ニュース
虐待疑い 抜き打ちで監査・指導
厚生労働省は2016年3月7日、都道府県や政令指定都市などを対象とした「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」を開催。16年度予算案に計上された新規事業や主な改正を中心に、同省各課が説明を行った。新しく見直されるのは、介護事業所への事前通告なしの実地指導を可能とすることや、小規模多機能施設の開設年の人員基準の緩和など。新設する事業では、介護サービス従事者に対するベビーシッター派遣事業など、離職防止につなげる事業の周知をはかった。
虐待が疑われる事業所へ抜き打ち実地指導
2015年、大手介護事業者グループが運営する複数の事業所で深刻な虐待の事案が発覚した。これを受け、虐待防止に重点を置いた機動的な指導・監査を実施することを各都道府県に要望。通報、苦情の内容が利用者の生命、身体に関わる場合は、事前通告なしに監査や実地指導を行うなど、柔軟な対応を求めた。
実地指導については、従来、実施前に事前通告を行うこととなっていたが、監査と同様に虐待との関連が疑われる場合などは、抜き打ちで実地指導を行えるように指導指針が改正された。さらに、虐待は重大な不正行為として、虐待による行政処分を行う場合は、より一層厳しい対応をとることを求めた。
実地指導については、従来、実施前に事前通告を行うこととなっていたが、監査と同様に虐待との関連が疑われる場合などは、抜き打ちで実地指導を行えるように指導指針が改正された。さらに、虐待は重大な不正行為として、虐待による行政処分を行う場合は、より一層厳しい対応をとることを求めた。
処遇改善加算の不正請求
2月に北海道旭川市の介護事業所で、「介護職員処遇改善加算」を職員に支給せず、多額の報酬を不正に請求した事案が発生。旭川市は3カ月間の指定の全部停止処分を下した。
これを踏まえ、▽同加算の算定を行った事業所は、賃金改善方法を職員に十分に周知すること▽都道府県が事業所から介護職員処遇改善実績報告書を受け取る際には「介護職員処遇改善総額」と「賃金改善所要額」とを比較し、必ず「賃金改善所要額」が上回っていることを確認すること▽改善計画書や実績報告書の様式に不正請求が発覚した場合は、支払われた金額の返還や指定の取消しがあり得ることを注意書きすること――などを盛り込んだ通知を、近日中に発出するとした。
これを踏まえ、▽同加算の算定を行った事業所は、賃金改善方法を職員に十分に周知すること▽都道府県が事業所から介護職員処遇改善実績報告書を受け取る際には「介護職員処遇改善総額」と「賃金改善所要額」とを比較し、必ず「賃金改善所要額」が上回っていることを確認すること▽改善計画書や実績報告書の様式に不正請求が発覚した場合は、支払われた金額の返還や指定の取消しがあり得ることを注意書きすること――などを盛り込んだ通知を、近日中に発出するとした。
7期介護保険計画と医療計画を見据えたPDCAの実施
第6期計画の実施と第7期計画の策定準備については、第8期、9期を見据えた段階的な取り組みを進めることが重要だと説明。昨年に閣議決定された「骨太の方針」においても、「医療・介護に関する計画は中長期的な視野に立った工程管理を行うためにPDCAマネジメントの実施を進める」と記載されている。
2018年度から始まる「第7期介護保険事業計画」は、次期医療計画との同時期改定となり、医療計画との密接なかかわりを持つ点が、従来と大きく異なる。今後、国で医療計画と介護保険計画の基本方針となるべき事項を記載した「総合確保方針」の改定を行う予定。「総合確保方針」の具体的な改定事項については、同省に設置される「医療介護総合確保推進会議」で議論し、17年度初頭を目途に取りまとめることを目指すとしている。
2018年度から始まる「第7期介護保険事業計画」は、次期医療計画との同時期改定となり、医療計画との密接なかかわりを持つ点が、従来と大きく異なる。今後、国で医療計画と介護保険計画の基本方針となるべき事項を記載した「総合確保方針」の改定を行う予定。「総合確保方針」の具体的な改定事項については、同省に設置される「医療介護総合確保推進会議」で議論し、17年度初頭を目途に取りまとめることを目指すとしている。
小規模多機能型居宅介護等の開設初年度の人員基準見直し
小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護は、開設後に利用者が集まるまでに時間を要することを考慮し、開設初年度の人員の算定方法について、実際の利用者数に応じた配置となるよう見直す。現行は新設から6月未満の間は、定員18 人の場合、3人の人員を配置。4月以降は利用者3人以上、職員1人からの配置を可能とした。
また、社会福祉法人が国や地方公共団体以外から土地・建物を借りて小規模多機能の経営を行っても、資産要件に抵触しないと説明。小規模多機能の土地・建物は「社会福祉事業を行う為に、直接必要な物件」には該当しないと理由を示した。
また、社会福祉法人が国や地方公共団体以外から土地・建物を借りて小規模多機能の経営を行っても、資産要件に抵触しないと説明。小規模多機能の土地・建物は「社会福祉事業を行う為に、直接必要な物件」には該当しないと理由を示した。
地域密着型通所介護4月から施行
4月から利用定員が18人以下の小規模通所介護は地域密着型サービスへの移行となる。市町村による運営基準等の条例制定についてのみ、施行日より1年間の17年3月末まで経過期間を設ける。なお、移行に際しては事業指定を受けたものとみなされ、指定申請は不要。また利用定員についても、改めて届出を行う場合を除き、現在届出の利用定員で判断されるため、手続きは不要だと説明し、サービス提供が滞らないよう呼びかけた。
介護サービス従事者に対する育児支援事業新設
子育てを理由とした介護職員の退職が多いことから、「介護サービス事業者等の職員に対する育児支援(ベビーシッター派遣)事業」を新設する。内容は、介護サービス事業者に勤務する子育て中の職員が、ベビーシッターの派遣などの育児支援サービスを利用する場合に、事業所がその費用の一部を負担する際の補助を行うもの。
具体的には、▽未就学児童等を持つ子育て中の職員を対象として、ベビーシッターの利用券を配布する費用▽職員の子供が病気で保育園等に登園させることが困難なときに、介護サービス事業所内の保育施設等に看護師などの職員を配置するための人件費――などに対して助成を行う。子育て中の職員の離職防止や、待遇改善に繋げることを目的としている。
(シルバー産業新聞2016年4月10日号)
具体的には、▽未就学児童等を持つ子育て中の職員を対象として、ベビーシッターの利用券を配布する費用▽職員の子供が病気で保育園等に登園させることが困難なときに、介護サービス事業所内の保育施設等に看護師などの職員を配置するための人件費――などに対して助成を行う。子育て中の職員の離職防止や、待遇改善に繋げることを目的としている。
(シルバー産業新聞2016年4月10日号)