千田透の時代を読む視点

介護福祉士取得の一元化 安易な経過措置延長やめるべき/千田透(連載78)

介護福祉士取得の一元化 安易な経過措置延長やめるべき/千田透(連載78)

 介護福祉士の資格取得方法を一元化する経過措置期間が、再び延長される見通しも出てきた。介護福祉士の質の向上を図るために、2022年度から養成施設卒業者にも国家試験の合格を義務付けることになっていたが、一部報道では、自民党の厚生労働部会で、厚労省が経過措置期間を延長する考えを示し、今国会に改正法案を提出するようだ。

 背景にあるのは、介護福祉士養成施設の定員と、日本人学生の減少が続いている一方で、入管法改正により、在留資格「介護」が創設されたことで、養成施設に入学する外国人留学生が増加していることだ。

 12月16日に開かれた社会保障審議会福祉部会の厚労省の資料によると、15年時点の養成施設の定員は1万7769人。それに対し、入学者は8884人と充足率は50%。これが19年には定員が1万4387人に減少し、入学者も6982人、充足率は48.5%に減少している。これに反し、外国人留学生の割合が15年は1.1%だったのが、19年には29.2%に急増している。17年度より養成校施設卒業者にも国家試験義務付けの漸進的な制度導入が始まったが、合格率は18年度の試験で、日本人の卒業見込み者が90.9%なのに対し、外国人の卒業見込み者は42.5%という状況で、介護人材確保の観点から、経過措置期間の延長を求める意見が出ていた。

 個人的には、外国人留学生の合格率が低いことを理由に、経過措置を延長するというのは、介護福祉士の地位向上にマイナスにしかならず、やるべきではないと思っている。そもそも、実務経験ルートと同じく、養成校ルートにも国家試験を義務付け、資格取得方法を一元化する話は、介護福祉士の将来を考え07年の時点で決まった話であり、養成校の定員が減少し、外国人留学生が急増している話とは、次元の違う話である。外国人留学生の合格率が低いのであれば、合格率を高めるための方策を検討するのが筋というものであろう。そこがない限り、経過措置を延長したところで、状況は変わらない。

 人手不足で外国人の力を借りたいのであれば、特定技能の仕組みを活用すればよいし、日本の介護を学びたいのであれば、技能実習制度を活用すればよい。外国人の方が介護福祉士として働きたいのであれば、日本人と同様、決められた試験をパスして、その知識やスキルを証明すればよい。試験に不合格となった場合、制度に位置づけられている准介護福祉士として、介護福祉士を目指すのが筋である。必要なのは、経過措置の延長ではなく、介護福祉士を取得するための環境整備の方だ。

 言語の問題でその能力の証明が難しいのであれば、試験時間を長くしたり、日本語以外で試験を受けられるようにするなどの配慮や工夫があってもよい。介護現場では、翻訳機器や記録ソフトなどの支援ツールがあるので、そのあたりは柔軟に考えられるはずだ。

 仮に日本語能力の部分に問題があるのであれば、特定技能や技能実習と同様、在留資格「介護」にも日本語能力基準を明確すべきだ。

 現在は、日本介護福祉士養成施設協会が独自のガイドラインで、「日本語能力試験N2以上」などの基準を示しているが、国家試験の合格率を高める観点から、より基準を明確にしていく必要があるだろう。

 日本人も外国人も、目指したい人が努力をして介護福祉士資格を取得する。そうすることが介護全体の質を高め、国民がよりよい介護を受けられる未来につながっていくはずだ。

 千田透(全国生活協同組合連合会 常務理事)

(シルバー産業新聞2020年2月10日号)

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