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前屈・ひねりの実態を可視化 「抱え上げない介護」推進施設で負担調査
介護現場で拡がる「抱え上げない介護」(ノーリフティングケア)は、国の腰痛予防対策指針の基本的な理念。取組を進める職場でも、職員の身体負担はなお残る。滋賀県内の特養で行われた動作測定により、前屈やひねりといった腰部への負担の大きい姿勢が、業務内容や個人によって大きく異なる実態が明らかになった。機器導入にとどまらず、組織的な評価と運用が求められている。
2月10日、滋賀医科大学の医大生による介護職員の身体負担調査の結果が、滋賀県野洲市の特別養護老人ホーム「あやめの里」(松尾道子施設長)で発表された。調査は、同施設の介護職員6人を対象に、日中業務における前屈・ひねり動作の回数と運動強度を測定したもの。
前屈やひねりの回数、運動強度には大きな個人差があった。離床や排泄介助で負担が多い職員もいれば、入浴介助や移乗、体位変換に負担が集中する職員もいる。業務によって前傾やひねりが比較的少ないケースも確認され、運動強度にも差が見られた。
調査を指導した同大学社会医学講座衛生学の辻村裕次講師は、「抱え上げない介護を進めていても、前傾やひねり姿勢は少なくない」と指摘。今後、詳細分析を進め学会で報告する予定だ(囲み・調査に参加した医学生の感想、当日の発表資料)。
前屈やひねりの回数、運動強度には大きな個人差があった。離床や排泄介助で負担が多い職員もいれば、入浴介助や移乗、体位変換に負担が集中する職員もいる。業務によって前傾やひねりが比較的少ないケースも確認され、運動強度にも差が見られた。
調査を指導した同大学社会医学講座衛生学の辻村裕次講師は、「抱え上げない介護を進めていても、前傾やひねり姿勢は少なくない」と指摘。今後、詳細分析を進め学会で報告する予定だ(囲み・調査に参加した医学生の感想、当日の発表資料)。
2013年に、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」が改定され、腰痛対策は個人から職場の仕組みづくりへと軸足を移した。改定検討委員の北原和代氏(滋賀医科大学准教授)も今回の調査に参加した。指針の改定で北原氏は、北欧のノーリフティングを例に、介助時は原則として抱え上げず、必要時は機械や補助具を活用すべきと主張した。
滋賀県では県社会福祉協議会が21年度から「抱え上げない介護推進事業所」を推奨(現在、高齢12施設、障がい6施設)。推進役の一人、山口路子氏(甲賀市健康福祉部主査)は、「抱え上げない」「持ち上げない」「引きずらない」の三原則を掲げ、力任せの移乗支援を見直すことが、腰痛予防と利用者本位のケアの両立の実現になると説明する。
24年11月には「あやめの里」も県社協から推奨を受けた。福祉用具の活用や職員研修、健康管理対策などを通じ、組織的な取り組みを進めている。介護サービス情報の公表で、「抱え上げない介護を実践できるようにステップアップしながらケアに向き合う。抱え上げない介護は職員中心のケアではなく、高齢者の身体の状況をアセスメントし、できることを活かし、難しくなったところを、福祉用具を活用し心地よいケアと自立支援の両側面から実践する」と発信している。
滋賀県では県社会福祉協議会が21年度から「抱え上げない介護推進事業所」を推奨(現在、高齢12施設、障がい6施設)。推進役の一人、山口路子氏(甲賀市健康福祉部主査)は、「抱え上げない」「持ち上げない」「引きずらない」の三原則を掲げ、力任せの移乗支援を見直すことが、腰痛予防と利用者本位のケアの両立の実現になると説明する。
24年11月には「あやめの里」も県社協から推奨を受けた。福祉用具の活用や職員研修、健康管理対策などを通じ、組織的な取り組みを進めている。介護サービス情報の公表で、「抱え上げない介護を実践できるようにステップアップしながらケアに向き合う。抱え上げない介護は職員中心のケアではなく、高齢者の身体の状況をアセスメントし、できることを活かし、難しくなったところを、福祉用具を活用し心地よいケアと自立支援の両側面から実践する」と発信している。
「移乗支援フェア2026in大阪」
2月13日に、ATCエイジレスセンターで「持ち上げない介護、組織で実践する移乗支援」をテーマに「移乗支援フェア2026in大阪」が開催された。実践セミナーとリフトメーカー14社が展示、多数の施設関係者が参加した。
パネルディスカッションでは、「リフトなど移乗機器の利用を施設で従事するPTやOTが率先して勧めるべき。福祉機器の活用の仲間を広げていこう。ノーリフトケアをやらないと人は集まらない」(谷口昌宏氏・住まいと介護研究所)、「施設も高齢化でいわば老々介護状態。安全に仕事ができるように、持ち上げない介護は世界標準だ。事業継続の視点から補助金を活用して、導入効果は数字で示そう。当たり前になれば補助金は出なくなる」(岩城隆久氏・ビオネスト)、「介護者と被介護者をともに守る。技術は適材適所で導入施設は従事者の定着につながる。介護テクノロジーが使えている施設は、トップの理念がしっかりしている」(柴田智広氏・九州工業大学)と訴えた。
パネルディスカッションでは、「リフトなど移乗機器の利用を施設で従事するPTやOTが率先して勧めるべき。福祉機器の活用の仲間を広げていこう。ノーリフトケアをやらないと人は集まらない」(谷口昌宏氏・住まいと介護研究所)、「施設も高齢化でいわば老々介護状態。安全に仕事ができるように、持ち上げない介護は世界標準だ。事業継続の視点から補助金を活用して、導入効果は数字で示そう。当たり前になれば補助金は出なくなる」(岩城隆久氏・ビオネスト)、「介護者と被介護者をともに守る。技術は適材適所で導入施設は従事者の定着につながる。介護テクノロジーが使えている施設は、トップの理念がしっかりしている」(柴田智広氏・九州工業大学)と訴えた。
伴走支援で“文化”にする
理学療法士・ロボタスネット 逢坂大輔氏
大阪府介護生産性向上支援センターで伴走支援に取り組む理学療法士の逢坂大輔氏(ロボタスネット)は、次のように語る。「補助金の後押しで機器導入は進んでいるが、本質は現場でどう活かすかにある。まず誰に、どの機器を、なぜ使うのかを明確にすることが重要だ。利用者ごとの状態を評価し、具体的な判断基準を示せば、職員は安心して活用できる」
さらに、使用を個人任せにせず、組織のルールとして日常業務に組み込むことが不可欠だと指摘する。デモ機を活用し、チームで検討を重ねる過程でリーダーも育つ。ベッドの高さ調整や体の近くでの介助など、基本的な環境整備と介助姿勢の徹底も欠かせない。
「評価とルール化を軸にPDCAを回せば、活用は文化として定着する。私は伴走者として、現場とともにその仕組みづくりを進めている」
ノーリフティングは単なる技術導入ではない。職場の構造と文化を問い直す取り組みとして、いま改めてその真価が問われている。
さらに、使用を個人任せにせず、組織のルールとして日常業務に組み込むことが不可欠だと指摘する。デモ機を活用し、チームで検討を重ねる過程でリーダーも育つ。ベッドの高さ調整や体の近くでの介助など、基本的な環境整備と介助姿勢の徹底も欠かせない。
「評価とルール化を軸にPDCAを回せば、活用は文化として定着する。私は伴走者として、現場とともにその仕組みづくりを進めている」
ノーリフティングは単なる技術導入ではない。職場の構造と文化を問い直す取り組みとして、いま改めてその真価が問われている。
(シルバー産業新聞2026年3月10日号)


