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関連団体など緊急集会 現場職員の賃上げへ 期中改定求める

「介護現場で働くあらゆる職員に十分な賃上げを!」。5月8日、都内で「介護現場で働く人々と家族の暮らしを守る集会」が開催された。発起人は関連16団体と政治連盟11団体の代表ら。人材不足や物価高騰に苦しむ介護現場の窮状を訴え、2026年度の期中改定の実施に向けた財源確保を求める決議を全会一致で採択した。会場には98人の国会議員(代理40人含む)も駆けつけ、元厚生労働大臣の田村憲久氏をはじめ、衛藤晟一氏、片山さつき氏らが壇上に上がりエールを送った。
他産業との賃金差拡大、人材流出を懸念
厚生労働省によると、24年の全産業平均の賞与込み給与38.6万円に対し、介護職員は30.3万円と、月額8.3万円の差がある。24年度はプラス1.59%の介護報酬改定が行われたが、春闘では2年連続で5%台の賃上げが実現している。改定前よりもむしろ賃金差が拡大したことで、他産業への人材流出加速の懸念が業界に広がっている。
「介護現場で働く人々と家族の暮らしを守る集会」が採択した決議は、①26年度の期中改定②期中改定までの9カ月間の賃上げ補助③物価高騰や将来の人材確保への支援――について財源の確保を求めるもの。発起人代表を務める全国介護老人保健施設協会・東憲太郎会長は「秋の臨時国会では来年4月に期中改定を行うとしっかり決めてほしい。付け焼刃の改定ではなく、全産業同等の賃金水準を目指せる財源の確保を求める。また今年度の賃上げでもすでに全産業との間で差が広がってしまっている。期中改定までの期間を手当てする賃上げ補助がなければ、さらなる人材流出は免れない」と訴えた。
また決議では「介護現場のあらゆる職員」の賃上げを強調した。「介護職員等処遇改善加算や補助金は、介護職員の数のみで加算率が設定されている。当然、その他の職種に配分すると賃上げ効果は薄まり、そもそも居宅介護支援や訪問看護など介護職不在のサービスは対象にならない。介護現場はさまざまな職種で成り立っているということにしっかりと目を向けてもらわなければならない」(東会長)
「介護現場で働く人々と家族の暮らしを守る集会」が採択した決議は、①26年度の期中改定②期中改定までの9カ月間の賃上げ補助③物価高騰や将来の人材確保への支援――について財源の確保を求めるもの。発起人代表を務める全国介護老人保健施設協会・東憲太郎会長は「秋の臨時国会では来年4月に期中改定を行うとしっかり決めてほしい。付け焼刃の改定ではなく、全産業同等の賃金水準を目指せる財源の確保を求める。また今年度の賃上げでもすでに全産業との間で差が広がってしまっている。期中改定までの期間を手当てする賃上げ補助がなければ、さらなる人材流出は免れない」と訴えた。
また決議では「介護現場のあらゆる職員」の賃上げを強調した。「介護職員等処遇改善加算や補助金は、介護職員の数のみで加算率が設定されている。当然、その他の職種に配分すると賃上げ効果は薄まり、そもそも居宅介護支援や訪問看護など介護職不在のサービスは対象にならない。介護現場はさまざまな職種で成り立っているということにしっかりと目を向けてもらわなければならない」(東会長)
国会議員のメッセージ
「現役世代のためにも介護の充実を」 衆議院議員田村憲久氏(元厚生労働大臣)

介護現場の厳しい実情をみれば、前回の介護報酬改定1.59%は十分ではなかったとわかる。
物価高騰や人件費の上昇が財政当局の予測を上回ったことによるもので、見通しが甘かったと言わざるを得ない。結果、一昨年には初めて介護職員の離職者が入職者を上回る事態となった。
「人口が減少しているから仕方がない」との声も聞くが、統計局の労働力調査では就業者の数は増え続けている。それにも関わらず、介護の現場で人が減ったのは賃金が低いからだ。改めなければ介護現場は崩壊していく。
財政当局は「保険料が上がれば、若い世代に負担がかかる。だから報酬は増やせない」と主張する。
しかし、介護現場が崩壊すれば介護者は働けなくなる。減るのではなく、収入自体を失ってしまう。
若い現役世代のためにも、介護の現場は充実させなければならない。
物価高騰や人件費の上昇が財政当局の予測を上回ったことによるもので、見通しが甘かったと言わざるを得ない。結果、一昨年には初めて介護職員の離職者が入職者を上回る事態となった。
「人口が減少しているから仕方がない」との声も聞くが、統計局の労働力調査では就業者の数は増え続けている。それにも関わらず、介護の現場で人が減ったのは賃金が低いからだ。改めなければ介護現場は崩壊していく。
財政当局は「保険料が上がれば、若い世代に負担がかかる。だから報酬は増やせない」と主張する。
しかし、介護現場が崩壊すれば介護者は働けなくなる。減るのではなく、収入自体を失ってしまう。
若い現役世代のためにも、介護の現場は充実させなければならない。
発起人代表
「他産業への人材流出48~66%増」 全国介護老人保健施設協会東憲太郎会長

