、認知症高齢者の増加などの社会状況の変化や、地域包括ケアに向けた制度改正、多職種連携の中で、求められる資質や役割も、ここ数年で大きく変化してきている。こうした状況を踏まえ、養成カリキュラム(1850時間)についても、時代に合わせ「内容を充実させていく必要がある」と見直しが提言された。

 充実させるべき学習内容としては、▽リーダーシップやフォロワーシップ▽認知症ケア▽アセスメント力▽社会保障制度全般の知識――などを明記。今年度末までに新しい養成カリキュラムを示し、1年間の周知期間を経て、19年度からの実施を予定している。

 介護福祉士の専門性と社会的評価を高めるもう一つの柱が、介護職のグループリーダーに介護福祉士を位置付ける方策だ。報告書案では、リーダーが担うべき役割を、①高度な知識・技術を有する介護の実践者としての役割②介護技術の指導者としての役割③サービスをマネジメントする役割――の3つに整理。今後、必要となる能力を修得するための研修プログラムを創設する。リーダーとなる介護福祉士については、「5年程度の実務経験」を要件にする考え。

 リーダーとして必要な能力を修得した後も、継続的に資質を高めていくことで、高い専門性をもったケアを提供する実践者、管理職や施設長といったマネジメント職、介護分野における教育者や研究者といったキャリアパスを進んでいくことを想定している。

 今回の整理により、介護人材の量と質の好循環が生まれていくことが期待されるが、一方で仕事内容やキャリアに応じた評価や処遇を、どこまで結びつけられるかが課題となっている。

(シルバー産業新聞2017年10月10日号)

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