今回の集会にあわせて行った調査では、介護業界の25年度の賃上げ率は前年度より0.88ポイント低い2.15%だった。春闘における賃上げ率は5.37%と全産業との賃金差は開いていく一方だ。この結果、介護現場から他産業への離職は、介護職員で前年度比48%増、介護職以外で666%増と人材流出が加速している。
介護現場で働く全ての職種の賃金を全産業並みに引き上げない限り、この流れは止められない。介護現場で働くあらゆる職員に十分な賃上げを行うための財源確保を求め、本集会を開催した。介護現場で働く職員を見捨てないでほしい。
介護現場で働く全ての職種の賃金を全産業並みに引き上げない限り、この流れは止められない。介護現場で働くあらゆる職員に十分な賃上げを行うための財源確保を求め、本集会を開催した。介護現場で働く職員を見捨てないでほしい。
介護現場の声
「訪問介護は地域の最後の砦」 グッドライフケア東京小西倫世さん

訪問介護が担う役割は、生活援助から看取りケアなどの専門性の高い身体介護へと移り変わり、より高い技術と判断力が求められるようになった。それにも関わらず、ヘルパーの7割は非正規職員で高齢化も深刻だ。現場の人手不足は限界にきている。巷には訪問介護より待遇が良い求人も数多くある。生活が成り立たなければ、どれほどやりがいがある仕事でも続けることはできない。私たちが支える高齢者や家族には、訪問介護がなければ生活を維持できない人がいる。訪問介護は地域で暮らし続けるための最後の砦。この重要性と厳しい現状に目を向けてほしい。
「全職種の賃金5%アップ実現を」 介護老人保健施設洛和ヴィラサラサ 浅村雅海さん

介護老人保健施設は6割が赤字経営という壊滅的な状況となっている。当施設がある東京都港区では、生産年齢人口が増えている都心にも関わらず、有効求人倍率は看護師で10倍、リハ職で12倍、介護職に至ってはなんと141倍と、全産業の求人倍率1.3倍とかけ離れている。
昨年の介護報酬改定は24年度2.5%、25年度に2.0%のベア分を含むプラス改定となったが、それでも春闘の賃上げ率5%台には全く届かない。
老健施設で働く全職種の賃金5%アップが実現するよう切に願う。
昨年の介護報酬改定は24年度2.5%、25年度に2.0%のベア分を含むプラス改定となったが、それでも春闘の賃上げ率5%台には全く届かない。
老健施設で働く全職種の賃金5%アップが実現するよう切に願う。
「社会基盤守る支援が必要」ナイスケア徳永泰行さん

東京城南地域でおよそ70年に渡って在宅介護サービスを提供してきた。コロナ禍で20年続いた通所介護を閉鎖する事態に追い込まれたが、スタッフ一丸となって訪問介護を中心に再建を進めてきた。その中で、訪問介護の基本報酬の引き下げは心が折れるような思いだった。
現在187人のヘルパーが在籍するが、平均年齢は67.7歳と高齢化が進む。働く職員を守りたい、「まちの介護屋」として地域で暮らし続けられる社会をつくりたいという二つの気持ちが私の中にあり、同じ思いの事業者が全国にいる。
介護という社会基盤を守り、職員・事業者が意欲を持って社会づくりに臨むことができる支援をお願いしたい。
(シルバー産業新聞2025年6月10日号)
現在187人のヘルパーが在籍するが、平均年齢は67.7歳と高齢化が進む。働く職員を守りたい、「まちの介護屋」として地域で暮らし続けられる社会をつくりたいという二つの気持ちが私の中にあり、同じ思いの事業者が全国にいる。
介護という社会基盤を守り、職員・事業者が意欲を持って社会づくりに臨むことができる支援をお願いしたい。
(シルバー産業新聞2025年6月10日号)